068. 遠足準備
鳥籠メイドさんと見習いメイドちゃんが遠出の準備をしている。きっと筋肉オバケや小太りさんが地図で指していた南の方に行く準備だね。
たぶん南の方で何か冒険者が出張らないとダメな事件があったんだろう。だからギルドで会議を開いていた。そして、その場で何かに頷いてしまった私は、おそらく南への同行に了承したことになっているんじゃないかな。
つまりあれだ、遠足です。いやー、そろそろこの街以外も観光してみたいと思っていたんだよね。鳥籠メイドさんが服を詰めているカバンに、私は街でもらってきた妖精印のクッキー箱を隠す。暇つぶしのオモチャもどんどん服の下に隠していく。
前世よりも文化レベルが低いからそんなに凝ったオモチャは存在しないんだけど、この木彫りのカエルなんてなかなか良い。お尻を押すと足が伸びてジャンプするのだ。ガキンチョたちも誰が1番遠くまで飛ばせるか競っていた。
鳥籠メイドさんは私の食器類やお世話セットだけじゃなく、ドレスも数着カバンに入れていた。いやー、貴族の前に行くわけでもないのに、それ着るかなぁ?
それにしても南の山の近くまで行くのかぁ。どうやって行くか知らないけど、たぶん2~3日じゃ帰ってこれないよね。そうするとドアップ様が心配だ。いや、正確に言えばドアップ様の部下の人たちか。
ドアップ様は基本的に私の前だとすっごいニコニコだ。だけど私は1度、遠くから見てしまったのだ。笑ってないドアップ様は結構怖い。いつも笑ってるから気にしてなかったけどドアップ様は結構な吊り目で、黙っていると凄い怖いオーラを感じるのだ。たぶんあれが、王族オーラってやつだと思う。
ドアップ様は結構な頻度で私に会いに来るけど、私がいない間は当然会いに来れない。するとその間、ドアップ様は真顔で王族オーラを振りまくことになっちゃう。そうすると部下の人たちが委縮しちゃうよね。
そこで私は良い案を思いついた。私人形だ。私がいない間は私人形にドアップ様を癒してもらおう。私がいないときに誰かが部屋に入ると、私人形が動き出すように改造した。
鳥籠メイドさんも部屋から出て行った深夜、私人形の動作テストをしてみる。私人形は部屋を縦横無尽に飛び回り、インパクトは絶大だ! でも何か寂しい。音か、爆発音を鳴らそう。あと光だ。爆発と言えば光、間違いない。
でも誰もいないとはいえ、爆発音や光を今動作テストすると怒られちゃうよね。ぶっつけ本番になるけど、たぶん大丈夫だろう。いける気がする。これで私がいない間もドアップ様は寂しくないハズだ。派手な音を鳴らしながらピカピカに光って飛び回る私人形を見れば、きっと私を思い出してくれるよね。
そうしてニコニコになれば、部下の人たちも委縮しなくて済む。なんと素晴らしい! 我ながら自分の才能が恐ろしいよ。
そして翌日になった。てっきり今日出発するんだと思っていたけど、出発する気配はないようだ。私が窓に近づいても鳥籠メイドさんは不思議なおどりをおどらない。つまり今日は予定がないのだ。
いつ出発する? 私も同行するんだけど?
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