第二十三話
「氷漬けのオークの死体なんて見た事ある訳がないので買い取り自体は出来るのですが…」
帰りに寄っているのは冒険者ギルドなのだが、通りがかった小さな町? の様な場所のギルドなので対応に困っているようである。
氷を自力で解かせられなかったのも鍛錬不足を感じてしまった。
いや、目が見える様になったのも、力を得たのも最近だから致し方ないのかもしれないが。
『お兄ちゃん氷が溶けなかったの、そんなにショックだったの? 顔にまるっきり書いてあるけど…』
「買い取りはお願いします。 それと、氷はどうにかならないか頑張ってみます」
こっちには剣があるんだ。 負けてられない。
『剣で切ったらオークの死体がバラバラになっちゃうよ!』
「あ、あの! ギルド内で剣を抜くのは!!!」
「兄ちゃんやめときな!」
「おい! ボウズ!」
知った事か。 もう我慢するのはやめたんだよ!
剣に力は入れない。
力いっぱい切ればオークごと斬ってしまう。
刀身から反社した光と、氷の反射による光…一見すればきらびやかとも見れるか。
そんな事はどうでもいいけれど。
「シッ!」
その一言がギルド内に響いた。
俺の声が響き渡るって言うことは、それだけで静寂に包まれていることが容易に想像できる。
『あちゃあ…。 これはやりすぎだよ』
そんな事はないはずだ。
ちゃんとオークの死体はそのままの形を残して氷だけが切り刻まれているのだから。
「なにか不備があるだろうか?」
唖然を通り越し、自らの世界へと旅立ったギルドの人々。
買い取りをして貰いたいのだが。
すると、一人のなかなか背格好の良い冒険者が声を掛けて来た。
「もしかして、風の噂で聞いたことのある盲目の剣聖…ってのはアンタだったのか? どうやら視界は良好そうだが」
「事情は色々あるんだよ」
「なるほどな…。 一流の人間にはどこか秘密の一つや二つあるもんだ。 俺はファイツだ。 とりあえず、ここは俺が話を付けておくから一旦この辺の雑貨屋とか飯屋でも回ってくると良い。 多分あれだけの質のオークだから…経験上、まずギルドからの支払いが今日中にってのは無理だろうな。 すまんが、宿も見繕っておいた方が良いかもしれん」
「色々助言助かる。 冒険者の中にも良い奴がいるもんだな」
「ただのお節介なだけさ! 歳をとると皆子供には優しくなるんだ! これが父性ってやつかもな!」
「ははっ…」
ドラゴン達も苦笑いしているのを感じるので、会話を聞いているのだろう。
感じの良いおっちゃんという印象だ。
さて、一度雑貨屋でポーションの値段を見たり色々してみよう。
魔法の本とかもあるかもしれないし。
『魔法、諦めてなかったんだね』
『精進すれば身に付くだろうがセンスはのう』
やかましい。
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