第六話-SIDEシュヴァルグラン-

バシィン! バシィン!


「ご苦労」


「閣下! こんなところに来られてはいけません! 拷問など見ていて気分の良いものでは無いでしょう…」


「良いのだ。 それよりも今日は客人が来るのだ。 こいつらは何か吐いたか?」


「それはそれは…。 本日いらっしゃるユーグス様の証言と照らし合わせれば、ルーヴァルト家は取り潰しで間違いなしでしょう。 その程度で済めばいいですが」


そこまでだったか。

であればその少年を救った褒美をルインツァルトにくれてやらないといけないな。

我がシュヴァルグラン家に仕える人材の中で最高の人材と言っても過言では無いからな。


「閣下…一つその証言の中に不穏な言葉がありました。 人を惑わす薬、魔道薬師…と」


「其れはこの国には居ない事が確認されているはずだが?」


「えぇ、ですのでより注意深く探りを入れたところ、一部の貴族が他国に希少鉱石や魔石、薬草の類を流している事を話し始めました」


「我々の嫌な予感が的中してしまったと言うことか」


「そうなります。 以前より調査のあった税収の急激に上がった領地や同じく急激に選民主義や差別思考の酷くなった領地はどうもキナ臭いかもしれません」


この様なタイミングで発覚するなど頭痛がしてくるぞ。

陛下に対してどの様に報告すれば良いのだ。

この国を守るべき我ら貴族が民を傷つけていたと知ればどう思われるか…。

早く問題を解決して愛娘の御顔を拝まねばならんと言うのに。


「ちっ、こうなれば他国に寝返った貴族を根絶やしにしてしまうか」


「さ、流石にそれは…」


「冗談だ」


なぜ、そんな冷や汗をかいて震えている。

本気でやると思ったか。

我が娘に手を出して来たら一族全て皆殺しにしてくれるが、そうでないのなら本当に実行するわけなかろうが。


「閣下ほどのお方が本気を出せば本当に国家間戦争になりかねないのでやめてくださいね」


「む、信用ならんか?」


「い、いえ。 その様なことは!」


そう言えば、娘にも最近『お父様は怖いので近寄らないでくださいまし…』 と言われたんだ。

そんなに怖いのだろうか。


「私が怖いか?」


「そ、その様なことは!」


なんだ、壊れてしまったのか!?


「し、質問を変えよう。 私は子供に怖がられるだろうか…」


「しょ、正直に申し上げますと、戦場で百戦錬磨の閣下のそのお姿は幼子にとっては少々刺激が強過ぎるものと思われます!」


「そうか、それは致し方ないな…」


そうか、子供には刺激が強過ぎるか…。

先ずはこの戦場と共に駆け抜けて来た髭でも剃るとするか。

きっとこれだけでも印象は変わるに違いない。


「閣下、お客様がご到着なされました」


「ご苦労。 すぐに向かおう。 その者は本当に少年で目が見えなかったか?」


「はい、ですが…目が見えないにも関わらず気配の察知も鋭く、目が見えている様に振舞っております。 ただ、馬車にお乗りになられた際に不慣れな従者が景色の話をしてしまい、少し悲しそうなお顔をなされたと…。 気にしていない、とは仰られておりましたが」


「分かった。 その件についても話をしておこう」


ルインツァルトの話といい今の話といいこの少年はきっと磨けば光るだろう。

なればこそ、一つだけいい案を思いついてしまったかもしれないな。

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