第5話 父勇が殺害された

  次期大蔵大臣の呼び声高い大物政治家殺人事件の特捜本部が設置された。


 特捜最前線で活躍するデカ上村修五十歳は、今までに政財界の闇や凶悪犯罪を数多く手掛けてきたベテラン刑事だ。


「今度の事件も辺鄙な山奥だから、しばらく家に帰れん!」

 早速妻に連絡を入れる上村。


「アア~はいはい!いつもの事です。我が家は母子家庭ですから!」

 

 妻の真知子四十七歳は専業主婦、仕事一筋で家庭をかえりみない夫に呆れ顔 。息子の武は現在私立大学に通う二十歳。


「本当だよオヤジ!我が家は母子家庭!」

 

 息子もすっかり母親の尻車に乗って、嫌味の混じった微かな抵抗を……。 


 家庭の事は妻に任せっきりの仕事人間の為、家庭内には微かな隙間風が?


 一方の新米刑事佐藤敏夫は現在二十五歳の独身。 大学卒業後着実に刑法犯の検挙数を伸ばして、本年度から刑事課に配属されたばかりの新米エリ―ト刑事だが、若気の至りでこんな事が有った。


 金目当てで結婚した、三十歳も年の離れた夫に多額の保険金をかけて殺害した疑いのある美女に、若いからとなめられたのか、聞き込みに行き色仕掛けに合い、すっかり夢中になり肩入れしすぎて冷静な判断が出来なくなり、うっかり犯人を取り逃がすところだったのだ。


 あの時は、仕事も忘れてその女に夢中になり(ボ~ッ)として、うっかり重要機密をもらしそうになった。


 その時は、上司にこっ酷く怒られたが?ベテラン刑事の上村に救ってもらった過去がある。


 その為上村デカのために、何としても犯人をと、躍起になっている。


 だが?その癖は未だに治らず、すぐにタイプの女に惚れてしまうチョット困ったヤツ。


 二人は今日も現場付近の捜索にあたっている。 現場でのルミノ―ル反応の結果、多量の血液反応が出た為、殺害現場はこの辺りと判明。


 歯型の一部が井上勇さんと一致、更に血痕の一部から血液検査の結果、井上勇さんの血液型と一致!


 それでも…何故わざわざこんなところまで運んで殺す必要があったのか?合点がいかない。


「待てよ~こんな猫の子一匹通らない山奥なら?中々見つからないわな~?肉をどんな目的で剥いだか分からないが?これは確実に人間によって、そぎ落とされている。ここなら時間をかけて肉を剥いでも中々見つかりにくいから、わざとこんな山奥に運んだのだろう」


「そうですよね~普段はこんな辺鄙な場所、誰も来やしませんよね~?たまたま山菜採りのおばあちゃん達に見つかったが……」


 こんな山奥で人肉をそぎ落とす目的は一体何なのか?まさか…人間によって食い荒らされたのだろうか?

 

 恐ろしい事件の始まりが……。

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