第46話 触手部屋隠エレベーター。そして、お茶爆!
「リコ! 来たよ!」
アトラクションタワーの吹き抜け部分を降りて、妖精メルルはリコと合流した。
「メルルちゃん! 鬼神さんはどこ?」
「90階は超えてたよ。100階についたかも。でも、どうして僕を呼んだの?」
「サキュバスが心配だったから。鬼神さんドスケベだし」
「あいつはハニトラは効かないと思うよ?」
「でも! キメラサキュバスに魅了されて……」
「暇つぶしって言ってたかなあ」
リコは肩を落とした。
「なら良かった。私もスタジオで啖呵切ってきちゃったから登らないとな」
「フェザージェムがあるから。僕に捕まれば良いよ」
「メルルちゃん、その羽は?!」
メルルの妖精の翅が大きく広がり、大鷲のごとくとなった。
ふうぅううんと羽が広がり、一時的な進化を果たしていた。
「へへん。僕との契約者はリコだからね。僕の妖精権能はリコの側だと強くなるんだよ」
「じゃあ、遠慮無く乗るよ!」
「鬼神が強すぎるから、僕の成長も早くなったんだけどね。鬼神様々だよ、うんう
ん」
メルルに捕まり、リコはタワー中央の吹き抜けを飛翔!
「すごい! ぐんぐん登っていく!」
「70階までは行けるよ! 吹き抜けはそこで終わりだから。そこからは地力で、だよ!」
「わかった!」
リコとメルルは吹き抜けを飛翔し、70階に降り立つ。
鬼神が魔獣を殲滅した惨状の中を、他の挑戦者が登っていたところだった。
ホストの光苔ヤスシ、力士の爆乃海、ダイジ君や班長などが70階まで来ていた。
「あれは!」
「生の輝竜リコでごわす!」
「リゴぢゃん?!」
「うーん。いいねえ。いいよ。とてもいいね。さすがは生の配信者だ」
70階の両脇の扉が開き、さらなる迷宮魔獣が追加される。
「すみません、通ります!」
リコはステルス迷彩を起動し、魔獣をスルーする。
レンジャー能力は踏破に特化した能力なので、スルースキルが高いのだ。
「リゴぢゃん! 俺らのぎぜいば! 無駄にじないでぐれ!」
ダイジ君の叫びを背後でスルーしつつ、リコは80階の触手エリアに到達。
サバイバルナイフで触手を切り裂きながら進む。
「何、この触手。まるで意思があるような……?」
そのとき触手から声が響いた。
「そのとおりだよリコ君」
触手がしゃべった。
「その声は……屍田さん! どうして触手から声が……」
「君を捉えるためだ」
「ぐぅ……っ」
「リコ!」
メルルが叫ぶも、リコは触手に捉えられ引きずられてしまう。
妖精の翼は巨大化していたが戦闘力はそのままだ。
リコは手足や首を縛られながらも、問いかける。
「屍田さん! あなたはヒドイ人だけど、まだ人間だと思っていたのに……。もしかして触手と融合したんですか?!」
『ああそうだ。僕は常々、人間を超えたいと常々思っていたんだよ』
しゅるりと触手から口が開き、屍田の声が響いた。
「でもこんなの。触手になることはないじゃないですか!」
『私はこのアトラクションタワーで人を食い物にしてきた。だが鬼神が来たおかげで地下労働者まで暴かれてしまった。もう台無しになってしまったんだ』
「鬼神さんはあなたのことは嫌いじゃなかったはずです。アトラクションだって宣伝になるからと喜んでいました」
『鬼神が私を好きかどうかはどうでもいい。私が鬼神を嫌いなんだ。君が私のものにならないから、でもある』
リコの四肢が触手となった屍田に絡め取られる。
「うっ、ぐぅぅううぅ……」
『君が私にものにならないから、私は鬼神を陥れようとした。だがそのあげくが積み重ねてきたものの崩壊だ』
「そんなの……。自業自得じゃないですか!」
『いままではタワーに挑戦する者を葬り去り、地下労働者として酷使してきた。その労働の対価をピンハネして私は財を築いてきたんだ。それがあの男のおかげでおじゃんだよ……』
「悪事が露呈したってだけでしょうが!」
触手がびくんと蠢いた。
リコが図星をついたからだ。
「ひぐうぅうう!」
『もういい。輝竜リコ君。君と私は根本的に考えが合わないようだ。君は正義マンすぎる。気持ち悪いんだ』
「気持ち悪い触手なのはあなたでしょ!」
リコはずるずると引きずり込まれていく。
「リコぉ。がんばれがんばれ!」
メルルがリコの腕をひっぱるが、止まらない。
触手部屋の壁がぱかりと開いた。
「何、この部屋は!?」
『この触手部屋にショートカットがあるなんて誰も思わねえよなぁ!』
リコは触手部屋に吸い込まれてしまう!
「こ、これは?!」
部屋の向こうは桃色の肉のエレベーターになっていたのだ。
『触手エレベーターだよ。一気に100階の私の元までひとっ飛びさせて貰う』
「くっ……」
ぐおんと肉のエレベータが起動!
エレベータが上昇し、触手に縛られたリコは100階へと向かってしまう。
『お前を人質にとって、鬼神をなぶり殺してやる』
「うう。私はまたヘマを……。鬼神さんを助けにきたはずなのに……」
『ざまあないなぁ!』
メルルはリコを助けることができず呆然とした。
ただ配信することしかできなかった。
「どうしよう、どうしよう……。僕は。配信をすることしか……」
しかしメルルの配信によって、触手と融合した屍田が全国中継されてもいたのだった。
コメントが流れていく。
『触手と融合って、もはや人ではないのでは?』
『鬼神さん、リコちんを助けてください!』
『人身売買に地下労働者に触手と融合って人間じゃないですよ、こいつ!』
『触手じゃん』
『触手だからね』
『うねうね』
『屍田グループの株価が下落中!』
『スパチャ送ります! リコちんを助けて』
『お茶!』
『お茶爆!』
『お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶!』
『オラオラオラオラオラ!』
『10000エン』
『8000エン』
『6000エン』
『リコちん救出資金です』
『100000エンです』
お金を送る人はポツポツだったが、お茶は爆発的に送り込まれてきていた。
『お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶』
鬼神は救世主として、お茶(力)を投入されていた。
そして屍田踏彦は〈成功した資産家〉から一転、〈触手融合人間〉として知られてしまうこととなってしまった!
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