285. なにしてくれてんの!

 おいいいい!

 ちょっとちょっとちょっとちょっとぉ、何してくれてんのよこのムニムニ達さぁ!


 その目の前にあるピンを倒す遊びなの! そこのピンを狙うんだよ! なのにどうして全力で玉をふっ飛ばしてんのさ!


 私に相手してもらえたからなのか、テンションマックスになったムニリーダーは私が用意した木製の玉を全力でかっ飛ばしちゃった。それでその玉は空の彼方へすっ飛んでっちゃったんだよね。キラーンていうエフェクトを幻視しちゃったよ。まったくもう!


「ムニ……、ムニムムニ……」

「あの……、つい力んでしまって手が滑ったそうです……」


 ムニリーダーが言ったことをムニ姫様が通訳してくれる。

 手が滑っただけであんだけ飛んでくワケないでしょ! どんな怪力だよ。


 ああ……、あの玉が落ちた先に人がいたらどうしよう。

 あんなのがあのスピードで当たったら死んじゃうってマジで。そうなれば私は業務上過失致死罪だ。いや、ボウリングモドキは業務じゃないか。それに実行犯は私じゃなくてムニリーダーだ。だとすれば危険玉飛ばし過失致死幇助ほうじょとかそんな感じだ。絶対ヤバい。


 誰か偉い人に報告して謝っておいた方が良いかな。

 でもあの玉が飛んでった先に人が居る確率なんて、実はそんなにないかもしれない。だってこの国は日本みたいにどこもかしこも建物が建ってるような場所じゃないもんね。大部分は何もない平原なんだ。そしてそんな大平原の中にポツンと町が点在してるだけ。ならあの玉が落ちる場所に人がいる確率なんてむちゃくちゃ低いんじゃないかな。

 って言うか! やったのムニリーダーだし! 私悪くないよねぇ!?


 とか思ってたら、玉が飛んでった方向の空が暗く光った。

 光って暗いとか意味わからないけど、ホントにそう表現するしかないような感じなんだ。闇が広がるって言うの? 影が放射状に伸びる感じ? なんだあれ? 魔力? めっちゃ禍々しいんだけど。あ、でもすぐ消えた。


「ムニ!?」

「ムニムニ!」

「ムニムニムニムニムニムニ!」


 ムニムニ達も騒ぎだしてる。ムニ姫様は不安そうだ。

 うーん、方向とタイミング的に、さっき飛んでった玉と無関係とは思えないんだけど。いやだって、ここに来てもう1年以上になるけど、あんなの見たことないもん。何がきっかけかって訊かれたら、さっきの玉しか思いつかないよ!


 でもあの玉に禍々しい魔力なんてなかった。じゃぁなんだろ?

 突然空から降ってきた玉に当たった誰かがその怒りで魔力を爆発させたとか?

 いやいや、まだ偶然の線も捨てきれない。落ち着け。


「ムニム!? ムニムニニ!」

「ムニッ! ムニーッ!」


 すると今度は山の向こうで暗い魔力が膨れ上がった。さっきよりもすごい魔力だよ!


「ムニムニムニムニ!」

「え……、まさか、本当ですか?」


 え? なになに? もったいぶらずに私にも教えてよ。いったい何が起こってるっていうのさ?


「魔王の封印が……、解けたかもしれないと……」


 え、えーっ!?

 な、なんだってー!? 人類は滅亡する!?


 最初に禍々しい魔力が出たのは山の手前だ。それはすぐ消えたけど、その後しばらくしてもっとすごい禍々しい魔力が噴出したんだ。

 つ、つまり……、きっとさっきの玉は山の手前の最初に魔力が出た場所に落ちたんだ。そして実はそこには魔王の封印に重要な何かがあったのかもしれない。それにふっとんでいった玉が当たって壊れたんだ。それで山向こうの魔王が復活!


 ヤバいよヤバいよ、いったい何してくれてんのさムニリーダーは!

 出てきた魔王はなるはやで倒さないと。だって世界を焼き尽くしたとか衛星ぶっこわしたとか言ってたもん。そんなのダメだって。私の快適ペットライフもジ・エンドじゃん!


 うーん、魔王討伐と言えば勇者パーティー。勇者くんと聖女さんは現地へ行っている。勇者パーティーと言えば、あとは魔法使いとか戦士とかか。


 魔法使いはおじゃーさん、戦士は……、お酒マンはダメだ。死亡フラグが立っているから連れていったら間違いなく死んじゃうでしょ。でも誰か他に良い人なんて……。

 ああ、ムニムニがいた。戦士枠はムニリーダーだ。魔王復活の直接の原因なんだから、肉壁要員でも文句は言わせないよ。


 あと魔王討伐に必要そうなものって何だろ。


 ……とりあえず適当に色々持ってくか。

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