好きな子が 出来た告白 天気雨

『好きな子が 出来た告白 天気雨』

             桃もちみいか作



 どこかの誰かのラブストーリー。

 雨の続く、この空の下で、きっとこんな物語がそっと繰り広げられている。


 主人公はわたし。

 主人公はあなた。


 失恋も成就した恋も、今では優しいおもいでだったりする。




【――たとえばの恋物語の二人♡】


「いつか……、お前に言わなくちゃと思ってた。俺、好きな子が出来たんだ」


 ずっと好きだった男友達から告げられた、残酷な告白。

 と、思ったら、……それがヒロインわたしだったという逆転劇に、気持ちが有頂天になった日。


 天気雨が降っていた。

 二人で肩を寄せ合って、相合い傘で帰るラブラブ気分。




【――たとえばの恋物語の二人♡】


「好きな子が出来たんだ、ごめん。会社の同僚でさー、ちょっと相談ごとを聞いてたら……ついつい、その……」

「はあっ? なにそれ! 浮気したってこと!?」

「ああ、えっと。浮気っていうかまだ浮気未遂っていうか……。お前のことは嫌いじゃない。まだ好きなんだ」


 付き合ってたカレシにいわれた、さよならがわりの罪な告白。

 もうお前のことは好きじゃなくなったと言ってくれたら良かったのに、まだお前のことも好きなんだって、どうしてそんな繋ぎ止めるような酷いことを言えるのだろう。

 けっきょく、すぐには別れられずに、ずるずると付き合いは続いている。


 惚れたほうが負け、だなんて、誰が言い出したのだろう。


 今日は一人で過ごす、休日な日曜日。


 二人で一緒に過ごすのが当たり前だった、日曜日。


 いつもはとなりに笑う君がいた。

 君は今、だれのとなりにいるの?


 相合い傘ではない今日、カフェを出ると天気雨は止んでいた。


 虹が出ていたから、彼と別れようと決心した。

 鈍らないうちに、さよならのメール。


 ああ、便利だな。


 声を聞かずに、会わずに。

 君とはお別れだ。


 あっさり、きっぱり。

 自分でも驚きだけど、あんがい平気。


 失恋は女を強くする。

 そうかな。

 えぐれた心は、他で代用してしまうだけ。

 さよならの痕は、仕事の忙しさと好きな歌で埋めて癒やしてしまおう。



『好きな子が出来た』

 だからどーした。

 別れてから新しい恋しろよ。

 もしくはそんな無神経なこと言わずに綺麗に別れようよ。


 失恋の傷に塩を、塗ってくんな。

 君に失恋しただけでもダメージで瀕死寸前なのに、さらに追い打ちをかける。


 いい男ではなかったかも。

 別れて正解なのだ、他に目移りするような男は。


 むこうと違って一途なわたし。

 別れたからこそ出会いはやって来る。

 彼しかいない、はもう卒業だ。


 さあ、次の恋が待ってるさ。

 自分を一番に好きになってくれる、私だけを情熱的に見てくれる。

 うん、そうだ。

 そうだよ、そんな彼がいい。





          おわり

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