第18話 選択 2
そうだ。私はもうこの世界に未練なんてない。
大好きだった家族は奪われたから。
ずっと会いたかった人は、こうして傍にいてくれるから。
「アザたちと一緒に行こうよ」
グチャグチャになった思考を振り払うように頭を振って、
「どうして私なんか誘ってくれるの」
言葉を紡ぐ。
「私が差し出せるものなんてなにもないのに」
本当になにもないんだ。
今の私は空っぽだから。
なのに、
「そんなに自分を
「差し出さなくたっていいんだよお」
「貴女は存在してくれてるだけで十分なのよ」
「一緒に来てくれるだけでいいの」
ウァサゴちゃん、オルニアスちゃん、ラハシュちゃんが代わるがわる声をかけてくれる。
「みんな……」
カラダ中が温かくなって、散々泣いたはずなのにまたこみ上げてくる涙。
心を溶かされて情けない顔をしているのを見られたくなくて俯いていたら、
「ねぇ咲ちゃん」
アザちゃんにぎゅっと手を握られた。
「アザね、ずっと貴女のことが好きだったの。ずっと両想いだったの。漸く想いが通じ合ったんだから、一緒に来てほしい」
「アザちゃん……」
彼女の言葉がどうしようもなく嬉しくって、ついに涙が頬を伝った。
「アザたちと楽園へと飛び立とうよ。新しい人生が始まるよ」
どうしてこんなにも私のことをみんなが求めてくれるのか。
正直言ってよくわからない。
でも、私が選ぶべき選択肢は決まっていた。
独りぼっちになったときから、私の存在理由は貴女たち5人だったから。
そんな貴女たちが人間の世界を捨てて、楽園へと飛び立つと言うのなら。
新しい世界を見せてくれるというのなら。
私は返事の代わりに、力強くアザちゃんの手を握り返した。
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