第3話 洋子のお友達




 同じ白樺女学園一年生の洋子のお友達井上恵子は、おじいちゃんが総理大臣を務めた事も有る由緒正しいお家柄のお嬢様。


 父親の井上勇は、おじいちゃんの地盤を引き継ぎ、二期当選の中堅衆院議員の五十歳、それに母親の愛子四十四歳、兄の茂十九才は東京大学法学部に通うエリ—ト学生、恵子を訪ねてやってきた洋子に一瞬で💘ハ―トを撃ち抜かれてしまった茂。


「嗚呼…洋子ちゃん、今恵子呼んでくるから待ってて!」


 今日も洋子ちゃんが、訪ねて来ると聞いて茂は朝からソワソワ。いつもお手伝いさんが、お客様のお迎えに上がるのが、当たり前の井上家なのだが、洋子ちゃんが訪れる日は、朝からインタ―ホンの前を陣取り洋子を出迎える茂。


「お兄ちゃんせわしないな~何なのよ~?洋子目当てでしょう?」


「チッチ違うよ。妹の友達だから出迎えてやらないと、と思ってさ~アッハッハァ~」 兄の茂は、真っ赤っかになりながら否定するが?家族も『一目瞭然』皆気付いている。


  父や母も美しい洋子ちゃんの事は大のお気に入り、兄の恋に目を細めている。


 そんな事もあり最近は、兄茂そして妹の恵子と洋子三人でよく映画に行ったり、旅行に出掛けたり、大の仲良し三人組。

 

 🔶🔷🔶

 洋子は有名お嬢様大学白樺学園付属大学を卒業後、二十四歳で弁護士の茂と結婚する事になっていたのだが、突然茂とは、連絡が取れなくなってしまった。

 家に行っても門前払い。


 一体何故?


 突然の出来事になすすべもなく悶々と暮らす日々……。


「ママ何故急にこんな事になったの?洋子は何も分からない…どうして……?ワァ~~ンママどうして?~ワァ~~」 洋子はママにすがり付いて泣き崩れている。


 ママも娘が不憫で不憫で、洋子を抱き寄せ必死になだめている。


 そして2人は抱き合って延々泣き続けた。

「洋子可哀想に~ウゥワァ~」


 洋子は、あんなに愛し合った茂からの、突然の別れに「何故?何故?」


 何も言わずに突然ゴミくずのように捨てられてしまった。


 あんなに優しかった茂が何故⁉

 余りにも理不尽な、到底許すことの出来ない裏切りに合い人間不信になり、家に籠りがちになってしまった。



 そんな洋子の嘆きとは裏腹な一九八一年の麗らかな春先、茂の父勇が行方不明になった。

 一体何処に?  


 そんなある日、奥深い山奥に山菜採りに出掛けた、山里のおばあちゃん達が、かなりの奥まった場所まで入って行ったところ、鹿か熊に掘り起こされた、惨たらしい頭部を発見…… 。


 それもこんな長野県と岐阜県の県境の、猫の子一匹通らない辺鄙な山奥に一体誰の頭部なのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る