255. 第1お貴族様
わ、わ、わ、私人形だーっ!?
しかもしかもあっちには、でかい私の肖像画だーっ!
私が東へ出発してから最初の第1お貴族様、そのお貴族邸にお泊りすることになったんだけど、まぁあるわあるわ、そこらじゅう妖精グッズだらけだ。
妖精が装飾されたオルゴールに妖精模様のテーブルや椅子。食器とか燭台とかなんとかかんとか諸々全部妖精妖精、もはや狂気だね。わ、今気づいたけどカーペットも妖精柄だ!
おのれ、おじリーダーめ。いったいどれほどの妖精グッズを作ったって言うんだよ!?
でもま、いっか。そのおかげで私は莫大なお金を手に入れたのだ。憧れの中世ファンタジー世界でお金をもらいながらお城に住んでメイドさんに全部世話してもらってるペット生活。なんてセレブ、これぞ勝ち組人生。ちょっとくらい勇者くんにあげたって全然お金は残ってるんだもん。ウハウハだね!
「妖精様、妻XXXXXX。XXXXXXXX、XXXXXXX子XXXXXX」
「妖精様、私XXXXXXXXX子XXXXX」
なんて?
この館の主のお貴族夫婦がさっきから色々言ってるけど、早口で喋られるとまだ何言っているかよく聞き取れないなぁ。いやー、言葉もだいぶ覚えたつもりなんだけどねぇ。
子がどうのって言ってるから、傍にいる5歳くらいの男の子のことか、もしくは夫人のお腹の中の赤ちゃんのことか……。そう、このお貴族夫人さんは妊娠中なのだ。
なんでも金髪兄さんと聖女さんが結婚したから、自分たちの子どもを次期国王陛下の子である未来の王子様のお友達候補にしようとベビーブームが来るらしい。
それでこのお貴族夫婦もそれに合わせて子作りしたのだ。ちょっと早すぎたと笑ってるけど、長男は跡取り、次の子を次期国王陛下の王子の側近にしたいんだって。戦争も終わって夢広がりまくりってヤツだね。
でもそんなこと、王族である銀髪ちゃんの前で言って良いの? いや、銀髪ちゃんの前だからアピールしてるのかな。ま、私には関係ないや。
興味本位で夫人のお腹を触らせてもらった。許可はとったよ? めっちゃ笑顔だったからオーケーに違いない。脈拍がトクントクンと聞こえたけど、赤ちゃんの鼓動なのか夫人の鼓動なのかよくわからないよね。ま、元気そうでなによりです。
すでに産まれている男の子の方は貴族だけあって利発そうだ。そのお利発お子さんは現在なんと、
半年ほど前に
一瞬、善意でチェケラ号をホントに飛べるように改造してあげようかと思ったけど、5歳児の遊び道具が飛ぶのはさすがに危ないかと思ってやめた。
でもちょっとくらいサービスしてあげよう。しっかり掴まってなよ~、ほ~ら浮いたよぉ。
王都のガキンチョをジェットコースターした要領で、お利発お子さんが乗った
これなら安心安全。室内だからあんまり高く速くは飛べないけど、それでもお利発お子さんはキャッキャと喜んでる。お貴族夫婦もご満悦だ。執事さんやメイドさんが青い顔してるけど、まぁ大丈夫でしょ。
銀髪ちゃんがフライングチェケラお利発お子さんを羨ましそうに見てたけど、スカートで飛ぶと丸見えになるからやめといた方が良いと思うよ。スカートで飛び回ってる私が言うのもなんだけどね。
そうそう、私が住んでる大きな街はこの国の王都だったらしい。王都ファルシアンだ。お城があって王様がいるんだからそりゃそうかって感じだけど。
それで、私たちが国境付近に到着するタイミングで合流できるように、後から帝国第2皇子を護送してくるんだって。んで、サルディア帝国っていう隣の国にそのまま引き渡すらしい。
帝国第2皇子って誰だって思ったら、前にドラゴンで聖女さんの国へ行ったときにロープでぐるぐる巻きにした人だった。そんな偉い人を私はぐるぐる巻きにしたのかと焦ったけど、別に怒られる感じもしなくて問題なさそうで安心した。帝国第2皇子って人も牢屋に入ってたからね、罪人だったんだろうね。
その後、お利発お子さんと持ってきたボードゲームでも遊んであげようと思ったけど、さすがに5歳児相手だと勝っても弱い者いじめみたいで嬉しくなかった。だから適度に負けてあげたよ。優しいでしょ?
そんなふうになんやかんやして初日の滞在は過ぎていったんだ。
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