第二十一話

『む、そういえば…。 先代の剣聖を知っているのか?』


唐突に投げかけられたその言葉。

会った事も無いどころか、世代が違い過ぎる気がするのだが?


「いや、俺の産まれる前の事過ぎるので…」


『そうか。 我流で効率を求めれば似るのかもしれんな。 他にも似ている剣術を何度か見た事はある。 だが、あいつの域をモノに出来そうだと思えたのはお前だけかも知れないぞ。 いや、それは違うな。 お前は…あいつを超え、我ら龍をも討てる程の剣士になる』


そこまでの評価なのか…。


『うんうん、既にお兄ちゃんは下位の竜なら無傷とは言わなくても勝てるよ?』


「え? そんなに強くなってるのか?」


『自覚無いの?』


確かに強くなったつもりではあったが…。

そこまでとは…。


『エンシェントドラゴンには遠く及ばないだろうが…。 さぁ、美味いモノを食すぞ!』


「…人間の食事って口に合うんですか」


『あいつですら人化出来るんだから同じエンシェントを冠する者に出来ない訳がないだろう? 多分…』


憶測だった。

あと大量の薬草を採取したからギルドで換金はしておきたい。

解毒関連の薬草も数種類採取出来ているのだがこれも冒険者ギルドなのだろうか?

それとも別の買い取り場所があるのだろうか?


と、油断をしていたら背後にオーク…人型で豚の顔をした魔物が現れていた。

二人はとっくに気付いていたが、俺を試していた様で何も言わない。


オークは大振りの拳を繰り出してくるが、それはあまりにも愚鈍で、もはや止まってすら見えた。

いい機会だから魔法を練習してみようか。


「どうやって使うんだろう」


分からずにフロストドラゴンをイメージして身体中の力を集めてみる。


“パキン”


オークは一瞬で氷漬けになり、竜の剣を使った時と似たような、否、それ以上の現象が起きている。

今回は自分の足元まで凍り付いている。


「寒っ!!!」


『力の制御が甘いが人間が使ったという前例を聞いたことが無い故致し方ないか!』


それはそうだろうが、どうにかして助けて欲しい。

それに制御の方法も教えて欲しい。


“ピキ”


『氷の扱いはへたっぴなんだね! 良かった! お兄ちゃんはそのまま剣だけでも良いんだよ!』


それはなんか嫌だな。


オークの死体も記念に持って帰る事に決まった。

このオークは氷漬けで持って帰る為、傷一つない新品同様の死体だ。


これがまた一つ騒ぎになってしまうのは後の話。

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