第十五話
ん? 何よりも俺の記憶が読まれてしまったのが一番怖いんだが。
これは一体どう答えるのが正解なのだろうか。
…いや、どうせ光を掴む事が無くなったこの人生なんだ。 今更何を選択したって良いんじゃないか?
このドラゴンから嘘や悪意の様なものは一切感じない。
俺の本当の親なんかとは大違いだ。
このドラゴン達は憐れんで俺を家族に迎え入れようとしてくれているわけでは無いのだろう。
危険を顧みずに山に入り、自分の目よりも子ドラゴンの命を優先した事により信頼を得た…のだろう。
むしろ、それ以外にあるのだろうか?
「人族の幼子よ。 まずは名を教えてくれぬか?」
「ユーグスです。 姓はありません」
「ほう。 良き名だ。 家族になる覚悟は出来たか?」
「…はい。 俺なんかで良いのなら」
「俺なんか…か。 人族と言うのは自己肯定感の低いのが玉に瑕であるな」
「お兄ちゃん、元々ドラゴンに近い存在なのにね!」
え? それはどういうこと?
「では…。 我が名はフレイニア・ドラグニス! 神祖の血族の盟約において宣言する! この者! ユーグスを我が子として認め、新たなる一族として認める! 今後はユーグス・ドラグニスを名乗る様に!」
訪れる静寂。
威圧が凄いのか肌が震える。
「お兄ちゃん。 ここは返事をしないとだめだよ!」
「ひゃ、ひゃいっ!!!」
「む? よいか…。 盟約は許諾された。 やはり、ユーグスは風の剣との相性が強い様に見えるな。 きっとどこかで風の竜と縁があったのやもしれん。 炎と氷の剣は取り込んでしまった故、其の剣はユーグスが使うと良い」
「はい!」
そういえばこの剣って”綺麗な色をしていたんだな”
「お兄ちゃん! 目が見えてるの!?」
「!? 確かにどこかおかしいと思っておったが…まさか!」
「あれ、これが見えるってことか! 凄い! そうか、光、色…これが!」
俺は言われるまで気づいていなかった…。
が、言われた瞬間に気付いたが、自分の心に感動の渦が押し寄せて来ていたのを感じ取る。
感覚としての色と、視覚としての色が共存している為により鮮明に見える…いや、視える。
注視すれば世界の時間が遅くなった様にすら見える。
「ほう、竜と言うよりは龍の眼であるか。 これは逸材か」
「龍の眼?」
「時をも置き去りにする特殊な…人族風に言う魔眼に近い物だ。 ただ、相手が遅く見えるのが”竜眼”だが、”龍眼”はそれ以上にもさまざまにある。 くくく…。 これ以上は今教えたら面白味が無いな。 それに教えても完全には使いこなせまい。 何せエンシェントドラゴンでも完全に使いこなせる奴は少ないのだからな! くくく…」
ドラゴンって言うのも思ったよりも表情豊かなんだなぁ。 早く目が見える状態で人にも会ってみたい!
「あぁ、そうだ、我々がこのまま街へと降りたら一大事だろう? 故に、龍紋を授けようと思う」
「龍紋?」
「うむ、人族のテイマーが魔物と契約した際に魔物を避難させられる紋章のドラゴン版みたいなモノだ!」
「お兄ちゃん、説明が雑でごめんねぇ!」
「た、多分分かった。 というよりも自己紹介がちゃんと終わってないんだけど…」
「そうであった。 炎を司るエンシェントドラゴンの、フレイニア・ドラグニスである。 北を守護させてもらっている。 ユーグスの親となった」
胸を張るフレイニア…で、性別は?
「アイスドラゴンのグラスだよ! よろしくね! お兄ちゃん!」
と、甘えた様にすり寄ってくるグラス。
で! 性別は!?
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