悪魔が世界を統べる場所

あげもち

第一章 旅立ち

第1話 あの日の一夜……

 今から10世紀前この世は地獄と化した。世界は魔に落ち朝は人間の時間夜は悪魔の時間。世界は時間に縛られていた。そこから10世紀後……。


 「かぁさん!下町に野菜売ってくるね!!」

 「気を付けるのよ!」


 綺麗な美声で「気を付けるのよ」と言ってくれたのは俺の母の浅川夢子。そして俺の名前は〈浅川大成〉だ。


 俺の日課は、朝早起きをして畑仕事をして下町に野菜を売りに行く。これが俺の日常だ俺には7人の家族がいる。


 母  浅川 夢子ゆめこ

 父  浅川 起男おきお

 長男 浅川 大成たいせい

 次男 浅川 まこと

 三男 浅川 龍太郎りゅうたろう

 長女 浅川 莉子りこ

 次女 浅川 美玖ミク


 この七人が俺の世界で一番の家族。俺が野菜を売りにちょっといつもよりかは遠出をして下町のさらに奥、巷では奥町と言われる場所に野菜を売りに行った。


 「はぁー、今日はなんだか寒いなー。下の子たちに何か買っていけないかな?」

 

 俺は下の子たちのおみ上げをまる一日考え選んだ末に〈肉〉を買っていくことにした。この時代の肉は凄く高級品だ。鶏肉、豚肉は安いが、俺が買ったのは牛肉だ。


 「おっちゃん、この牛肉を一つくださいな」

 「坊ちゃん、お前買えるんか?」

 「そのためにちゃんとお金を持って来たんだよ!」

 

 俺はそう言いながら服の胸ポケットに手を入れ財布を取ろうとしたのだが……そこには財布がなかった。


 「え……」

 「たいちゃん、もしかして財布がない?」

 「いや……あったはずですが……」


 俺は自分のプライベート用で取っていたお金に手を伸ばし代金を払った。

 

 「たいちゃんこれあと1000銭足りないよ?まぁーいいよたいちゃんだしな!」

 「えっ?良いんですか?」

 「いいよいいよ!持っていきな!」

 「ありがとうございます!!」


 俺は肉屋の店主から特別に値下げしてもらい、その場は凌げた。俺は家に帰り家族に高級牛肉を見せたらものすごく驚かれた。俺の家は見ての通り貧乏だ。家族全員働かないと次の日は食えなくなる。そこの貧乏家族の前に現れた食材がそうだ。


 「おにいちゃん。今日もお仕事お疲れ様」

 「ありがとう、莉子。でも俺の事は心配しなくていいぞ!」

 「でも……お兄ちゃん働きづめだし……私心配なんだよ!」


 俺は心配する莉子を落ち着かせて今日も床に寝たのだが……、ガタゴトと物音がうるさく俺は目を開けた……。


 俺も寝起きだったので何が起きているか分からないが。確かに見えたのだ……、莉子が襲われている!?


 俺はすぐさま近くにあった大きく鋭いカマを持ち得体のしれないその何かに立ち向かった。


 「うっ……。」


 俺は強く壁の方にたたきつけられ、息もしにくいまま「もう終わりなのか」とつぶやいたその時。


 「《龍ノ降魔術りゅうのこうまじゅつ 土音どおん》」


 確かに薄っすら聞こえたその声と同時に俺に近づいていた得体のしれない何かは跡形もなく消え去っていた。


 「……うぅー。」

 「無理をするな……。ごめんな助けが遅くて……。」


 俺はわけも知らずに話が進んでいき混乱していた。その男はごめんと言わんばかりにちゃんと順を追って話してくれた。


 「君、この世は何だと思う?」

 「この世?。この状況を見て平和とは言えないですけど。こうなる前は平和でした」

 「そうだよな……。それは俺達がいるから平和に暮らせていたんだ。この世は魔に満ちている……。あいつを殺さない限りは平和とは言わない……。」


 そう男は言うと男のこぶしは、力を込めて握られていて今にも血が流れそうな感じだった。男の話をまとめるとこの世界は【悪魔の始祖 亜全院 斬禅あぜんいんざんぜん】と言う悪魔の頂点の存在が元凶らしい。そしてこの男は悪魔を殲滅させる組織。【降魔大聖こうまたいせい】と言う組織に入っているらしい。


 その男と別れ際にある一枚の紙を渡して一言「お前は闇を知ってしまった」と言い放ち、ものすごい速さでその場を去ってしまった。


 「なんだこの紙は……。」


 俺はその紙が気になり、開いてみるとそこにはある言葉が記されていた。


――仲間・家族を救いたいならこの名前の主まで行け。その名は【残留時ざんりゅうじ 竜胆りんどう】この方がお前を導いてくれるだろう。――


 俺はこの紙を見て殺された家族の事を思い紙に書かれた竜胆と言う方の家まで行くことにした。


 風が程よく吹き、程よく暗いこの山道をひたすら歩き……歩き続けること数日ある一軒の家にたどり着いた。 それはすごく古くて人が住んでいるのか心配になるほどだった。


 「お前は何者だ?なぜこの場所が分かる?」


 俺は気配も分からずに背後から急に話を掛けられ「はぃ!」と気高い声で驚いてしまった。それはいかにも怖そうな顔立ちをしたおじいさんだった。


 「お前は何者だ?」

 「あ!俺はこの方からこのような紙を渡されてきました。浅川大成と言います!よろしくお願いします!!」


 俺は来る前に言われたように大きな声であいさつをした。おじいさんは「ほう~」と言いながらあごひげを触っていた。


 「お前はわし好みの男だけどな……お前はこの世界に立ち入るのか?」

 

 俺は言っている意味が分からずにいたその時におじさんが決定打を撃った。


 「お前は悪魔を狩るためだけに人生を使う……それでいいのか?」

 「俺は、悪魔に家族を殺された……だから悪魔を狩りつくす!」



 

 

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