217. 転移の魔道具
はっ!? 寝坊した! 遅刻!? 今何時!?
……あれ? 何に遅刻するんだっけ?
ここどこ? あ、お城の中の私の部屋の中のドールハウスの中の私の部屋か。
えーと、寝ぼけてるな。今私は妖精なんだ。遅刻も何も、日がな1日寝てたって文句は言われないハズだよね。ビバ、ペットライフ。
ってか、ホントに今何時だろ……? 日差しの向き的にもうお昼かな?
いつもは見習いメイドちゃんが起こしにきてくれるんだけど今日は起こされなかったってことは、疲れ切ってた私に見習いメイドちゃんも気を使ってくれたのかな。
うーぬぬぬ……! 伸びをすると体の節々が……、痛まないわ。さすが妖精ボディ、疲労もすっきり抜けて筋肉痛もなし。完全回復だ、よしよし。
ふぅ、改めて見直すと、このドールハウスって違和感すごいんだよね。たぶん板状のモノの厚さと棒状のモノの太さが原因だと思うんだけど。テーブルの天板とかタンスの側面とか、板状のモノはとにかく分厚い。テーブルやタンスをそのまま妖精サイズに縮小したら厚さ的に強度が足りなかったんだろうなぁ。ま、おいおい慣れるしかないよね。
ドールハウスの天井をすり抜けて外に出る、と言ってもお城の部屋の中だけどね。すると鳥籠メイドさんと目があった。鳥籠メイドさんが部屋の外へ何かを伝え、しばらくして見習いメイドちゃんがやってきて朝の支度をしてくれる。歯磨きとか着替えとか諸々だ。その間に鳥籠メイドさんが朝食、もう昼食か……、を用意してくれた。いつもどおりの対応に、やっとお仕事が終わったんだなぁと実感してくる。
さーて、じゃぁ今日は何をしよっとかな。ボウリングモドキをするには玉を聖女さんにあげちゃったんだっけ。あ、良いこと思いついた。
遅い朝食のあと、私は外に出て雪をいじる。昨日までの遠出のおかげで私は外の寒さなんて問題なくなったからね。今までは寒そうで避けてたけど、これからは寒さを気にせず外出できるってもんよ。
さらに聖女さんのために除雪したり森の中で雪をどかしたりとかなんやかんやで、雪の扱いも上手くなったと思う。
で、この雪でボウリングのピンを作って、その前にでっかいレールを設置。ピンはなんと高さ2メートル! でかーい、説明不要!
それからレールはもちろんシーソーのように真ん中で稼働するようにするよ。んでもって、直径1メートルくらいの玉を用意してレールの上に転がし……、はいここでシーソー! 転がっていった玉が勢いよく跳ね上げられ、雪のピンにぶつかる!
ひゃっほぅ! やっぱ大きいと迫力満点だね。玉の落下地点の雪が盛大に飛び散った。もっかいやろ。
……飽きた。
数回で飽きちゃったよ。あれ、おかしいな。もっと楽しいハズだったんだけど。
たぶん数人で遊べばそれなりに楽しいハズなんだ。でも1人でやっててもなんか寂しくなってくる。上手くいっても派手にミスっても楽しみを共感できる相手がいないなんて虚しさ爆発だよ。あーもー、街にでも行くかー。でもなー、することないしなー。
とりあえず街まで来てみると、すごい光景を見つけた。お酒マンが歩いてる! あのお酒マンがお酒を飲まずに出歩いてるよ! なんか人と話したりモノを買ったりしてる! すごい、働いてるの!? ずっと冒険者ギルドの飲食コーナーでお酒飲んでるだけかと思ってた!
なんだろ、リュック背負ってるし遠出するのかな? でも街の外に行く様子はないけど……、なんかどんどん路地裏に入っていってない? あ、立ち止まって何か取り出した。あれは……、おじゃーさんから受け取ったゴミの塊? って、消えた!?
え、え……? お酒マン消えちゃったよ!?
いや、ちがう。なんか魔力の痕跡みたいなのが残ってるね。魔力の残滓って言うの? それが向こうの方に続いてるなぁ。
あー、これ移動の魔法かな? 転移とかワープみたいな長距離移動だ。へぇ、まだこんなファンタジー要素が残ってたんだね。
じゃぁ、直前に弄ってたあのゴミの塊みたいなのが転移の魔道具ってことかな? どうしてドアップ様に渡したモノをお酒マンが持ってたんだろ? うーん、謎だ。ま、どうでもいっか。どうせ考えてもわからないし。
あれ? あれあれあれ?
転移みたいな長距離移動ができるってのに、どうして私は苦労して3日もかけてあんな長距離を移動させられたの? 転移があるなら手紙を届けるなんて楽勝じゃん!?
いや、逆なのかな? 転移がしたいんだけど転移の魔道具がないから取ってきてって依頼だったのかも? そういうことにしておこう。じゃないと無駄な苦労をしたことになる。無駄じゃなかったと思わないとやってられないよ。
そんなことより、お酒マンが遠くに行っちゃったってことは事務員
しょうがない、私が様子を見にいってあげようじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます