第12話 兄に抱きついちゃう系妹
「お兄ちゃん、提案があります!」
「おお、藪から棒にどうした」
俺が部屋で一人でくつろいでいると、突然妹の夏美が俺の部屋に入ってきた。
部屋着姿の夏美はベッドで横になっている俺の所まで来ると、演技らしい口調で言葉を続けた。
「私がお兄ちゃんと普通に会話ができるようになるように協力してって、前にお願いしたじゃん?」
「お、おう。そうだったな」
俺は以前、夏美に普通の兄妹らしい会話ができるように協力して欲しいと言われた。
ここまでの話の流れを聞いている限り、俺と夏美が普通に会話できているように思う人もいるだろう。というか、実際に会話自体は普通にできているのだ。
問題は妹のお股だけなのだから。
この妹、こんなに可愛らしい容姿をしていながら俺と話すときはお股を濡らしているらしい。いや、拗らせオタクの妄想ではなくて、本当なのだ。
え、いやいや、本当に。
「そ、それでね! 昔ってお兄ちゃんに抱きついてたりしてたでしょ? そ、それを今やってみたら、どうなっちゃうーーどうなるのかなって」
「言いたいことは分かったから、落ち着け」
夏美は息を荒くしながら俺に熱のある視線を向けてきた。お股の位置を直した所から察するに、すでに結構濡れているのだろう。
妹のお股から察する兄って、何なんだろうな。
「この前、俺が夏美の靴下を脱がした時で結構限界だっただろ? そんなことして大丈夫なのか?」
「あ、お兄ちゃんが私に愛撫してきたときのこと?」
「してないからな! ただ靴下脱がしただけだろ?!」
「嘘だよ、お兄ちゃん靴下脱がした後の脚とか、足の裏とか責めてきたじゃん」
「責めてはないと思うな、お兄ちゃんは」
「あんなにいやらしい触り方されたら、私だって……あ、思い出したらお股がぐちゅぐちゅになってきちゃった」
夏美はそう言うと、お股の位置を調整するように部屋着を引っ張って直していた。いや、位置が変わっても、濡れていることには変わりないんだけどな
「はぁ。それで、抱きついて何を確認するつもりなんだ?」
「お兄ちゃんに抱きついたら、多分凄いことになると思うの。でも、その刺激に慣れていけば、それ以下のことなら耐えられるんじゃないかなって思って」
「……なるほど、一理あるかもしれないな」
「えへへっ、さ、さすがに、前みたいにペッティングされたらダメかもしれないけど」
「してないから、前もこれからもしないから」
夏美は腰をくねくねとさせて、こちらに期待するような視線を向けてきた。
……し、しないからな。
「別にいいでしょ? ただ抱きつくだけだし」
「いや、まぁ、いいけどさぁ」
中学二年の妹に抱きつかれる。ギリギリ許されるラインかもしれないが、それに対して俺の自制心がもつかは別の問題である。
妹の胸部がまな板を張り付けたようにぺたんこだったら、まだ耐えられただろう。
しかし、この妹は発展途上ながら体の凹凸を感じる体つきをしているのだ。当然、程々の大きさをした双丘だって持っている。
さすがに、お股がぐちゅぐちゅの状態で、それを押し付けられたら自制心が保てる自信がない。
きっと、俺が兄であるかどうかなど関係ないのだ。思春期の男子には刺激が強すぎる。
「もしかして、お兄ちゃんは妹に抱きつかれるとえっちなこと想像しちゃうの?」
「すすす、するわけないだろうが、馬鹿言ってんじゃないよ」
「え、凄い動揺してる。……嬉しい」
「いや、その反応は違うと思うぞ」
夏美は俺の反応に驚いていたが、抱いた疑惑が確信に変わるとうっとりとした瞳をこちらに向けてきた。
両手を頬に付けるようにして、照れるように微かに顔を赤くしている。
兄にえっちな目で見られて喜んじゃダメだろ、喜んじゃ。
「なんとも思ってないなら、いいよね?」
「いいんだけど……う、後ろからにしてくれ!」
「後ろから? あ、お兄ちゃんはそっちが好きなんだ」
「え、まって、どっち?」
夏美は勝手に納得するように頷くと、俺をベットから立ち上がって後ろを向くように急かした。
すると、俺が背中を見せるなり、夏美は俺の背中に体を押しつけてきた。
「お兄ちゃん!」
いや、背中越しでも結局双丘を押し付けてくるんかい。
背中に伝わるのは布越しに伝わる温かい人肌と、柔らかい感触と程よい反発のある感触。発展途上の体特有のハリのある体つき。それをこれでもかというくらい押し付けられーー。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんっ。すんすんっ……っあ」
「やめっ、お兄ちゃんを連呼するな、匂いを嗅ぐな、変な声出すな!」
まずいまずいまずい。
夏美の荒い息遣いとか、熱を帯びた声色とか、妖艶な漏れ出るような声とかをダイレクトに受けてしまい、鼓動が狂ったみたいに速くなってる。
ていうか、この鼓動の音って俺のものなのか?
自分の鼓動なのかも分からなくなるくらい。鼓動の音が混じり合ってしまうほどに押しつけられた夏美の体。
柔らかさだけではなく、じんわりと伝わってくる体温が俺の自制心を緩めようとしてくる。
「凄いドキドキしてる」
「な、夏美の鼓動だろ?!」
「え、そうだけど。……なんかすごい慌ててるね」
夏美は当たり前のことを言うかのような口調をしていた。初めから俺の鼓動のことを言っていなかったような声色だった。
そして、そんな俺の反応を見れば俺の慌てている理由も分かったのだろう。俺を抱きしめる夏美の腕の力が少しだけ強くなった。
「もしかして、お兄ちゃんもなのかな?」
「ちが、ちがうーー」
「嬉しいなぁ」
「~~っ」
しみじみと心から漏れ出たような声。体が密着しているせいもあってか、その言葉は俺の胸の奥にまで染み込もうとしていた。
体が熱くなっていくのが分かる。夏美の体温とは別の俺の心の内から湧き出るような感情が、俺の体温を上げているのだ。そう気づくまで、少し時間がかかってしまった。
「お、終わり! おしまいだ! 夏美、おしまいだって……くそ、力強いな! ちょっ」
俺が変な空気になる前に夏美の腕を振りほどこうとしたのだが、夏美は中々その腕を放そうとしなかった。
少し強引に腕を振りほどこうとした際、夏美の爪の先が軽く俺の胸の先を弾いたように当たった。
「あ、ごめん。爪が少しお兄ちゃんの乳首にーーお兄ちゃん?」
偶然なのだ。本当に偶然だ。
夏美の爪の先が胸部をかすめた。かすめたと言っても、服を着ているし何も問題はない。全然痛くもない。
だから、少しだけ驚いて声を漏らしてしまっただけなのだ。
しかし、夏美は俺の表情をまじまじと確認すると、からかうような笑みを浮かべた。悪だくみをするように緩めた口元で、夏美は言葉を続けた。
「……もっと、してあげようか?」
「しないでいいから、絶対にするなよ! あれ、夏美?」
俺が必死に冷静を装うとしていると、突然夏美がぺたんとその場に座り込んでしまった。心配になって様子を見てみると、熱があるんじゃないかというくらいに夏美の顔が赤かった。
その熱をもろにくらったのか、瞳は涙を浮かべたように潤んでいた。短距離走を走り終えた後のように肩で息をする息遣いもどこか熱っぽい。
まるで、一人でナニかをした後のような疲労感と達成感。そんなことが読み取れるような顔をしていた。
「はぁ、はぁ。ちょっとだけ、休憩っ」
そんな状態で見せる夏美の笑顔は、普段よりも少しだけ色っぽく見えた。
それもそのはずだ。だって、座り込んだ夏美のお股とフローリングが接する部分には、少しだけ水溜まりのような物ができていたのだから。
おそらく、俺に抱きついているときには足の方まで垂れてきていたのだろう。微かに粘度があるような、液体が通った跡が夏美の脚には残っていた。
当然、そんな妹の姿を見せられても俺は何も感じなかった。
だって、俺はお兄ちゃんだからな。
妹が一人でナニをした後のような顔とか、その事後みたいに濡れた床を見せられても何も感じないのだ。
……本当に、何も感じないのだ。
……本当に。
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