第52話

「絵里ちゃんもそう?」


「いえ…亮介くんが劇団辞めたの知ってますか?」


「聞いた」


「突然だったんです。それで、心配で来たんです」


「ふーん?いつも通りだから、もう帰ったら?」


「…は、はい」


お兄さんがあっさり追い払ってくれた。

私は慌てて、玄関に飛び出す。


「ありがとうございます」


「え…あぁ、はじめまして」


「なんで兄貴?」


亮介くんは同じこと言ってる。


「お前、彼女泣かすな」


「え!…大丈夫?」


亮介くんは私に近寄ってきて、ほほを撫でる。緊張が解けてまた泣いてしまった。


「わ!ごめん、びっくりしたんだね」


亮介くんに抱きつかれたけど、お兄さん目の前にいる…


「お前…なに揉めてんだよ。部屋で話せ」


「なんで兄貴がいるんだよ」


「いいから彼女座らせてやれ」


「…勝手に部屋入るなよ」


私は亮介くんの隣に座り、お兄さんは前に勝手に座る。


「昨日から研修で来てた。足助が電話で大騒ぎしててまじでうざかった。お前、なんで名前一緒な女にするんだか。めんどくせ」


「たまたまだよ」


「あんなに別れたがってた絵里ちゃんが、なんで亮介に執着してんだよ」

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