第十八話

ドラゴンの家族になるっていう事の大きさは実際俺には良くは分かっていないが…。

まず、聖草の効果が俺にも流れ込んできた事も良く分からないし。

あれ? 今思うと余計に不思議だな。


「ところで、裁判の方は…」


「うむ。 ルインツァルトが此方に居るだろう? 一回目の裁判は滞りなく。 しかし油断は出来んかもしれんな」


「他国と繋がっている奴らのせいで…ですか?」


俺は彼らの表情の些細な動きも見逃さなかった。


「まさにその通り。 むしろ、繋がってないのは陛下、及び一部王族と一部の王族派貴族達だけだった。 もう腐り落ちているのだよ。 この国は」


「それでも、俺の力が必要ですか?」


押し黙ってしまった。

これではどうもあれだ…。


「おい、人族よ、この国に拠点を置く我らエンシェントドラゴン全てをユーグスの元に集わせる。 意味が分かるか?」


何を勝手に言っているんだ!


「その様な事をしても…」


「知らぬ様なので教えて教えてやろう。 いや、良い。 この事は知る必要は無いか。 所詮は人族だものな」


「それはユーグス君だってそうであるのではないか?」


「貴様は我が子を唯の人族如きであると言いたいのか? こいつはもう龍の子だ」


「龍の子であると何があるのですか?」


「その様な事すら知らないのか…」


大きく呆れた様な声をあげているのできっと大切な事であったのだろう。

しかし…。


「いえ、ドラゴンと言うのは家族に多いなる祝福を与えると…曖昧な事なら知っているのです。 ですが、宰相の前宰相、前陛下の策にて全ての貴族に詳しい内容は伏せられ、それを示した書物すら焼き払い打つ事を…」


「なんと愚かな…」


「致し方なかったのですよ。 一部の貴族を沈める為にそうするしかなかった、と」


「人族と言うのはおろかにも程がある。 ちなみに、貴様らは我が子がこの場に居らぬ事に気が付いた者は居るか?」


その瞬間空気がグラスの冷気程冷たく凍った。


「一体何処に!!!」


「アルブル・ドラグニカ…木々を司るエンシェントドラゴンである彼奴だ。 丁度彼奴が弱っているのが見えてな。 我が”息子” を送らせて貰った」


「それは有難い…。 エンシェントドラゴンの喪失はかなりの痛手になりうるものですかな」


「何を言っている? 我が”息子” と言ったであろう」


「まさか!?」


「先程から喋っていないこのユーグスはグラスによる氷像だ」


一同がまさに氷の様に固まる。

フレイニアはしてやったりととても嬉しそうな表情で徐々に存在が露わになっていく。

それは龍と言うよりも人に近く、なんとも形容しがたい状態になってしまった。


「こ、これは一体!」


「家族を回収…いや、増やしに行くのだ。 貴様らの顔を立てて少しだけは”居てやらせた”んだ。 感謝すると良い」


その言葉を聞いても誰も剣を抜く気すら起きなかった様であった。

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