藤谷くん

第21話

ぱっと財布を掴もうとされた手が、男の子の手ごと掴んでいた。


「ありがとうございます!」


「彼女の手を離してもらえますか?」


「…え、すみません!」


亮介くんが注意した。


「財布、どうぞ」


亮介くんが財布を取り、困ってた人に手渡した。


「…ありがとうございます」


それからバックの中身を戻し始めた。そろばん入ってるとか、なんなのこの人。すると、椅子の上からゴルフボールが転がって、離れて見ていた私の足元に…


「…あ、青上さん!」


「え」


彼氏の藤谷くんだ…。小さいおじさんに見えたけど…なんでここに?


「絵里、なんでここに?」


やば…亮介くんと目があった。あとつけてきたなんてバレたくない。


「藤谷くんを探してて。私の彼氏なの」


「あー!そうなのか。じゃ、失礼します。笑理、行こう」


亮介くんたちは、なぜが嬉しそうにして立ち去った。


「青上さん、…行き先言ってなかったけど…」


「たまたま仕事が早く終わって、もしかしたらいるかなと思って…」


「そうなんですね…」


気まずい。拾ったゴルフボールを手渡した。

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