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動画資料 20■■年08月■■日 (ビデオカメラによる録画、名前のみ編集済み)

 状況資料

              

——以下は20■■年8月■■日の午前0時から■■日の午前0時の■日間にかけて、東京都内で確認された現象について記したものである。


1.新宿駅前においてムカデ型の巨大生命体が暴走したとの通報。

 自衛隊が威力鎮圧に向かうが、既にムカデ型生命体は死亡が確認。

 頭部を圧潰された状態で発見された。

 当時、ゴブリン族を救出しようとした青年が死亡したと言う通報もあったが死体は確認されておらず行方は未だ不明。


2.港区、六本木内にて正体不明の生命体が200人以上の人間と交戦。

 200名全員が特定危険宗教団体【不壊の歯車教会】(以下:UGC)の信者と情報が合致。

 信者は、全員死亡。その後、宗教団体UGCは組織ごと壊滅した。

 なお生命体の方は交戦後失踪し、依然行方は不明。

 さらに、その翌日。渋谷区にて失踪事件が2件確認されたが、本件との関連性は無しと思われる。


3.葛飾区、荒川河川敷において確認されたミステリーサークルについて調査を予定していたが謎の火災により調査は中止する事となった。

なお、周辺住民によると謎の発光体が確認されたが真偽は不明。

発火時になんらかの漂着物が爆発した可能性があると見て調査を続ける。


 以上3件が今回都内で発生した非現実事象である。

 

 防衛省。

 統合幕僚会議。


 会議室と呼ばれるだだっ広い空間の中に集まる陸海空の各幕僚長と統合幕僚長。


「まさか、8年目にして始まりおったか……」

 航空幕僚長が皺だらけの顔を顰めて資料を見つめている。

「逆に、8年も何も無かった方がおかしかったんですよ。それを誰も疑わなかったと言うのは我々の責任でしかない」

 老齢ながらも精悍な海上幕僚長は、腕を組んでプロジェクターに映し出された東京都の地図を眺める。


 地図の上にはいくつもの赤い点がまばらに浮かんでいる。

 そして、新しく赤い点が都内に3つ浮かぶ。


「東京を内から侵略する敵……これを未然に阻止しなければ8年前の再来になります」

 陸上幕僚長が厳かな表情で周囲の人間を見回した。


「統合幕僚長、例の件は」


 中央に座る統合幕僚長は沈んだ声色で告げた。

「……防衛省には既に通してある。だが、この件は法案として通さず、秘密裏に結成そして速やかに非現実事象の対処を実行する」


 ざわめく会議室。

「つまりは、民主主義を無視すると?」

「自衛隊は国民の信頼の上で成り立っているだろう!!そんな事が知られたら面目丸潰れだ!!」

「いくら、現実的にはあり得ない事象だとしても公にしないまま封殺するのは不可能だ」


 各幕僚長はそれぞれ批判を投げつけていた。

 

「確かに、今回これがメディアに触れたら我々自衛隊としての信頼はどん底へと失墜する。だが、誰が今まで起きた事を信じる?自衛隊という国からの機関がオカルトに踊らされていると批判され、侮蔑されるより秘密裏に黙殺すれば遥かに良い」


 そう言って、統合幕僚長はとある書類を出す。

「“非現実事象Un-Real Events鎮圧隊suppression squad”、通称URES'sユーリス。現在時を持ってこれを承認し、統合幕僚長及び陸海空幕僚長を解任する」


 再びざわめく会議室。

 しかし、反論は全く無かった。


「我々は知りすぎた。これ以上この世界に踏み入れてはならない。国民の生命を守る為にも、知らないモノを知らないままでいる事は何もおかしくはない」



 ———録画終了。

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