一応主人公ですけども

蜜衣柑斗

第1話・家族

?「ん……ふわぁ…」


朝、いつも通り5時半に目が覚める、ジリリリリと鳴り響く目覚まし時計を止めて……


?「……今日も良い天気だなぁ」


カーテンを開けて、ふとそんなことを呟くのだった



自室から出て、リビングに向かうと、リビングで朝食を作っている母親と目があった


母「あら、おはよう、蒼、相変わらず朝早いのね」

蒼「あ、はい、おはようございます、美希お母さん」


この人は小野美希(みき)お母さん、そんなお母さんの息子の僕が、小野蒼(あお)、どこにでもいる、普通の高校2年生、取り柄もなければ、運動ができるわけでもない…モブではないが、まぁある種、主人公の友人キャラがお似合いの人間だったりする



母さんが会社に行くのを見送ってから、僕は兄弟全員分の朝食を作り始める…すると、2階から降りてくる足音が聞こえてきた


?1「ふわぁぁ……ねむ〜…」

蒼「おはよう、澪姉さん」

澪「あー、おはよう蒼くーん」


この人は小野澪(みお)姉さん、僕ら兄弟の長女で、なんでもそうなくこなす優等生、姉さんの通ってる大学であったらしいミスコンで性格の良さ、可愛さなどを含めてめでたくミスコンをとったことがあるくらいの美人だ


澪「あ、朝ごはん作ってくれたんだ、ありがとう」

蒼「ちょっ、み、澪姉さん…」


ニコッと笑う澪姉さん、そのままよしよしと頭を撫でられてしまい、なんだかむずがゆくなる……澪姉さん、こういうところあるんだよな…


澪「さて、みんなが起きてくるまで、お姉ちゃんとゲームでもしてよっか!」

蒼「良いの?もうちょっと寝てても…」

澪「私が蒼くんと遊びたいの、だめ?」

蒼「わ、わかったよ…」


なんだかんだ僕たち家族のことをよく見ている、自慢の姉だ



?2「おはよー、あ、また二人で遊んでるし」

澪「あ、芽依ちゃん、おはよう」

蒼「おはよう、芽依姉さん」


次に起きてきたのは、小野芽依(めい)姉さん、僕たち兄弟の次女で、ほんわかタイプの澪姉さんに比べてビシッと決める時は決める、なんというか、リーダー的立ち位置がお似合いの人だ……が、実は芽依姉さんには、もう一つ顔がある


澪「あ、目の下の隈、もー、また夜遅くまでカードいじってたの?」

芽依「あはは、お恥ずかしい……」


それは熱狂なカードファイターとしての顔だ、いろんなカードゲームを幅広くやっていて、遊○王からデュエル・○スターズから、ほとんどなんでもござれな芽依姉さんは、夜遅くまでカードをいじっては、澪姉さんに叱られている


澪「毎日続けてたら、また学校で倒れちゃうよ?」

芽依「まぁまぁほら、世の中には雲の上はいつも晴れということわざがあるしさ」

澪「その下が大洪水だったら意味ないでしょ?」

芽依「はい……」


普段はほんわかしてる澪姉さんが「甘やかさないの」とたしめられるが、こういう時だけ、いつもと立場が入れ替わる


芽依「あ、そうだ蒼、帰ったらまた一緒にやろ、カード」

蒼「ん、りょーかい」

芽依「ふふっ、楽しみね」

澪「もー、芽依ちゃんは帰ってきたらまず仮眠すること!」

芽依「ゔっ」

蒼「あ、あはは……」



?3「おはよっ、お兄ちゃん!お姉ちゃんたち!」

?4「おはよう、兄さん、姉さん」

蒼「おはよ、梨乃、真由」


次に起きてきたのが梨乃(りの)と真由(まゆ)、僕たち兄弟の末っ子二人で、梨乃が先、真由が後生まれだ、梨乃は元気で頑張り屋さん、ところ構わずハグしてくる癖がある、そして妹の真由は梨乃とは対照的にしっかりもの、ただまだまだ甘えん坊なのか、たまに姉さんたちに甘えているところを見る、本人は[そんなんじゃない!]なんて言ってるけど……


澪「それじゃあ、柊ちゃん起こしてくるね」

蒼「あ、うん、よろしく、澪姉さん」

梨乃「お兄ちゃんお兄ちゃん!今日のご飯は!?」

蒼「ぅっ」

真由「ちょっ、梨乃!兄さんが死ぬから離しなさい!」

蒼「あ、あはは、ありがとう、真由」


……梨乃のこの癖、危ないかも…


?5「ふわぁぁぁ……あぁ…ねっむぃ…」

澪「柊ちゃん、お顔洗っておいで?あとさくらちゃんはちゃんと起こしてね」

柊「そうする……」


最後に降りてきたのが柊(ひいらぎ)姉さん、僕たち兄弟の三女で、おそらく兄弟一のめんどくさがり屋だ、本気を出すとその集中力は凄まじいのだが、その本気を出すまでにエンジンがかからないって感じ…その柊姉さんに抱えられているのが、最後の兄弟、というか、姉妹のさくら、芽依姉さんと対照的に寝るのが好きすぎるのが難点だ



全員「いっただっきまーす!」


長女

澪「んっ、蒼くん、これすっごく美味しいよ、ありがとう」


次女

芽依「出た姉さんの男を落としてきたスマイル……あおいしっ」


三女

柊「寝起きにも優しい献立だねぇ……」


長男

蒼「あ、あはは……ありがとう、三人とも」


四女

さくら「んまんま……むにゃむにゃ」


五女

梨乃「これ美味しいね!」


六女

真由「兄さんの料理だもん、外れるわけないよ、というか、さくら姉さんはあれ平気なの……?」


澪「梨乃ちゃん、お醤油とってもらってもいいかな?」

梨乃「うん!はい!」

芽依「さくら〜、ご飯の時くらいちゃんと起きなさい?」

さくら「むにゃむにゃ、ふぁ〜い……」

真由「柊姉さん、ご飯粒ついてる」

柊「え、うそっ」


そう、これが僕たちの朝、どこにでもあるような、ごく普通の朝です……ある一点を除けば


さくら「んにゃっ……そういえば、お父さんとお母さんって今日起きてきてないの?」

澪「昨日、[仕事が切羽詰まってるから帰れない〜]って、お父さんからはきたよ?」

芽依「相変わらず研究が立て込んでるみたいね」

柊「まぁ夜遅くに帰ってきたなら寝かしといていいんじゃない?」

さくら「じゃあお母さんは?」

蒼「美希母さんなら、もうお仕事に行ったぞ?」

さくら「ぷー、そっかぁ……」



蒼「ふぅ、洗い物終わりっと…」

梨乃「お兄ちゃん!」

蒼「おわっ!?」


自分の使った容器の洗い物を終えると、梨乃が後ろからギュッと抱きついてきた


蒼「り、梨乃、どうしたの?」

梨乃「えへへ、何でもない!」


にぱっとわらう梨乃…こんなふうに懐いてくれるのは兄として非常に嬉しい…嬉しいのだが流石に中学生の妹が高校生の兄や姉にギュッと抱きつくというのはいかがなものだろうか、僕としては可愛いから全然構わないが……


芽依「梨乃ー、早くしないと準備遅れるわよー」

梨乃「お姉ちゃんもぎゅー!」

芽依「ちょっこらっ、全くもー…」


色々と言いながら、なんだかんだ優しい笑顔で梨乃を撫でる芽依姉さん……流石だ…



澪「よしっ、行ってらっしゃい、梨乃ちゃん、真由ちゃん」

梨乃「行ってきまーす!」

真由「あちょっ!走らないの!行ってきます!」

澪「気をつけてね〜」ヒラヒラ


梨乃と真由を送り出す澪姉さん、梨乃と真由は現在中学2年生と1年生だから、兄弟の中で一番早く家を出る


澪「よし、次は高校生の蒼くんとさくらちゃんだね」

蒼「澪姉さん、そんなに毎朝毎朝、見送ってくれなくても…」

澪「んーん、これは私がやりたくてしてることだからね」ナデナデ

蒼「そ、そう…?」

澪「うん、だから、これからも行ってらっしゃいを言わせてね?」

蒼「わかったよ…」


……なんだかんだ、澪姉さんには敵わないや


芽依「いやぁ……ついに蒼も高校2年生かぁ……」

蒼「ついにって言っても、もう数ヶ月前からなんだけど」

芽依「それはわかってるんだけど、なにせ蒼がちっちゃい時から見てるから……早いなぁって」

蒼「芽依姉さん……」

芽依「……せっかくだし、大学はうちの大学に来たら?澪姉さんもおんなじだし」

蒼「そうだなぁ、後一年で受験だし…そこらへんも考えてかないとな」

芽依「なにかあったら、またいつでも相談しにきなさいよね」

蒼「うん、ありがとう、芽依姉さん」


芽依姉さんには、よく進路のことで相談させてもらった、しっかりものだからっていうのもあるけど、こういう時に頼るのは芽依姉さんの方が良いと僕は知っている


芽依「……ん、蒼、ちょっと」

蒼「はい?」

芽依「もう高2なんだから、ネクタイくらいしっかりしめなさい」

蒼「ゔっ、す、すみません…」


細かいところまで見てるなぁ、芽依姉さん…休みの日はカードファイトに埋まる人だけど……



蒼「それじゃあ、行ってきまーす」


梨乃と真由が家を出て30分後、今度は僕たちが学校へ向かう時間だ


澪「うん、行ってらっしゃい!さくらちゃんのこと、今日もお願いね?」

蒼「わかってるよ、姉さんたちも気をつけてね」

澪「うん、ありがとう」


よろしくというのは、「きちんと学校に着くまで見張っていてくれ」という意味だ、前までは一人一人で登校していたのだが…その時にちょっとした事件があって、それから僕が一緒に登校するようになった


さくら「んにゅぅぁ……」

蒼「さ、さくら……」


眠そうに目を擦るさくら…この暑い夏の太陽に照らされながらも変なあくびをするさくらを見て、本当に寝るのが好きだなと思う


蒼「最近暑くなってきたね……」

さくら「だねぇ〜……溶けちゃいそうだよぉ…あづぃ…」

蒼「あ、あはは、僕の分の飲み物もあげるから」

さくら「良いの!?やったぁ!蒼くん大好き〜♪」

蒼「う、うーん…ま、ありがと…」


全くもう……調子がいいんだから……それでも、甘くしちゃうんですけどね、可愛い妹だし



「おーい、蒼〜」

「さくらちゃ〜ん!」


学校の敷地内に入ると、少し先で待っていた友達に呼ばれる、お互いがそれぞれ別の友達に呼び出されたため、ここで別れることに


蒼「ん、それじゃあ僕はここで」

さくら「私も、また後でね」

蒼「うん」


そう告げて、お互い呼ばれた方に歩く、そこには、僕の友達で親友の、宮原悠真(みやはらゆうま)、成績優秀スポーツ万能、まさしく主人公と呼ぶにふさわしい男だ、ちなみに中華料理屋の息子で、ここ最近よくお世話になってる


悠真「よっ、蒼」

蒼「おはよう、悠真」

悠真「今日の宿題やった?俺やったんだけど全然できなくてさ〜」

蒼「前回の授業お前寝てたし、そりゃわかんないよ」

悠真「っはは、そうなんだけどさぁ」


やれやれ…こいつはいつまで経っても相変わらずだ、頭はいいからテストの点数はいいのに、授業態度のせいで成績が振るわない……ちなみに、悠真にはもう一つ結構致命的な弱点がある


女生徒1「〜でねー?」

女生徒2「まじ!?やばっ!」


廊下を歩く僕たちとすれ違うように女子生徒が歩いてくる……彼女たちを横目で見つつ、悠真がいた方を見ると、そこには学校の壁が広がっていた


蒼「……悠真、もういったよ」


柱の方へ歩いて行き、その影に視線を移す、そこには、キュッと縮こまり隅っこに身体を隠す悠真がいた


悠真「は、はは、わりぃ……ついつい隠れちまって……」


悠真は、女性恐怖症なのだ



悠真「はぁ……なんとか今日も無事に教室に着いた…」

蒼「相変わらず大変だな」


席に座って机に突っ伏し、項垂れるようにつぶやく悠真、こいつは女の人が苦手なことを周りに隠している、本人曰く、[俺と話したくて話しかけてきてくれてるのに、遠ざけるようなことしたくない]だそうで…正直僕には何言ってるのかよくわからない


蒼「あんまりにも苦手なら、ちょっとくらい説明しても…」

悠真「いやだって、女の人全員が苦手なわけじゃ「悠真〜、蒼く〜ん!」あ、来た」


?「おはよ〜」フリフリ


大きく手を振りながらこちらへと近づいてくる女子生徒、彼女の名前は湊紅音(みなとあかね)さん、美人で性格が良く、またスタイルも抜群というところから、クラスどころか学校で人気の女性、男子生徒の注目の的で、いわゆるマドンナと呼ばれる類の人だ


紅音「あらら、悠真、相変わらずだね」

悠真「うっせーな、しょーがねぇだろ……それで?由紀と怜はどうしたんだよ」


紅音さん、由紀さん、して怜は、このクラス内で悠真が普通に話せる数少ない女子生徒だ、僕たちは大体この5人で一緒にいることが多い…そのため、僕は良く3人から相談を受ける…え?なんの相談かって?…まぁ、今度時間があったら話そうと思う


紅音「由紀は呼び出されて先生のとこ、怜は寝坊だって」

悠真「何してんだあいつは…」

紅音「まぁまぁ、二人も色々やってるからさ」

悠真「色々ってなんだよ」

紅音「勉強とか」

悠真「二人とも頭は良くないもんな…」

紅音「悠真から見るとそりゃそうでしょうよ」


蒼「……相変わらず仲良しだなぁ」


紅音さんがくると、途端に僕は一人きりになる、悠真と紅音さんは付き合っているわけではないのだが、その圧倒的な仲の良さに入る隙間がないのだ、だからこうして俺は、悠真の隣である自分の席に荷物を置いて席に座る


蒼「はぁ…」


頬杖をつきながら窓の外に目をやる、そこには空が広がり、その無限のように見える大空で翼を持つ小さな生き物たちが羽ばたいていた……これが僕、小野蒼の1日の始まりだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る