第7話:とある二人の物語4
「白夜!逃げるぞ。目的地はお前が召喚された場所だ!」
二人が踵を返して、もと来た方向へ向かおうとした時に、突然、目の前に巨大な雷が落ちた。
「あれあれ、どこへ行こうとしてるんですか?私達の用はまだ終わっていませんよ。」
そこには金色の刺繍を施した真っ白なローブで見を包んだ十人程の魔導士と、漆黒の鎧を身に着けた十人程の騎士が立っていた。
「こんな所で出会うとはな。できれば地獄の底に着くまでは顔も見たくもなかったな。」
先頭に立つ、周囲より一際豪華な装備を纏った金髪の糸目の人族の男の声に、カルタは嫌な奴と出会ってしまったという不快感を隠そうともせずに答えた。
「そんなことを言わないで下さいよ。私やあの人は、あなたのことがお気に入りなんですからね。私も早く背中を預けたいと思ってるし、あの人もあなたを期待して、左隣には誰も立たせないんですから。」
カルタの皮肉にも全く動ずることもなく、糸目の男は平然と言葉を続けた。
「で、なんだ。皇帝の右腕と呼ばれるお前が、仲間を兵器で裏切るクソ野郎連中とつるんでるんだ?クサい臭いが伝染るぞ。」
「貴様!我らを愚弄するか!」
「黙れ!フシオを卑劣な手段で嵌めやがって!クソでなければ何と呼べばいいか教えてくれ!」
カルタの殺気を込めた視線に、魔導士達は、思わず後ろへ下がった。
「糸目、お前が用があるのは俺ということで良いか?」
「もちろんです!あなたが私に付いてきてくれるなら、後ろの方には手を出す予定はこれっぽっちもございません。」
右手の親指と人差指を僅かに離しながら語るその言葉に、彼の背後に並んでいた魔導士達は即座に口を挟んだ。
「ケビアス殿!約束が違う!精霊の神子は我らに譲ると約束していたはずだ!」
「はい、そのとおりですね。でも、捕まえるのに協力するとは、一言も口にしておりませんよね。」
「白夜!ミレイを連れて先に行け!」
その言葉に反応して、白夜は即座にその場を離れた。
「くっ!ワイバーンを召喚しろ!追うぞ!」
男がその言葉を言い終わらぬうちに、カルタの剣が一閃され、魔法障壁を纏っていなかった五人の魔導士の首が飛んだ。
更に剣を振るおうとしたカルタの前にケビアスが立ち塞がり、その剣を受け止めた。
「あなた達、あの子達を連れてきなさい。」
糸目の言葉で彼の配下が後方に下がり、姿を消した。
「協力はしないんだろ?違うのか?」
「それでも、立場上まったく無視はできないので、申し訳ありませんね。」
鍔迫り合いから、二人がお互いに距離を取った時には、五人の魔導士はワイバーンに騎乗して姿を消していた。それを追おうとしたカルタに、ケビアスが声をかけた。
「私達が保護したハーフリングの子供達ですが、こちらの勝手にして構いませんか?」
そこには、手枷(てかせ)を付けられたボロボロの洋服を着た五歳くらいの少年と少女が、虚ろな目をして立っていた。
「クソが…」
白夜が走り去った方向を振り返り、カルタは歯を食いしばり、一言呟いて剣を降ろした。
「すまん…」
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