第十九話

この近くにきっといるはずなんだけどな…。

先程からトレントや木にまつわる魔物ばかり出現してきているのが何よりの証拠だろう。

ごそごそと大きな音を立てていて気配だけ感じるのがこの辺の魔物の恐ろしいと感じる所だ。

多分木々と同化しているがために余計に視認が困難になっている。

目と言う武器を手に入れたら今度はこういった弊害があるのか。


致し方ないが気配のみで察知しよう。


『我が盟友の気配がするな。 しかも彼奴の子の気配まである。 何者か?』


恐ろしく重厚な気配。

世界樹と言っても過言でも無いほどの大樹。

しかし、じわじわと其れはドラゴンへと姿を変える。


『人族の童子よ。 我は童子達を宝と思っている故に何もせぬ。 さて、この気が変わらぬうちに何故貴様からあいつの気配がするのか、答えてもらおうか』


「俺はフレイニア・ドラグニスの家族…息子となりました。 ユーグス・ドラグニスです。 勿論、グラスも家族です」


『…あの、堅物が家族か。 信じられんがその気配に…紋を見せられたら信じうるしかないのだろうな。 アルブル・ドラグニカである』


それはそうだ。 人間がドラゴンの子供だなんて。

俺だって信じられないよ。


「そこで、お願いがあって参りました」


『ほう? 願いとな』


「俺の家族になって頂けませんか?」


『面白い事を言う童よ。 アレの子であるなら我の孫の様なものだろう? 断るはずもない。 しかし、一つだけ聞かせて貰う。 この木々を見てどう思った』


「魔物の木や自然の木、どちらも共生していて活き活きとしている…。 目が見える様になったのが最近なので詳しくは分かりませんが」


『では何故魔物の木と自然の木の区別が付く?』


「魔力の保有量と質ですかね?」


『魔力が視えるか。 それは天性の…いや、鍛え上げたものか。 それに龍眼の力もあって色々と鋭いのであろうな』


褒められているのだろうか?

だが、その視線からは敵意の様な類のものは一切ない。

寧ろ、温かい気持ちになるくらいだ。


『我も契約しよう。 面白そうだ! ちなみに我と契約したら生産力が主に上がる事が多いと思うぞ? 木材だけでなく、草や花にも力は働くのでな。 木の竜の上位の者には土を司る事も出来、逆に土の上位の者には木を司る事が出来る。 不思議じゃな!』


「え、なんてデタラメ…というか曖昧な…」


『じゃが、残念な事にエンシェントドラゴンになっとるのは樹木を司る我の方だけではあるがな…』


なんとまぁ。


そうして家族として、アルブル・ドラグニカが新たに加わった。

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