異世界に転移したら職業適性を調べられ、その結果コンビニ店長ってマジか……しかも悪魔や淫魔まで現れてもう大変!?~どうやら俺の人生は神々の娯楽らしいです~

矢島やじ

第一部 プロローグ

第1話 ここのコンビニ、○○に染みるわー


 窓の向こうには青々とした平原が広がっていた。

 馬車が通れるくらいの土の道がのび、森まで続く緑の大地。レジカウンターから見える景色にしては随分自然豊かなところだ。電柱も電線もないし、ここからじゃ民家すら見えない。まるで人里離れた未開の土地だ。


 でもここ裏には、城壁に囲まれた街があるから未開の土地っていうよりファンタジー世界の街外れって感じなんだよな……。


 俺――綾上勇夜あやがみゆうやはそう思うと、レジから店内を流し見る。

 商品棚に並ぶスナック菓子やおにぎりやお弁当。平原側には雑誌コーナーや日用品を売っている棚が並び、奥にはペットボトル飲料が詰まったウォークイン冷蔵庫がある。


 コンビニだ。どこからどう見てもコンビニの店内だ。

 外はRPGみたいな平原が見えているし、高さが一〇メートルほどの城壁が店の裏に続いているが、ここは間違いなくコンビニだ。

 こんな西洋風ファンタジーな場所にコンビニなんておかしいと思うが、客層はもっとおかしかった。


 さっきからコピー機の前で何かを印刷しているタキシード姿の男の頭は山羊だったりするし、肉も皮もない骨だけの身体だから男か女かもわからん奴が店内を物色していたりもする。前者は山羊頭の悪魔バフォメットで、後者は皮の鎧を着た骸骨兵スケルトンだ。


 いつ見てもこのコンビニの客層ってファンタジーだよな……。


 ちょっと慣れてきたもののやっぱり人間の客が恋しい。だってここは異世界だから。

 なんで異世界に来ているのかというと、色々あって俺は転移してここでコンビニ店長に任命され、それで神々の気まぐれでコンビニを異世界の街の横に建てたって感じなんだけど、なんで俺なんだ? ただのコンビニバイトだったし、どこにでもいる大学生だったのに……。


 そう思っているとレジに骸骨兵スケルトンが来た。


「あの、そこのチキンって骨付きだったりする?」


 気さくな男の声だ。ホットスナックケースを骨の指で示している。


「はい、骨付きもありますよ」

「じゃあそれにしようかな」

「ありがとうございます。いくついりますか?」

「一つで。それと骨付きチキンは、チキン抜きで」

「ん?」


 聞き間違えかと思った。だから俺は誤解がないよう教えてあげることにした。


「骨なしチキンならありますよ」


 だがなぜか骸骨兵は骨の手を顔の前で振って「それじゃあ意味ないよ」と言ってくる。


 ひょっとしてボケてるのか?


 そう思うが、お客さんは真顔というか、骸骨だから表情がわからない。


「あの、早くしてもらっていい?」

「骨だけ欲しいってことですか?」

「さっきからそう言ってんじゃん。もうあんたが食べてもいいからさ、さっさと骨くださいよ」


 なんだろう。日本にいた時はコンビニバイトを二年くらいしていたが、初めてのケースだ。

 まぁここって異世界だからこういう客もいるってことかな?

 とりあえず従って骨付きチキンを食べていると、骸骨兵スケルトンがハンディウェットティッシュと化粧水をレジカウンターに置いてきた。


「あと、これもお願いします」

「はい……?」


 ヤバい。疑問符が頭に浮かぶ。

 ウェットティッシュはまだしも化粧水で保湿する意味もねぇだろ、骨だし!

 引っかかるところはあるが、骨付きチキンを食べ終え、とりあえず商品をレジに通していく。


「お買い上げありがとうございます。あの……俺が言うのもなんですが、食べたあとの骨付きチキンを商品として売るっておかしいですよね?」

「あーいいのいいの。こう使うから」


 骸骨兵スケルトンはそう言うと、俺から受け取った骨付きチキンの骨を胸元まで持ち上げる。するとチキンの骨が淡い光に包まれ、霧散し、その光が骨の身体に吸収された。


「防御力が二、上昇した」

「あー、自分で言うスタイルなんだ……」


 どうやらステータスアップのアイテムになったようだ。

 俺が苦笑すると、唇のない口をコカッと開き、骸骨兵スケルトンは気持ちよさそうに息を吐いた。


「骨に染みるわー、いいわこれー」

「そうですか……確かにしみ込んでましたよね、光が」

「いやー、こんな簡単にステータスアップできるなんてすごい商品だなー」


 そう言いながら骸骨兵スケルトンが脂のついた手を買ったばかりのウェットティッシュで拭いた。

 まだレジには誰も並んでないので俺は世間話を続ける。


「まぁ一応ここ、神様が用意してるんで結構特殊なんですよね」

「ああ、なるほどね……ん?」

「どうしました?」

「ヤバい、進化しそう」

「えっ、こんなところで急に……!?」


 骨の身体が輝いていた。

 なんなのこの客!? レジ前で進化しだしたんだけど!?

 俺が驚いていると、どんどん光が弱まって、やがてテカテカした骸骨兵スケルトンが誕生した。


湿潤骸骨兵ウェットスケルトンに進化した!」

「ただ濡れただけじゃん! つーかなんなんだよ、さっきの光の演出は……っ!?」

「骨に染みるわー」

「また染みてるし!」

「こうなったらこっちの化粧水も使ってみようかな」


 化粧水のボトルを頭に向けて振りかけると、骸骨兵スケルトンの身体に青白い光が纏わりついた。そして光が消えると、若干黄ばんでいた骨の身体が真っ白に染まった。


「はっ!? これは……!」

「どうせまた進化するんでしょ? もういいよ、そのノリ」

「美白強化が付与された」

「マジックアイテムかよ……化粧水がマジックアイテムとか、やけに美意識高いアイテムだな」

「骨に染みるわー」

「アンタなんでも染みてんじゃん!」

骸骨兵スケルトンは骨が白ければ白いほど美男美女なんだぜ!」

「聞いてない聞いてない」


 ぐっと親指を立てて勝手に豆知識を話し出す骸骨に俺は小さく首を横に振った。


(次回に続く)



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