111. 勇者

 朝起きて、暗幕に覆われている暗い鳥籠から出る。いつも通りの朝にヤツはいた。


 う、うわー!? 私人形だーっ!!


 何故ここに? 倉庫送りになったんじゃなかったの!? いや、よく見たら真新しいかも。修理したんじゃなくて新しく作り直したのかな。


 うーん、胸にはめてた動力源の光る石がない。はめるために凹ました凹みもない。顔にもヒビがいってた気がするけど、修復したような跡もない。やっぱり2号機か。



 とか思っていたら、鳥籠メイドさんと見習いメイドちゃんが来た。なにか微笑ましい感じで見られている。可愛らしい妖精と妖精人形が戯れている光景が癒しなんだろうか? 客観的に見るとなかなかファンシーな光景だもんね。


 それとも、もしかしてペットの犬がヌイグルミを抱えて遊んでいる光景を見る感情なんだろうか? 人形抱えてキャッキャすれば喜んでもらえるんかな? まぁ、しないけど。だってこの人形怖いし。



 その後はいつも通り、鳥籠メイドさんが朝食を用意しつつ、見習いメイドちゃんに朝の支度をされる。いつもと違うのは朝食後だった。


 バーン!


 すっごい笑顔の金髪野郎がドアを豪快に開けて入ってきた! 金髪兄さんと銀髪ちゃんを足して2で割った後に陽気さと細マッチョを足したような高校生くらいの野郎だ。金髪兄さんや銀髪ちゃんに似ているから、たぶん王族だろうね。


 歯がキラリと輝きそうな良い笑顔だよ。王族は歯が命とか言いそう。職業欄に「勇者」とか書いてありそう。さすが勇者、人の部屋に無断で入ってくるし。そのままタンスとか漁りそうな勢いで……、うお、こっち来た!



 ぬおおお、頭をぐりぐりするな! 首が取れる!首が取れるって! ほっぺむにむにするな! ひょっとこになってる!ひょっとこになってるって! なんだコイツ!? 笑顔でめっちゃ色々言ってくるけど、何言ってるか分からないって!


 たまらず私は透過して逃亡した。あーもー、せっかく見習いメイドちゃんに整えてもらった髪もボサボサだよ……。



 あれは要注意人物だ。王族なんだろうけど、王族て後何人いるんだろうね。今まで見たことなかったけど、あんな豪快なのがお城にいたらエンカウントしてないハズがない。つまり昨日あたりにお城に来た、いや、お城に戻ってきた王子様なんだろう。白馬乗ってそう。


 勇者属性ありそうだから、魔王討伐の旅から戻って参りました系なのか。この前までのお祭りは魔王討伐祝いだった? いやいや、それだと主役不在のパーティーになっちゃうか。


 であれば、魔王討伐の旅の途中だけど、妖精なんていう明らかにイベントフラグっぽいのがお城にいると聞いて戻ってきました系? つまり私はイベントフラグだった? 何かそれっぽいアイテムでも与えればまた旅立つかな。


 だけどそうは問屋が卸さない。せめて頭ぐりぐりの意趣返しをしないとイベントアイテムは与えんぞ。まぁ、半分くらい冗談だけど。割と平和っぽいし、魔王が支配してきてヤベーみたいな雰囲気ないもんね。


 それはそれとして、何かないかなぁ? 意趣返し。


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