第2話 最弱のスライム使い。孤立する
パーティーは5つに分かれていた。
委員長の明智をはじめ、男女入り混じりの秀才パーティー。
「やっぱり
大金持ちの美少女白鳥はもう勝利を確信しているようだ。
この状況がゲームなのか、競技なのかまったくわからないのにな。
勝利宣告されても困るっての。
白鳥は俺を一瞥して鼻で嘆息。
やれやれだ。
俺は相手にもされないゴミ扱いってわけか。
2つ目のパーティーは、不良グループのパーティー。
リーダーの座小崎は孤立した俺をニヤニヤと見ていた。
3つ目のパーティーは、ゲーム好きな連中のパーティー。
俺とは仲が良い方だったが、俺のステータスで仲間に入れない判断をしたらしい。
「悪いね。君のそのステと職業じゃあ僕たちのパーティーには入れられないよ」
「悪く思わんでくれよ
「雑魚はご遠慮願いたいっす。理論的に言って足手纏いっすからね」
まぁ、効率重視のこういつららしい選択だよな。
4つ目は、友情を謳歌している男女混合のリア充パーティー。
「いえーーい! 俺ら最高ーー!」
と、圏外になっているスマホで写真を撮っていた。
こいつらとは元々、関係が薄い。
俺はゲームとか漫画が好きなオタ気質だからな。
この連中とはクラスの中でも最も遠い存在だ。
にも関わらず、こいつらは俺のステを見てクスクスと笑っていた。
「超ステ低いし。ヤバ」
「スライム使いとか終わってんな。草ぁ」
「ちょ、マジで可哀想だから笑ったら悪いわよ。キャハハ!」
「もともと陰キャっぽいからな。こういう時辛いよね。ププ」
俺のことは放っておいてくれ。
どっちかっていうと1人が好きなんだからさ。
陰口されるのは気分が悪いっての。
最後は女子だけで構成されたパーティー。
男は論外といった雰囲気だ。
このパーティーは当然だろう。
しかし、
「
彼女はちょっとお人好しな女の子だ。
「……ありがとう。でも無理だ。パーティーの上限設定を見てくれよ」
空中に表示されているステータス。そのパーティー項目には上限が設定されていた。
6人。
これが最高の数。
この上限に達しているのが椿里のパーティーだけなんだ。
他の連中のパーティーには、まだ余剰分があるんだがな。
この雰囲気じゃあ入れてくれそうもない。
俺は1人だけの単独パーティーということにしよう。
明智が先導する。
「じゃあパーティーが決まったらステータス画面でパーティー登録を済ませてくれ」
すると、
【このパーティーで決定しますか?】
はい いいえ
と、案内表示が出現する。
おそらくこれで、はい、を押すと試練達成だ。
「じゃあ、まずは僕たちが押してみる」
明智たちが『はい』を選択すると、【クリア報酬。
行先がどこかはわかないけれど、おそらくパーティーが活躍するような場所だろう。
つまり……モンスターがいる場所だ。
俺は1人で大丈夫だろうか?
それぞれのパーティーは
そうして、残ったのは不良グループの4人パーティーと俺だけになった。
座小崎は笑う。
「なぁ、
はい?
「この先、モンスターがいるんならさ。お互いに能力確認してた方が効率的だろ?」
最悪だ。
ただでさえステータスは最弱。職業だってスライム使いなのにさ。
しかも向こうは4人。俺は1人だぞ!?
「お互いのためにさ。へへへ」
ったく、なにがお互いだ。
一方的な弱い者イジメがしたいだけだろ。
付き合う理由はない。
逃げるが勝ちだ!
俺はステータス画面の『はい』をタップしようとした。
「おっと、逃すかよ!!」
座小崎の拳が俺の頬を直撃する。
「ぐふぅっ!!」
俺は1メートル吹っ飛んだ。
「ぎゃははは! こりゃいいぜ! 異世界ってのは大っぴらに暴力が容認されてっからなぁ!!」
うう。確かに。
ここには喧嘩を止めてくれる先生も防犯カメラもない。
ここで戦うしかないのか。
「俺さ。魔法使いなんだわ。魔法使えっかな? ファイヤーボール」
すると、座小崎の手から炎の玉が飛び出した。
俺の横で爆発する。
「熱ぅッ!!」
「ひゃっはーー! 本当に出たぜ魔法がよぉおお!!」
直接食らったら死ぬ。
俺だってスライム使いなんだ。
攻撃してやるぞ。
初めてやるが、おそらく叫べば出るはずだ。
「スライム!!」
ポヨォオン……。
そこに出現したのは小さな水の塊だった。
幅は40センチくらいだろうか。
プルプルと震えている。
が、
よ、弱そう……。
「ギャハハハーーーー!! ちょ、何これぇええ!? これがお前の力かよぉおおお!?」
いや、まだわからないぞ。
「スライム! 攻撃だ!!」
スライムは座小崎に向かって飛び上がる。
動いた!
俺の命令ならなんでも聞いてくれるんだ。
「ファイヤーボール」
ボン!!
それは一瞬の出来事だった。
座小崎の炎で瞬時にして消滅したのである。
「あああああああ!!」
スライムーーーー!!
「草生えるわ! ギャハハ! 弱ぇええええええ!!」
まだだ!
まだ諦めないぞ!
「スライム!」
ポヨォン!
よし、また出たぞ。
どうやら何度でも呼べば出てくるみたいだ。
しかし、そのスライムは1撃で踏み潰された。
グチャァッ!!
「プフーー! 超弱えぇ……。踏むだけで余裕で殺せんな」
クソ!
でも、まだやれる。
「スライム! スライム! スライム!!」
ポヨォン! ポヨォン! ポヨォン!!
1つの名前につき1匹が出せるらしい。
これなら数で、
「
バキィッ!!
再び座小崎の拳が俺の頬を捉えた。
「ゲフゥウウ!!」
無常にも、出現した3匹のスライムは瞬殺されてしまう。
やっぱり弱すぎる。
数でもダメだ。
最弱モンスターは伊達じゃないのか。
俺は座小崎たちにボコボコにされた。
顔を頭を殴られて、腹には蹴りを入れられた。
顔は腫れ上がり鼻血はダラダラと流れる。
「ありがとな。雑魚スライム使いちゃんよぉ。いいウォーミングアップになったぜ。プクク。おまえみたいなゴミでも少しは役に立ったじゃねぇか」
「うう……」
「まぁ、俺は優しいからな。命だけは勘弁してやるよ。ぎゃははは。感謝すんだなザーーーーコ」
「でも座小崎さん。こいつのアイテムは使えそうっすよ?」
「かもな。迷惑料として貰っとこうぜ」
「いいっすね♪」
不良どもは俺から、金貨の袋と回復薬を盗んだ。
「雑魚の癖に生意気に抵抗したのは不味かったな。迷惑料としてこれは貰ってくぜ」
うう……。せ、せめて……。
「か、回復アイテムは……。お、置いてってくれ……」
「ギャハハハ! バーーカ! 弱い者の意見なんか通るかっての。そのまま野垂れ死んじまえよゴミィ。じゃーーなーー」
座小崎たちは
「うぐ……」
ダメだ意識が遠ざかる……。
俺はその場に気絶した。
何時間経ったのだろう?
目を覚ますと俺は生きていた。
「痛てて……」
身体中が痛い。
辛うじて鼻血は止まっているが、酷い目にあったな。
あいつらは人間のクズだ。
しかし、そんなことを愚痴っていても仕方ない。
強くならないと。
これからは自分の能力だけでこの世界を生き抜かないといけないんだからな。
「スライム」
ポヨォオン。
「おまえ、弱すぎだよな」
反応なし、か。
生物というより水の塊だな。
「まずは、この能力を隅々まで確認しよう」
スライムを凝視すると、空中にステータスが表示された。
名前:スライム。
LV:1
攻撃:1
体力:1
防御:0
速度:1
知力:0
魔力:0
弱ぁあああああ。
弱すぎるだろ……。
しかし、下の方には特性と書かれた追加項目があった。
特性:無限増殖。
これはさっきの戦いで証明されたよな。
「スライム」
ポヨォオン。
「スライム」
ポヨォオン。
名前を呼ぶと1回につき1匹出るんだ。
不思議な感覚はあった。
なんとなく念じてみる。
弾けろ。と。
パン!!
なるほど。
消えろ、でも弾けて消滅するのか。
ただ念じるだけでいい。
スライム。
ポヨォオン。
こいつは弱い……。
踏みつけただけで簡単に消滅する弱さだ。
だが、無限に出せるなら……可能性は感じるぞ。
この場所は周囲に敵はいなさそうだしな。
もう少し、能力を考察しようか。
もっと強くなる方法……。
「おっ。これは?」
スタータス画面を触っている時だった。
俺の名前をタップするとスキル名が表示されたのだ。
○
火、氷、土、風、雷。五つの属性をモンスターに付与することができる。
ほぉ。付与のスキルか。
スライムの無限増殖と俺の
これって可能性があるんじゃないか?
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