第九話
どうしてこの子は俺の後ろを歩いて来るのだろうか。 案外気になって仕方ない。
さて、ここからどうなるか…と。
「ユーグス君ここだ。 奴らの証言に関してどうか、という事を証言して欲しい」
「分かりました」
「だが、ショッキングだろうからな。 心して入り給え」
意を決して入ると糞尿と血液の入り混じった臭い。
さらには響き渡る絶叫。
これだけは目が見えていない事が幸いだったな。 あれ? さっきの子は入って来ていないみたいだ。
流石にここに入って来てたら恐怖だよ。
「オイ! 閣下が来たからもう一度、先ほどの話をもう一度してみろ」
「ヒィッ! 魔道薬師が来たんだ! そう、コイツの洗礼辺りからそいつは領地に姿を見せる様になった! 人を惑わせて快楽に落とす魔道薬…。 本人は気が楽になる薬と言っていた!!!」
ふむ、そう言った類の薬に関しては違法では無かったのかな。
「ユーグス君、どう思う?」
「確かに、急に周囲の人々の雰囲気が変わった事から、その薬が普及していても全くおかしくないと思います」
「それだけで十分検査出来るだろう。 君はそれに手は出していないな?」
「もちろん。 その様な弱者じゃありません」
「弱者だとっ!!! てめぇ!!! 欠落品の分際で剣聖の癖に!!! 偉そうな口を!!!」
ボコォッ!!!
その場に居る騎士? いや誰だろう?
が、相手を殴って黙らせる。
「ユーグス様は客人だ。 貴様がその様な口を聞いて良い相手ではない」
「次」
「ぜ、領主様の提案で税収が急激に上がったんだ。 それと、サカーレ王国の人間が流れてきて、俺達に指示し始めた!」
「サカーレだと!?」
知らない国の名前が出て来た。
これは他国の人間をこちらに送り込んできている。 すなわち直に戦争になるかもしれないってことなのか?
「ユーグス君知っているか?」
「自分の周囲には…。 ですが、冒険者や教会ならいくらでも居てもおかしく無さそうですね」
「なるほど、あれらなら紛れ込ませやすいか」
「この者は王都へと連行せよ。 隊長はルインツァルトとする! ユーグス君。 君には証人になって貰いたいがどうせこの裁判は長くなる。 先に連なる峰に行くと良い」
「分かりました」
「閣下、この者はこれ以上の情報は細々としか把握していないようです」
「わかった。 ではユーグス君、一旦茶でも飲もう。 ここは彼に任せよう」
「はい」
俺達が部屋から出ると、先ほどの女の子が待っていた。
「随分と短かった様ですわね」
「マリー。 この子は客人であってお前の玩具では無いんだぞ?」
「お父様は黙っていて下さいまし」
「はい」
え? なんでそこで返事しちゃうの!?
「ユーグス様と仰いましたわね? 私はマルグリット・フォン・シュヴァルグランですわ。 以後お見知りおきを」
「は、はい」
「山に登られるのですよね? でしたらその前に私と一曲踊って頂けませんこと?」
「お、踊り? やったことないですけど…」
「何を仰っているのかわかりませんけれど、剣士の踊りとはすなわち手合わせでしょう?」
なんだかめんどくさそうな子かもしれない。
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