286. 確認
んー、なんか騒がしい気がするよぉ?
――バンッ!
「ギルマス、サブマス、大変です!」
「こらこら、ノックをしてから入室してきてください」
ギルマス部屋に入ってきたギルド職員にギルマスが応える。
わー、やっぱり何か厄介事だぁ。
でも今回は安心だよね。だってギルマスが対応してくれるハズだもん。今は主要な冒険者も王都に待機してるし、私は通常業務を淡々と片付けてくだけだ。
「ノックどころでは……。街にドラゴンが降り立ったんですよ!」
あー、これあれだ。妖精様案件だ。
「ふむ……」
「それだけじゃありません! 南の空を見てください! 山向こうが暗い霧のようなモノで覆われたんですよ!」
山向こうが霧に?
南って言えば妖精様が総力戦で防衛しろって言ってたんだよね。そのせいで有力冒険者は王都待機になってるんだ。それでダスターさんもいつでも動けるようにってことで、私達の結婚も保留中なんだよね……。それも何か関係あるのかな。
「……ちょっとリスティさん、様子を見てきてくださいませんか?」
「え……? 嫌ですよどうして私なんです? 職員さんに見てきてもらえば良いじゃないですかぁ」
「まぁまぁ、そう言わずに。裁量が求められる可能性が高いですからね。それに間違いなく妖精様が絡んでおられるでしょう。であればアナタの担当では?」
「え? 担当じゃないですけど?」
いつから私が妖精様担当になったんです?
その後いろいろ抵抗してみたものの、やっぱり拒否はできなさそうだったから仕方なく外の様子を見に出た。くそぉギルマスめ。これからも妖精様案件は全部私に丸投げする気に違いないよぉ。
顔をあげると広場の薬師ギルド前にドラゴンが突っ立ってる。そしてその周りをやっぱり妖精様が飛び回っておられ、それから……、なんだろ?
小さいオジサン達が薬師ギルド内からポーションを運び出してるね。もしかしてあれって、王城で捕まえたっていう神域の民? それに運んでるポーションは妖精ポーションだ。
それで、運び出したポーションをドラゴンのお腹の中に次々と詰め込んでる。クチからじゃないよ。ドラゴンのお腹を搔っ捌いて直接お腹に突っ込んでるんだ。
しかも、ドラゴンのお腹の中には他にもヤバそうなのが入っているのがチラチラ見える。……見なかったことにしよぉ。
ってか、ドラゴンの背中に何人か人が乗ってるね。
魔術師団長様に……、え、あれってカティヌールのお姫様?
カティヌールと言えば山向こうの南の王国だ。
南の空を見てみる。
確かに山向こうが暗い気がするなぁ。天気が荒れてるだけと言われたらそうにも見えるんだけど、でもまぁ、何か起こったんだろうなぁ。
あー、山向こうで何かが起こったから妖精様がポーションをドラゴンで届けようとしてるのか。なるほどなるほどぉ。
よし、確認終わり。
じゃぁギルドに戻ろっかな。だって私にできることなんて何もないもんね。後で王城に確認の連絡でもしとけば私の仕事は終わりでしょぉ。
とか思っていたら、妖精様と目があった。ばっちりと。
そして私の体が浮く。
いや、そんなワケないよね? 私は行かないよ? 行かないって!
ウソだと言ってよ妖精様!
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