モンゴメリ『赤毛のアン』

さあ、やっと少女小説を読んでまいります。まず『赤毛のアン』から…。


私が事前に『赤毛のアン』に関して知っていたことといえば、


・高畑勲監督により『世界名作劇場』でアニメ化されていた

(自分が生まれる前でもあり、見たことはない)

・カナダのプリンスエドワード島が舞台である

(河合克敏先生の漫画『とめはねっ!』で知りました)

・孤児であるアンを育てるのは、夫婦でなく初老の兄妹である

(海野つなみ先生の漫画『回転銀河』で知りました)

・アンが男の子を石盤でぶん殴る

(志村貴子先生の漫画『放浪息子』で知りました)


ということくらい。いろんな漫画で引用されるほど、知っていて当然のお話なんだろうな~と思ってしまいます。


日本でもずっと読まれ続けているだけあり、さまざまな出版社から本が出ています。今回は、私自身が児童文庫でデビューしている作家ということもありますので、講談社青い鳥文庫版で読んでみました。


プリンスエドワード島に暮らす、内気で女性が苦手なマシュウと神経質なマリラの独身兄妹。農作業の手伝いをしてもらうために、10歳か11歳の孤児の男の子を引き取りたいと希望しますが、兄妹のもとにやってきたのは赤毛の女の子アン・シャーリーだった…というところから始まります。


語彙力が無くて恥ずかしいのですが、もうとにかく面白かった! 

なにが面白かったかといえば、一番はアンとマリラのかけ合いです。

想像力豊かでおしゃべりなアンと、ツッコミがきびしいマリラ。

約3ページにわたって一方的にしゃべりたおすアンに対しての「アン、あんたは十分以上もしゃべっているんですよ」というシンプルな返事に笑ってしまいました。十分以上黙って聞いてあげてるんじゃないの…。

全編にわたって、体験したできごとをアンが空想を交えながらマリラにおもしろおかしく報告する→マリラはけっこうぞんざいに扱う、という場面が多数あり、そういう漫才を見ているようでニコニコしちゃうんですよね。


いやー、やっぱりマリラですよ。愛想がないマリラの中で、しっかりアンへの愛情が育っている様子がね、いいんですよ…。


子どもの頃に読んでいれば違ったと思うのですが、自分の年齢的にも完全にマリラに感情移入して読んでしまいました。

話が進むとアンが学校に通い始め、学園小説という側面も出てきます。アンが巻き起こす騒動の中にマリラがいないことも増えてくるのですが、それでもたいていはアンが報告してマリラが一言感想を述べてエピソードをしめる形。

アン視点というよりは、アンの話をマリラ視点で聞いているような気持ちになれました。同時に、アンをどんどんいとおしく思うようになりつつ、それを表現しない不器用なマリラがね、いいですよ。

(マシュウはファーストコンタクトでいきなりアンに落とされているというのに…)


もうマリラ、すごいツンデレじゃん…。



「『アン、そんなことを言うものじゃありません。』と、マリラは、ふきだしたいのをがまんして、この不敬な発言をしかりました。

 しかし、マリラはねむるまえに、そっと東の部屋にあがっていき、泣きながらねむってしまったアンを、いつになくやさしい表情で見まもり、『かわいそうに!』とつぶやき、そして身をかがめると、まくらの上の上気したほおにキスをしました。」



すごいツンデレじゃん!!!!!


物語開始時点で、マシュウは六〇歳、マリラは五〇代。マシュウにいたってはズバッと「変人」と書かれたり、さびしい人生を送ってきたのかな…と思ってしまいます。

物語終盤、マシュウとマリラがそれぞれストレートにアンへ愛情を伝える場面は、本当に泣きました。

孤独な人生の終わりが見えてきたころにアンがやってきて、どれだけ明るく暖かくなったかと思うと、ちょっと言葉が出てこないですね…。

はたして「少女小説」の読み方として妥当なのはわかりませんが、今このタイミングで『赤毛のアン』を読んでよかったと思います。


その他、気になった点を箇条書きでメモ的に記します。


・アンなんてありきたりの名前はイヤ、コーデリアと呼んで!と言うアン。現代の漫画やアニメの中二病キャラと同じ言動だ~。中二病は時空を超えるのか。


・腹心の友・ダイアナ。アンはダイアナの存在を聞いた段階ですでに腹心の友にする気まんまん、初めて会っていきなり「永久にあたしの友だちになるって、誓いを立てられて?」とグイグイ行く、控え目に言ってやべー奴だと思うのですが、それを面白がってあっさり受け入れるダイアナは器が大きいな~などと思いました。


・例の石盤でギルバートを殴る場面に入ると「これかーっ!」とテンションが上がってしまいました。ガンダムやジョジョの名セリフをネットミームとして知っている若い人が実際にその場面を見て感動する気持ちって、こうなんだ!


・「アンは自分のすべきことを見てとったのです。これを避けずに、勇敢にそれを迎えて生涯の友としようと決心しました――義務も、それに率直にぶつかるときには友となるのです。」人生の重大な岐路に立ったときに指針となりうる文章だと思います。こういう言葉に子どものうちに触れるのは、良いことでしょうね…。


別にしっかりした評論なんかを書くつもりもないので、今後、他の作品もこんな感じで感想を書き散らかして行こうと思っています。よろしくおねがいします。


次は、山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』です!

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