社畜が転生先の中世ヨーロッパで真実を守るために闘う事になりました

池野華龍

ヤン・フス編

第1話 結局転生しても社畜かよ


 俺はトラックドライバー。俺は俗にいう社畜である。毎日16時間くらい車を走らせても残業代は雀の涙ほどしか出ない。休日も雨の日も風の日も吹雪の日もトラックを走り続ける。俺はこれから始まる地獄に悩みつつ、つい無意識であくびをした。その瞬間だった。頭に強い衝撃が走った。

 意識が戻った時、目の前に見た景色は見覚えのない景色だった。この景色は日本ではない。まるで中世ヨーロッパのような街並みだった。俺が困惑しているとポツポツと覚えがない、しかしどこか懐かしい記憶が蘇ってきた。俺の名前はヨゼフ。いや、正確的に言えばこの体の持ち主の名前がヨゼフ。ここはボヘミアのプラハ。俺の父は鍛冶屋職人だ。父母どちらも熱心なキリスト教徒だ。俺は体験したことのない記憶を振り返っていた。きっと、俺はこの子の体に転生したのだろう。この記憶はこの子の今までの記憶。俺は今からこの子、ヨゼフとして生きないといけない。頭は理解したが内心はまだ混乱している。

 それから5年くらい時が流れた。その経過は割愛させていただくが、今までの社畜ライフとは程遠いニートのような生活を送っている。いや、送っていたという言い方のほうが正しいだろう。実は最近、父親の職場に弟子入りさせられたのだ。職場では雑用を任せられていて、まるでパシリのような扱いを受けている。まあ、先輩によるとこれが普通のようだが。

「お、相変わらずたくましい体つきだな、ヨゼフ。」

この声をかけてきた少しちゃらそうな男はヤン。俺の幼馴染で、親友だ。実はヤンという名前の人は多くて他の人と混ざってややこしいので俺は勝手にオブ( obchodník :チェコ語で商人という意味)と呼んでいる。

「毎日毎日、使い走りされているからな。俺に比べてオブはいいよな。商人の弟子は体力使わなさそうで。」

「そうだけど、ヨゼフの嫌いな計算があるよ。」

「うげ、それは無理だ。」

俺は前世でも勉強というものは苦手だった。あ、歴史は好きだったが・・・。そう考えると鍛冶職人のほうが俺には向いているのかもしれない。俺は体が自慢だから。

 家に帰ると親父とお袋の叫びが聞こえた。俺は急いで両親のところへ向かうと机の上には「免罪符」と書かれた紙が大量に積まれていた。


あとがき 

 基本私の知識とインターネット、本でこの本は書いています。参考文献は最後に書きます。これを機にチェコの歴史や文化について興味が湧くと嬉しいです。

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