059. 気付いた

 朝食を食べ終えた私は、しばらく部屋で待機する。


 最近学んだのだ。その日、私に予定が入っているかどうかを判断するために、朝食後しばらく様子をみるということを。何もなければ街へ繰り出すし、何かあればそのままイベント終了まで大人しくしていれば良い。


 そうしていると、今日はおじリーダー率いる人たちがやってきた。後ろの人たちは前に来ていたおじーズじゃないね。中年男性と女性2人だ。おじリーダーがトップなのは変わらないみたいだけど、新しく来た中年男性もなかなかお偉いさんな雰囲気。おじサブリーダーなのか?


 そして例のごとくドアップ様もやってきた。暇なのかな? ドアップ様は指先で私をなでて、次に壁際の私人形をなでて、鳥籠メイドさんと語らい、満足そうにしている。


 おじサブリーダー、おじサブが重厚な四角い箱のようなカバンのようなモノを机の上に置き、ずずいと私の方に差し出してきた。なんかデジャヴュを感じるよ、まさかまた人形じゃないよね? おじサブがカバン箱を開ける……。


 うお、金貨? うひょー!? 私が喜んでいると、おじサブはカバン箱を閉じた。え、なんで閉じるの? まさか見せびらかしに来ただけ? 「オレ、こんなけカネ持ってんどー? どうよ?」って? なんだそれ!


 見ていると、おじサブは金貨の入ったカバン箱を鳥籠メイドさんに渡した。あんだけ金貨満載だった箱なのに、鳥籠メイドさんは表情を変えずに当たり前のように受け取っている。さすがお城、あれくらいの金貨は当たり前なのか……。


 と言うか、なんで急にお金を渡してきたんだ? そう思っていると、今度は女性2人が妖精印の紙箱を取り出してきた。むむ、これ知ってるよ。最近街のお土産屋さんでよく見るクッキー入りの箱だ! たまにクッキーの粉をもらいに行くから、ある意味私も常連なのだ。一切お金は払ってない迷惑客だけど……。



 金貨満載カバン箱をどこかに置いてきた鳥籠メイドさんが、そのまま私用ティーセットと人間用ティーセットを持ってきた。そうして、私とドアップ様の前にお茶が出される。これはつまり、クッキーも食べて良いということだね? よし、いただきます!


 クッキーを食べていると、こんどは妖精をあしらったオルゴールが出てきた。前回のような木彫りの箱じゃなくて、今回のは精巧な立体妖精がくっついている。金縁に透明な色板で羽が再現されたりと、明らかにお高そうだ。ちょっと引っ掛けて机から落としたりしたら、きっと怒られるだろう。気を付けねば……。


 オルゴールの優雅な音を聞きながらのお茶会、これがセレブか。さすがお城、あなどれない。横では相変わらず、おじリーダーが何やらしゃべり続けているのだけど……。


 あー、これはもしかして? この妖精だらけのグッズ、そしてさっきの大金……。私をモチーフにして儲けてるから、私の飼い主にロイヤリティが支払われたということかな? ロイヤルな王家にロイヤリティ、お金はお金があるところに集まるのだ。私は一文無しだというのに、世知辛い。そのお金私にもくれないかな?


 別に良いんだけど、私に無断で私をモチーフにするのも……、いや? 本当に私に無断だったか? 私はこのおじリーダーには、結構な頻度で頷いていた記憶がある。あれはもしかして、色々な契約を了承させられていたのでは……?


 だまされたー! はいだまされたー!


 やばいよやばいよ! 私は何に了承してきた? 頷いたのは1度や2度じゃなかったハズ。私はおじリーダーの周りを飛び回り、怒りをあらわにした! プンプン!


 おじリーダーとおじサブは、非常に残念そうな悲しそうな顔をする。後ろのクッキー姉さんズもオロオロだ。むぅ、怒りをおさえねば……。って言うか、よく考えれば何かさせられてるワケでも損してるワケでもない。妖精グッズが売り出されているだけだ。別にいっか。



 続いておじリーダーは、おそるおそる額縁を取り出してきた。私に見せるその絵は……、ぶーっ! 私の似顔絵じゃん! いやいや、これは恥ずかしい!


 今までの妖精グッズは確かに妖精があしらわれていたけど、それは妖精という種族であって私ではなかった。でもこれはおもいっきり私だよ! 恥ずかしい! 私は手でバッテンマークを作った。ダメです、もうだまされないよ。そんな顔してもダメー!


 危なかった。今まで通り何も考えずに頷いていれば、あの絵が世に出回っていた可能性がある。ふぅ……。あれ? 嫌な予感がするぞ……。私人形が私の前に出されたときも、私は頷かなかったか……?



 ぎゃー! 私の等身大人形が世に出回るぅ!!


 くそぅ、おじリーダーめ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る