第八話
「連なる峰、その一角にはドラゴンが住んでいるとされている。 しかもエンシェントドラゴンだと聞く。 まぁ、ここ数十年その姿を見た者は居ないから大丈夫だろうが」
その聖草もドラゴンも目で見る事は見れないのだけど大丈夫なのだろうか。
「心配そうだな?」
「はい、目が見えないので…」
「当然だろう。 しかし、気配や相手の強さの分かる君ならば対処は可能なのではないかな? ドラゴンは灼熱を操るエンシェントフレイムドラゴン。 すぐに分かるだろう?」
そこまで聞いてしまえば回避する事は容易に感じる。
しかし、不安は拭えない。
武器も木剣のみ、防具は…軽い方が良いとしても山に行くのにこのままじゃいけないだろう。
「君は表情に出やすいのだな。 食料やポーションの類はこちらで用意する。 種類ごとに瓶を分けておくから取り間違える心配も無かろう。 武器や防具、替えの衣類の購入金額もある程度渡しておこう。 どうだ?」
罠ではなさそう…? だが何故ここまでしてくれるんだ?
俺が協力するから?
たったそれだけでここまでするのか?
「もし君が、聖草を採取して来る事が無ければ、君は二度と光を見る事は出来ないだろうし、今後聖草が手に入る事も無いかも知れない」
「そんなに重要なのですね」
「視覚を錯乱させる霧が生じるのだ。 だから目が見えてしまうと聖草まで辿り着く事は不可能だろう」
「分かりました。 行かせて貰います」
「良い返事だ」
ドォン!!!
扉が勢いよく開く。
「お父様! こんないたいけな、可愛らしい少年を死地に追いやるだなんて人のやる事でしょうか!? いえ、それ以上に貴族として、ここの領主としてどうなのでしょうか?」
誰だこれ? お父様…って事はシュヴァルグラン様の娘さんか?
「愛しの我が娘よ、分かってくれ。 これは彼の目を治す最高の機会なのだ」
「ですが!!!」
両者とも火花が散る様な言い合いを始めてしまった。
恐ろしくて間に入る事なんて出来ない。
「ユーグス君よ、光を掴んでみたくはないか?」
その一言で俺はどれだけ止められても心の中で決意が固まっていた事を自覚する。
「見てみたいです。 連なる峰に行きます」
「本来、聖草はエリクサーにするのだが…。 多分制作は不可能だ」
「「えっ!?」」
「だが、ちぎった葉を食えばそれに近い効果は得られる。 しかし、ちぎってすぐに食さないと効果はない」
「なるほど」
「折り入って君にお願いがあるのだ」
「はい!」
「目が見える様になったら我がシュヴァルグラン家お抱えの冒険者になって欲しい。 そうすれば他の貴族には目を付けられずに済むし、我々は強力な新人冒険者を抱え込める。 どうだ?」
「分かりました。 ここまでして頂いたんですから、そのくらいは」
俺が強くなったら変な貴族からちょっかい掛けられそうだから困るわけだもんな。
「よし、では、話を戻すとする。 先の奴らの件の証言だが、一旦これから着いて来てくれるか?」
勝手な思い込みなのだが、地下に閉じ込められていて、拷問でも受けながら自供するまで延々と…。
考えただけでも恐ろしい。
「はい!」
「良い返事だ。 その後陛下次第だが、場合によっては裁判を受ける。 その場合再度来てもらう事になると思うがその時は」
「分かっています!」
「あの、あとでちゃんと自己紹介させてくださいまし?」
…なんかもっと強敵っぽいのが残っていた。
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