19 Erry R erde

 部屋の、ドアが開く。


 帰って来た。


 なるべく。

 笑顔で。


 彼に。


「あの。ここが俺の部屋だって。しょうかいはん、ってひとに聞いたんですけど」


 彼だった。けど、もう。彼じゃなかった。


 でも。


 涙をこらえて。


 彼に。まず、抱きつく。

 困惑している彼の腕に。指を当てて、ぱたぱたしてみる。彼。何も、覚えていないみたいだった。どちらの彼でもない。誰でもない。新しい彼。


 もういちど、やさしく抱きついて。

 耳もとで。

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