第3話 私は人形じゃない

そよ風が効く時はすでに夕方に迫っている。下に入れば入るほど赤く染まる夕日から心地よい風がシェリアの顔に触れてた。

「時ってこんなに遅かったっけ?」

沈んでゆく太陽をシェリアは机に伏せながら眺めてた。招待状が来てからで色々とあったはずなのに太陽は裏切るように沈んでゆくのだ。今までは時は早いものだと持っていたはずなのに嘘のように時が遅く感じたのだ。すると、風が少し強くなってきた。

(夕日はいいよな〜。体が溶けそうだ…)

シェリアは瞼が重くなるように閉じていくとノックする音が聞こえた。シェリアは思わず解放するような目で一気に起こされた。

「は、入っていいよー」

「失礼します」

少し髪を手で整い、ケイを中に入れた。というかこの夕方のノックするのは大体ケイしかいないだからな。

「お夕飯の準備が出来上がりました」

「え?あ…」

気づかなかったのだろうシェリアは時計を見上げた。見ればあっという間に六時、我が家の夕飯の時間だ。

「ええ、今行くわ」

シェリアは立ち上がり、ケイと共にダイニングルームに向かった。


「失礼します」

ケイとシェリアの前にダイニングルームの扉が開く。ダイニングルームに来れば先程のだろうテーブルに今日のアミューズが置いていた。さっきまでの軽い空気がシェリアが入れば一気に冷たい空気が通りかかった。兄のラシェル・オリエントがシェリアに冷たい視線を送った。数日前までも父と母と同じように暖かな視線を送ってくれたはずなのに。でも、今日だけは違った。シェンリルはシェリアが来たにも関わらず全く目を開けていないしリーアもシェリアと目線が合えば気まづそうにそっぽを向く。シェリアは気にせず席に座った。すると、シェンリルが目を開けては

「シェリア」

と前と同じに暖かい声をした。シェリアも、おろかラシェルもリーアも驚いた。

「なにか…」

シェンリルはまるで何かを覚悟をしたかのように座ったままこう言った。

「君の行きたい学園の件だが…」

「!」

シェリアとリーアはヴィング学園の事だと即座に気づいたのだ。その件にはラシェルは分かってないが。シェンリルは言いにくそうに言ったのだ。

「行ってもいいぞ…その学園行ってもいいぞ」

「え…」

シェリアは呆気に取られた。あんなに行かせない気満々な父が簡単に許可が取られることを。それはシェリアだけではないリーアも同じ事を考えていたのだ。ただ、この状況を理解出来ないのは…

「待ってくれ」

「どうした。ラシェル」

そう、ヴィング学園の事を聞いていないラシェルである。

「学園とはどういうことがラファート学園は15歳で入学しなければいけない。それなのにシェリアは…」

「…ヴィング学園」

「!」

「これでもう分かるだろう」

ラシェルは立ち上がって怒りの目でシェリアを見た。シェリアは少し驚きかけたと見れば、いきなりすぐに失望する目に変わった。……え?この学園ってそんなんに有名なの?一体何があったんだその学園…シェリアは目を開きながら。もう余計に行きたくない空気になってきたのだった。

「嘘…そんな…だがシェリアは13だあの学園でも…通えないはずだ」

「そのシェリアでも行ける学園だが?何が悪いんだ」

ラシェルは絶句した。まるで愛する妹が連れていかれる、そんな気分に陥ってる。この空気まずいな…シェリアは唾を飲み込んだ。下を向いての猫背の姿勢、まるで前世の親の説教を聞かされているみたいだ。ああ、なんかここで正座したくなってきた。シェリアが前世の恋しさ中に

「な、なぁシェリア…」

ラシェルの声でシェリアはすぐにラシェルの方、真正面に向いた。

「本当にこの学園に行きたいか?」

と焦るように言ったのだ。これにはもちろんシェリアは

「はい。」

と真っ直ぐな回答だ。行く気満々の声で

「あ…でも…」

「もういい」

躊躇なく躊躇うラシェルをシェンリルが止めた。そして、シェリアは

「お兄様。私はとんでもない過ちをしてしまったのです。だからあの学園なら私が強くなってもっと罪を償いたいのです」

シェリアの第一はあの学園に行きたい事。そして、第二は大体言ってることはほぼ一緒だ。なんだかんだであの洗礼式を思い出せば思い出すほど全力で腹が立って来たのだ。タイムマシーンがあれば戻ってアレンとリリナに向かって殴る気でいた。いや、殴るのはあいつらの何らかの事で陥ったことにしよう。それとも学園内でこっそり?それもそれでいいと思う。

(うへへ…)

シェリアは頭を抱えているラシェルに励ますように

「私、絶対に償います。お兄様にも負けないくらいに」

と笑った。悪巧みがないような笑顔だ。対するラシェルは心配の顔だ。数日前の冷たい態度が嘘のようだ。だとしてもここまで行くことを拒んでたあの父の許可が降りたのだ。それにとっては好機だ。今すぐ……は行けれないが明日には出発しよう。すると、シェンリルが前を向いて

「さぁ、夕食にしよう。料理が冷めてしまうからな」

とさっきまで俯いてたラシェルがはっと気づきそっと席に座った。そして、扉が開かれた。メイド達が料理を運んできてくれた。オードブル、スープ…とよく見ればフランス料理の順番だ。今までは当たり前に見えてただったもののいざ、前世の記憶を持ちながら見るとこんなにも豪華な料理を食べていたのだとシェリアは関心を持った。そうなると私は本当に貴族なんだとシェリアは改めて思った。そして、今日のメインがシェリアの目の前に置かれた。シェリアが苦手だった魚料理だ。さらに、一番嫌いだった鱸のポアレだ。しかもホワイトソースがかかっている。シェリアはナイフをポアレに刺しこむ。だが前世ではよく魚料理を食べたから久しぶりなものだ。とシェリアは今世で初めて魚料理を手をつけた。しかし、シェンリル達は何にも驚きはしなかった。今日のシェリアの予想外の出来事で疲れてるのだろう。シェリアは期待が外れたのだろう拗ねた目をした。そして、ソースがかかっている鱸を一口、口の中に入れた。入れた途端にソースが濃厚さが災いなのか鱸の魅力を引き立っている。こんなに美味しいのをなぜ食べなかったんだろう、シェリアは悔しいながらも食べた。

(これがしばらく食えないのは少し寂しいものだな)

と思いながらシェリアは鱸を食べた。そして、シェリアの口の中には魚の微かな甘みが感じた。


夜、この時間は良い子供が寝る時間だ。

(お嬢様は今頃はしゃいでいて寝ていないじゃないかな)

とケイが廊下の蝋燭を消しながら笑っていた。そして、ケイの予想通りシェリアの部屋から明かりが灯っていた。少し微笑みながらケイはシェリアの部屋のドアをノックした。本来ならシェリアが『寝てまーす!』とはしゃいで大声を出しているに、今日のシェリアは

「入っていいよ」

と気分が低めな声で言った。ケイがまさかと思いシェリアの部屋に入った。ケイの予想 いや、勘が当たった。シェリアは小さなテーブルの傍にある椅子に座った。シェリアが振り返った。その目は寂しさのある目をした。そして、目尻から涙が流れてた。今までずっといるはずなのに…ケイは初めて出会ったような顔をする。そんなはずはないとケイは首を横に振る。

「どうかした?」

シェリアは不思議がり立ち上がってケイのところに近づく。ケイははっと気づいた。

「お嬢様。また、寝ていないんですね」

シェリアは

「あ…」

と小さな声を出し、気まづそうにケイとの目線を逸らした。そして、ゆっくり頷いた。

「ちょっとね」

「…とにかくちゃんと寝てくださいね」

ケイはため息をつき、後ろを振り返り部屋から去ろうとしたその時

「待って」

シェリアがケイの袖を掴み

「ちょっと、話を聞いてくれる?」

ケイが言う間もなくシェリアはケイを連れてベットに向かった。ベットに向かえばシェリアは腰にかけケイもつれられるようにシェリアの隣に腰をかけた。ケイは察したのかシェリアに優しく声をかけた。

「何かありましたか?」

シェリアは気まづそうにこう言った。

「本当は……怖い…怖いんだ」

シェリアは恐ろしさから逃れたい声で言った。顔は俯いてケイとの目線を逸らしてた。ケイはそっとシェリアの撫でた。恐ろしさを和らぐためだろう。

「お父様達の顔を見たでしょ?」

ケイはゆっくりと頷く。俯いたままシェリアは続けて言った。

「私、学園には絶対に行きたいのよ。でも、実際はその学園がどんな所かもわかんないし、なんの目的でもわかんない。それに夕食の後にお母様も言われたんだ。『行ってはいけない』って…その時、お母様の顔が悲しい顔だったの」

ケイがピクリとし撫でるのをやめた。シェリアは続けた。

「だから、今、行かないと思っててさ…でも、行きたいのさ…」

「それで私に相談に…でも直接にいってもよろしいのですよ?他の方でも…」

「ケイ…いない。ケイしか…いないから…」

シェリアはケイの目線に合わせて言った。その目は迷いがありまくった目だ。その目がケイに向けた。ケイは何故か下を向いた。そして、いきなりシェリアを抱きしめた。

「え、ちょ…」

ケイは知っていたのだ。リーア達は自分達が悲しい顔をすればシェリアは分かってくれると。シェリアは素直な子なんだ。我儘でも何でもないただの素直な女の子。それを一番理解してるのはケイだ。ケイが親より一番近くで見ているから。

「あ、あの…ケイ?」

「お嬢様、本当はあのヴィング学園に行きたいのですよね?」

思いもしなかったのかケイの言葉に目を開いたシェリアは頷いた。ケイは微笑み

「だったら行けばいいのです」

「え!?」

また思いもしない言葉にシェリアは思わず声を上げてしまった。ケイはすぐにしーっとした。

「そうしないといつの間にかお嬢様の我儘が通れなくなりますよ」

シェリアももう気づかれているのだろう。気まづさにまた俯いてしまった。

「確かに私は、行きたいでも…」

「だってこの前もそうでしたよ。洗礼式も行きたくないと言われましたのに奥様の通りに行かれましたよね。まるで自分を我慢しているようでしたよ。ただ親の言いなりだけで済してしまう子供ですよ」

「うぐ…それは…」

「例えば…」

シェリアは図星に当たったのかこれ以上言わなかった。ケイは続けて言った。

「お嬢様がうさぎのぬいぐるみが欲しいと言っても旦那様がくまのぬいぐるみを作ってしまったら『何でもない』だけで済ませてしまうし、また、お嬢様が青色のマフラーの欲しいと言っても奥様が桃色のマフラーを編んでしまってもまた『何でもない』で済ましてるんですよ。」

「お、お兄様は私の為にあの花柄のティーカップを選んでくれたし…」

「お嬢様、その時はうさぎと猫の柄のティーカップが欲しかったのでは?」

「うぐ…」

シェリアはまた俯いてしまいケイはため息をついた。ケイは知っているのだ。シェンリル達が悲しめばシェリアは『ああ、これはやってはいけないんだな』と思い込めるとの事を。シェリアは我儘を我慢出来る子だ。というかそういう年頃なのだ。いや、ずっと昔からなのだ。この子が1人で生きていけるかと思うと怖く感じる。ケイはため息まじりに思わず本音が出てしまった。

「1人で出来ない子。まるで魂のない人形ね」

「…!私は人形じゃない!」

シェリアはケイを押し倒した。……と思ったが力が弱かったのかケイは押し倒されはしなかった。むしろ倒されかかったと言う。

「お嬢様…」

「私は人形じゃないもん」

「……」

「でも確かにそうかもしれない」

「……」

「ケイから見て、さ…私って何?」

「そうですね…」

ケイはシェリアを優しく抱きしめた。

「私は人形じゃないよね?」

「ええ、お嬢様は人形じゃないです」

「本当に?」

「はい、貴方は人形じゃない」

「嘘じゃないよね?」

「本当です。シェリアは人形じゃない」

しばらくして本気の覚悟を決めたのかシェリアは優しく抱きしめた両手を優しく離した。俯いた目線を上げて。元の明るい声で言った。夜なのでもちろん優しく言った。

「ありがとう、ケイ」

「こんな事はもう慣れっこですから」

「私、ヴィング学園に行くよ。怖いこともあるかもしれないけど」

「そうですか。さ、寝ましょう。明日は早いですよ」

と寂しさを振り払うようにケイは敷布団を開く。シェリアはそれに入ったらケイは敷布団を敷いた。と寝る際にシェリアはある事に気づいた。

「ところでさケイ。今、私の事を『シェリア』って…」

「あ!も、申し訳…」

「ううん。いいのいいの」

ケイが頭を下げようとした寸前にシェリアは慰めた。むしろシェリアは照れくさそうに頭をかいた。

「すごく嬉しいんだ…ケイがいつも『お嬢様』って呼ぶよりはすごく…」

シェリアは照れに隠そうと俯いた。ケイは気づき

「では私も『シェリア』とお呼びしても?」

シェリアは頷いた。ケイはすこし喜んだような声で。

「ありがとうございます。シェ…シェリア様」

と応えた。そう呼ぶとなんだかんだで恥ずいなとシェリアは照れくさそうに笑った。

「じゃあ、おやすみなさい。ケイ」

「はい、おやすみなさい。シェリア様」

とケイも微笑みサイドテーブルにあるキャンドルライトを消した。


翌日。シェリアの宣言通りのヴィング学園に向かう日。するとオリエント邸の扉が開かれるとそこに居たのはシェリアだ。シェリアは荷物をまとめたトランクを持った。そして、自ら作った勾玉のペンダントを付けて馬車に移動した。が、その時

「シェリア!」

玄関の前で声がしたのだ。声の主はやはりリーアだった。まさか絶対にシェリアが行かないと考えたのだろう。リーアに近づいて

「本当に行かれるの?」

と寂しげな顔と声で言った。突然、娘が分からない学園に行くのは寂しいに決まってる。その気持ちは同情しとくようにシェリアは頷く。そして、リーアの後ろからシェンリルとラシェルが現れた。シェリアがトランクに持ってる事に気づいたのかシェンリルは悟ったのだ。改めて思ったのだろう。もう、いつものシェリアではないことに。

「行ってこい」

と飽きられたようシェリアに言った。とからのため息。シェリアは少し驚いた。が、嬉しさのあまりに

「おうよ!」

と前世のようにガッツポーズを見せた。そして走り出して突き出しように勢いよく馬車に乗った。この馬車は広いためトランクが入れるほどはあるのだ。シェリアは目の前にトランクを置いた。

「お父様、お母様、お兄様、行ってきます!」

と元気よく言って手を振り、ケイと共にヴィング学園に向かったのだ。馬車が公爵邸を遠くにおかれるにつれてシェリアは寂しさを感じた。すると、ケイが手を握ってくれたのだ。まるで母リーアのように優しく握ってくれた。

「大丈夫です。ケイもいますから」

ケイは自分の名前で言ってくれたおかげで寂しさは少しだがとけた気がした。すると勢いが一気にくるように馬車が止まったのだ。その影響でシェリアは席を外されることだった。ケイが抱きしめたら勢いのあまりに尻もちをしてしまうとこでもあったからだ。ケイが馬車の外を降りた。心配に見つめるシェリアを置いて御者に話しかけた。

「何かありましたか?」

「いきなりこれが…」

御者は人差し指で《あれ》を向けた。

「何…これ」

「どうしたの…?」

シェリアもケイを着いてくるように馬車を降りた。ケイはすぐにシェリアが降りたことに気づいた。すると、シェリアは目を大きく開いた。

「申し訳ありません」

「え…」

「前までは《壁》などはなかったのですが…」

それは前世の記憶を持つシェリアにとってはお世話になっている乗り物。ここの世界の人はケイ達のようにきっと壁だと思われるのも無理もない。これはバスという縦長の乗り物だ。前世では修学旅行、社会科見学はもちろんOL時代によく乗ったものだ。しかもこのバスは旅行バス系統のバスの大型バス。

「これはワクワクしますわ…」

「今なんと?」

「いや、何でもないよ」

こちらも止まったのは多分私達のせいだろう。

(……ん?待てよバスがあるってことは…)

するとバスの中から人が現れた。整って制服…さては運転手だな。とシェリアは確信を持った顔だった。そして、見事に当たった。

「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」

と運転手が御者とケイの方に近づいた。

「大丈夫でしたか?」

と心配そうに見てきた。おそらくぶつかったのかと心配な目だ。御者は唆すように

「いえ、大丈夫ですよ」

と。運転手は安堵するのもつかの間、今度はシェリアを見ては中腰になりあることを聞いた。

「お嬢さん。お聞きしても宜しいのでしょうか?」

「あ、はい…」

「貴方はシェリア・オリエントさんでしょうか?」

「え、はい」

運転手は少し驚くが中腰になるのをやめた。シェリアとケイもまさか…とは思ったがそのまさかだった。

「初めまして。私はヴィング学園のバスの運転手を勤めております。タナカと申します」と礼儀の良い一礼をした。そして、胸ポケットからの名刺を差し出した。

「じゃあ、あれは?」

ケイがあの壁…というかバスを指した。

「あれはバスという本校の専用バスです」

(やっぱり…)

シェリアはもう一度バスを見た。亜麻色のバス。よく見れば《ヴィング学園》と黒文字で丁寧に書かれてあればその隣にはこの学園らしき紋章がある。ハゲワシらしき鳥の中央に太陽。その太陽の中に大きい1つの星が入っておりその周りには小さな星達が円のように囲う紋章だ。シェリアから見ればカッコイイ紋章だろう思わず呆気にとられてる。

「シェリアさん」

「は、はい!」

シェリアは呆気にとられたせいか今日一番の大声をだした。シェリアはハッと気づき顔を赤らめた。しかしタナカさんは微笑んだ。シェリアが実の娘を見るように微笑んだ。きっとその娘はシェリアと同じ顔をしたのだろう。

「シェリアは校長からあなたをバスに乗せてほしいと言われました。本来なら私の方から迎えに行くのですが…申し訳ありません」

と頭を下げた。

「そ、そんな頭を上げて…」

「私達も早とちりをしたみたいです」

とシェリアとケイが弁解をした。

「よは…あのバスに乗ってほしいと」

「はい。そうことになります」

タナカさんは頭を上げた。これに乗るのかとシェリアは関心を持った。まるで私立の学校に行かれる気分だと。すると

「お、お話のところすまないが…そこを退いてくれないか?」

と御者が申し訳なさそうに言う。タナカさんは気づき

「すいません。今、退かしますので。それでは、シェリアさん。これから荷物を出しても…」

「あ、はい。どうぞ」

「それでは…」

と了承を得たタナカは馬車の中にあるトランクを出した。そして、バスに戻りバスのトランクルームに詰める。トランクルームの中を見ると。大量の荷物が置いてあった。シェリアの他にもあのヴィング学園に招待されたのだろう。

シェリアの荷物を詰めたら。タナカが手袋を取り

「どうぞ」

とシェリアをエスコートをしてくれたのだ。

「マナーをしっかりしてるのね」

「これでもマナーはしっかり学んでおります」

これは完璧な女性へのエスコートだ。本物の紳士がいるようだ。先程の荷物の詰め方もそうだ。形をずっと見てきた様だ。トランクを正確に詰めたのだ。

「では、ケイも一緒に…」

「ケイ?」

とタナカはきょとんとした。

「ええ、私の侍女よ」

「あ、申し訳ございません」

とタナカはまた頭を下げた。

「え?」

「実は本校は付き添いの方は入れないのです」

「ええ…」

シェリアは分かっていたのだ。でも、分かっていても分かりたくはないのだろう。シェリアは恐縮そうにケイを見てきた。ケイもわかってくれたのかケイは微笑んだ。

「私は平気です。シェリア様、今は前を向いてくださいね」

とケイは微笑みでも隠せないほど寂しさが滲んだ。

「ええ、そうね。ケイ、行ってきます」

「行ってらっしゃいませ。シェリア様」

とシェリアはタナカにエスコートをしてもらい。バスに乗り込んだ。

「ところでシェリアさんはバス酔いはしますか?」

「あ、多少は…」

「ならば前の席に行ってください。廊下側の2番目の席ならありますので」

「ありがとう」

シェリアはタナカの言った通りに座った。

そしてタナカが乗ったところで。バスが動いた。バスはケイ達とは反対方向に右に曲がった。そして、バスは森の奥に入り込んだ。閉じ込めるように、逃がさないようにバスは真っ直ぐに進んだのだ。

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