114. ダンジョンマスター

 数日勇者くんを観察した結果、どうやらダンジョンアタックに挑むらしいことが分かった。お城の地下道と下水道だ。


 目的は分からないけど、勇者と言えばRPG、RPGと言えばダンジョン、ダンジョンと言えば地下道なのだ。


 でも私が地下道に行ったときには、ダンジョンっぽいイベントが起きそうなモノは無かったよねぇ。確かにダンジョンっぽい迷路みたいな構造はしていたんだけど、それだけだとやっぱり寂しい。


 ダンジョンと言えばあふれる魔物、いやらしい罠、強いボス、それらを乗り越えてようやく手に入るお宝と相場は決まっているんだよ。魔物も罠もボスもお宝も無いダンジョンなんて許せないって。


 というワケでしょうがなく、本当にしょうがなくなんだけど、私がなってあげようじゃないか。ダンジョンマスターに!


 だけど急がないといけない。何故ならどうやら私は近々遠出するようなのだ。鳥籠メイドさんと見習いメイドちゃんが遠出の準備をしていた。私の服やアクセサリーも荷物に詰めていたし、置いていかれるなんてことはないと思う。だからダンジョンマスターやるなら早くしないとダメなのだ。



 まず魔物、と言いたいところだけど、街に繋がってる下水道に魔物を放つのは危険すぎる。何かで魔物の代用をしたい。と言うワケで私は宝物庫に向かい、ボロボロの私人形を回収する。ボロボロのまま地下道をランダム移動させるのだ。果樹まで行って光る石も回収。相変わらず硬ったいなこれ。


 勇者くんが暗い地下道を歩いていると、何かの視線が……。そして振り返ると這い寄るボロボロの私人形。うん、ホラーだ。見た目が私ってところもグッド。良い意趣返しになるでしょ。下水道は街に繋がってるから近所迷惑になりそうだし、爆音機能はカットしとこ。そんで、せっかく剣持ってるんだ。片腕しかないけど、人が近づけば腕を振り回すようにしてっと。人間から見たら小っちゃい剣だし、別に危なくないよね。


 それから罠か……。えーと、坂には大きな岩の塊が転がってくるようにしとくかな。でも本物の岩だと危ないから、一応発泡スチロールみたいな軽いヤツにしとくか。時間で鉄格子の位置が変わるようにして……。あと、偽宝箱。おもちゃのカエルが跳び出すようにしよう。鳥籠メイドさんを守った名誉カエルちゃん人形だ。


 ボスは……、思いつかない。私人形がボスみたいなもんだし居なくても良いか。


 最後にお宝、何が良いかなー。勇者と言えば台座に剣が刺さってて、抜けた人が勇者!みたいなのが王道な気がするんだけど……。剣は結構作っちゃったし他のが良いか。盾とかどうかな。盾を台座にぶっ刺しとけば良いか。


 ……なんかかっこ良くないね、これ。うーん、盾ってどう飾るんだろ? 分からん。まぁ、このままで良いかな。んで、抜ければ勇者ってことだから、簡単には台座から抜けないようにする。盾が抜ける条件はボスを倒した後、私人形が止まった後にしてっと……。よし、完成。



 その翌日、予想通り私は遠出に出発した。勇者くんのダンジョンアタックを観察できないのは残念だけど、王家のお金で旅行できると思えば問題ない。


 今度はゆっくり観光できると良いなぁ。


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