心に正義を、マフラーに異世界の風を。

まちゅ~@英雄属性

第1話 ホーリーアーク前編

「ついに、ここまで来たか閃光ひかりアルト。」


「いや、改造人間ナンバー零号!!」


 悪の秘密結社ゾディーアークの首領ミスターゾディーアーク、天才科学者でもあり、独裁者でもある。

 黒き黒衣に身を纏い、己の欲望の為には、手段を選ばない最悪の男。


 数年前に、高校生だったアルトと友人達を拉致して、改造し、人で無くした張本人。


 自分の目の前で、仲間達が化け物に改造されて行く。一人目は、鋼の騎士に、もう一人は、邪悪な魔法使いに、更にもう一人は野獣の戦士に。


 奴は、仲間達の苦しむ姿を見せたかったのか、アルトは意識があるまま、改造の一部始終を見させられた。


 その時の感情のおかげかも知れない。


 アルトは、改造された後も、他の仲間達と違い意識を持っていた。


「俺をその名で呼ぶな、ゾディーアーク!!」


「俺は既に閃光アルトと言う人間では無いかも知れない。」激しい衝撃にも耐える鋼の体、全てを破壊し尽くす魔導の力、何よりも早く何よりも強い野獣のごとき力、そして感情を力にする、この胸に宿りしクロムハート勇者の心


 最初は、クロムハーツだけだった。後の力は仲間達を一人倒す事に手に入れた。


 何度、血の涙を流した。


 この血塗られた腕は敵だけでなく、友すら屠って来た。


 何時しか、首に纏っていた白いマフラーは赤く染まっていた。


「例え人で無くなろうとも、例え血の海を渡ろうとも、俺には、友のくれた名前がある。」


 強く拳を握りしめ、天高く突き上げる!!


 最初に倒した親友が言った。

『お前に殺されるなら本望。』だと。

 二人目に殺した自分を好きだと言ってくれた娘が言った。

『貴方は、私の眩しい聖なる光。』と。

 三人目に殺した弟は言った。

『兄さん、貴方は正しい道を』と。


「ならば、叫ぼう何度でも、正義の為に、平和の為に!!」


 俺に正義を語る資格は無いとしても。


「この呪詛の様に繰り返そう我の言葉を!!」


 ただ、悪を切り裂く光とならん。


『ホーリーアーク!!』


 黒と白の複合装甲、金色に光る目、そして赤いマフラーが風にたなびく。


「さぁ、最後の戦いだ、ミスターゾディーアーク!!」


聖なる光ホーリーアークが悪を断つ!!」


「来るが良い!!そなたのその力も、我が与えたものと忘れたか!!」


 黒衣のより、鉤爪の生えた触手が生まれ、ホーリーアークに襲いかかる。


 元より手段など選ばぬ男、己れの体を改造する事など、当たり前なのだろう。


(カイリ、力を借りるぞ。)触手に向けて、右手をかざす。

 モリキュール・コントローラー分子制御!!オレンジ色の閃光が走る。


 アナライズ解析


 この力は単体で敵を倒せる訳では無い。

 今は、時間を稼ぐ時。


(大地、頼む!!)左手を触手にかざす。


 インビンシブル・シールド無敵の盾!!

 蒼き光が触手を弾く!!


 弾かれた触手は幾重にも別れ全周囲からホーリーアークを襲う。


「その力も、元は我が与えたものだと言ったぞ!!」得意気なゾディーアークの声がうめき声に変わる。

「なっ、何だと!!」


「こいつはお前の力なんかじゃ無い!!」

 盾状だった光が、ホーリーアークの全身を包む。

「これは、俺と大地の決意の力!!」


「言うなれば、インビンシブル・デタミネーション無敵の決意!!」

 蒼き光は、触手を弾く。

「貴様に、この思い、決意を貫けるものか!!」

 その一つも、攻撃が当たる事など無い。


(解析完了)その時、ホーリーアークの頭の中に言葉が流れた。


「行くぞカイリ!!」オレンジの閃光を纏った右手をかざし。

「モリキュール・コントローラー!!」


 握り潰す!!


破壊ブレイク!!」


 触手の分子構造を解析した光によって、触手は砂の様に崩れ落ちて行く。


「くっ、己れ!!」

 分が悪いとみたゾディーアークは、分子操作の力により地面から己れの分身を何体も作り出し、その場を立ち去ろうとする。


「逃がしはしない!!」


「ソラ、奴は絶対に逃がしはしない!!」


「俺に力を!!」


 ホーリーアークを赤い光が包み込む。


ビースト・アクセラレータ獣性加速!!」


 赤い光が大地を走り、ゾディーアークの分身達を貫いていき、逃げ出そうとするゾディーアークの前に立ち塞がる。


「何だと、獣性加速を使って自我が保たれているだと!?」驚愕するゾディーアークに赤き光の戦士は宣言する。


「ソラの力と俺のクロムハートの力は相性が良かった様だな。」


「もう逃がしはしない!!ここで全てを終わらせる!!」


「やって見るが良い!!」


「私がただ闇雲に我が兵隊達を貴様と戦わせて来たと思ったか!!全ては、貴様のクロムハートの力を解析する為。」


「思いを増幅すると言う意味の解らない力が、作戦の要になるとは、思わなんだが全て人類再作成計画の為!!」


「解析し、洗脳し、強化するナノマシンを積んだミサイルによって、つまりは全ての人類は我が兵隊となる。」


「圧倒的に非効率になる計画を大幅に変える物それが、お前の持つクロムハートよ!!」


「クロムハートによって増幅された力があればこそ、この世界は、我が物となる!!」


 ふははははー!!ミスターゾディーアークの高笑いが木霊する。


「そして、今、その弾道ミサイルが発射された。」


 地響きと共に発射された弾道ミサイル、高笑いするミスターゾディーアーク、全てが絶望的な中、諦めない男がいた。


(ミサイルまでに、何十体物ゾディーアークの複製体と本体を全て倒しミサイルを引きずり落として、解析して無効化する。)


 言葉にするだけでも大変な事を一気にやらなければならない。


 分子操作、無敵の盾、獣性加速、そして勇者の心全てをフル回転して、更に通常の数倍の力を引き出さなければならない。


 クロムハートが何処まで耐えられるのか?


 いや、俺が何処まで耐えられるか?


 考えるな、体、技、心、全てをくれてやる!!


 叫べ!!お前は何者だ!!今こそ偽善者は正義の味方となる!!


 力を振り絞れ!!


 我の名は…。



『ホーリーアーク・オーバーロード!!』










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