070. 道中
4台の馬車がガタガタと田園の中の街道を進んで行く。前にはすごく高い山がそびえ立っていて、進んでも進んでも山の見た目の大きさが変わらない。なので全く進んでいる気がしないんだけど、もう結構な距離を進んできたハズだ。
田園もなー、来るとき見たしなー。ただまぁ、西の森から王都に向かったときよりも作物は育っていた。風で作物がワサワサしている中を馬車が進む情景は、ザ・のどかって感じだ。つまり何が言いたいかと言うと、代り映えがしなく暇だってことよ。
この世界に来たときはテンションを爆上げしてくれた白虹も、毎日見てたことでただの日常に成り下がってしまったよね。
暇つぶしのオモチャをカバンから取り出そうとすると、鳥籠メイドさんにがっちり防がれてしまった。ぐぬぬ。そのカバンに暇つぶしグッズが入っているんだけど、ちょっと開けてくれませんかね? だめ? そっかー。
私は馬車の天井をすり抜けて外に出る。冒険者のうち2人は女性なのだ。ちょっとそっちの様子を見に行こうと思って気軽に馬車の外に出たんだけど、
まず私が乗っていた馬車が止まり、けたたましく鐘を鳴らす。そして残り3台の馬車が止まって、慌てて人が下りて来た。なんだなんだと思っていると、みんなが私を見つけて安堵した表情になる。マジか、あの鐘って私の脱走対策だったりするのか。いやいや逃げないよ。どんだけ私を南に連れて行きたいのさ……。
途中の休憩やその日の夜の野宿で、冒険者たちと交流を持った。女性2人はかなり私に好意的で、頭をなでたり干し肉をくれたりとよくかまってくれる。私が何やっても喜ぶようで、調子にのって決めポーズとかしてしまったよ。みんなの食事の用意とかは、鳥籠メイドさんが率先してやってくれていた。
2日目、のどかな風景を死んだ目で見つめ続けて状況が変わったのは夕方だった。街だ! 昨日は野宿だったけど、今日は街に泊まるのかなぁ。そんなのんきなことを考えていたら、私は鳥籠メイドさんにドレスに着替えさせられていた。どゆこと?
街に入ると人だかりができていた。すご、お城の街より人多くない? なんか拝んでる人いるし、熱狂的な感じがする。私が馬車の窓から顔を覗かせると歓声が上がった。もしかしてこの人だかりって私を見に来てるの?
はっはーん。まぁ、妖精って珍しいみたいだからね。お城から妖精が来るぞ!マジで!? 見に行こうぜ!ってなるのもわかるよ。いやぁ、人気者はツライね。私は群衆に向けて手を振ってあげた。歓声が大きくなる。これは……、癖になりそうだ。もっと、もっと私を崇めよ!
そうこうしていると馬車が止まる。鳥籠メイドさんが鳥籠を指さすので、私は大人しく鳥籠に入った。女性冒険者2人と鳥籠メイドさんに連れられて建物に入ると、怪我人や病人でいっぱいだった。ここは病院? なるほど、病院に慰問に来たってことね。治せば良いんでしょ? ほいっとな。
周りから歓声があがった。笑いだす人もいれば泣き出す人もいる。走り出す人もいれば拝みに来る人もいるね。まぁ、良かった良かった。
でもなー、あんまりこういうのは良くないと思うんだよね。なんでも治せる妖精に依存しちゃうと、現地の医療技術発展とかを阻害してしまうと思うよ? その辺どう思ってるんだろうね? まぁ、治せと言われれば治しちゃうんだけど。苦しんでる怪我人を前にすれば、さすがにダメと言えるほど非情にはなれないし。
その日はゴツイお屋敷に泊まることになった。たぶん貴族だと思われるおじさんが、私にヘコヘコ挨拶してくる。冒険者たちはいないから、街の宿にでも行ったのかな?
お城ほどではないけど、ここもなかなかオシャレな洋館だ。さっそく探検にでかけようとしたところ、鳥籠メイドさんがふしぎなおどりを踊った。行って欲しくない? どうしても? そっかー。
でもまぁ、こんな立派な洋館に泊まれるのだ。それだけでも旅行気分は味わえるってもんさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます