きざはし
紫陽_凛
【御伽話】天使の彫像
――広場の
――天使の彫像についてのおとぎ話? ガイド以上のことは語れねえと思うけどナァ。仕方ねえな、そんなに頭下げられちゃ。俺が聞いたのは婆ちゃんや母ちゃんが伝え聞いた話だし、その記憶もあいまいだから、鵜呑みにしないでくれよ。
ステアビルドってのは、あとからついた名前だ。「ほらごらん、あの天へのきざはしを、あのぐるりと回っていく美しいらせんの階段を」。あの階段を何百年もかけて作り上げたから、そいつはステアビルドと呼ばれるようになったわけだ。
見えるだろ、天使の彫像以前に、あの天に伸びていく
その男が本当に何百年も生きる長命の男だったかどうかは知らねえな。わからん。ただ俺は婆ちゃんや母ちゃんからこのステアビルドって男の話を聞いただけでね。実在したかどうかも定かじゃない。残っているのは橄欖の螺旋階段と、広場の天使の彫像と、このおとぎ話だけ、ってわけだよ。まあ、ステアビルドのおとぎ話っていえば、こんなもんだろう。ガイドの話したことと大差ねえだろ?
ああでも。
ステアビルドは、天使のことを愛していたんだって、婆ちゃんが言ってたっけな。
ああちなみにあの階段、ニンゲンが登れるかどうかは定かじゃねえ。好奇心ある
ん、なんでわかるのかって? わかるよ。おめえ、空に焦がれてるもんよ。何人目かの馬鹿にならないように、ちゃあんと地面に足着けときな。俺との約束だぜ。
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