第29話:いわくつきのダンジョン……と今回のお恵み

「ここが“ゼチイゴロ”……ですか。るかたんさんの話を聞いた後では、どことなく不気味な感じがします」

「まぁ、元々暗いイメージのダンジョンなんだけどね」

『おっかないモンスターが出てきそうで怖いフェン』


 その後、私たちはアカバーンの街にあるダンジョン、“ゼチイゴロ”に来ていました。

 冒険者が何人も帰ってこないという、いわくつきのダンジョンです。

 ロビーを抜けて内部に入ります。

 他と同じようにジメジメしつつも、なぜか最低限の明るさはありました。

 てくてくと通路を歩いて広場に出ます。

 低層階はこういった構造のダンジョンが多いようです。


「何層まであるんでしょうか?」

「150層だね。冒険者たちは最下層で消息を立っているみたいだから、まずは一番下を目指そうと思うんだ」

「へぇ~、そうなのですかぁ」

『ひゃ、150層フェンッ!?』


 私は、ああそうなんだ、と思っただけでしたが、ルーリンさんはひどく驚いていました。

 驚きの表情のままお話しています。


『150層なんて言ったら、それこそ最高難易度のダンジョンだフェン! 70層や80層とはわけが違うフェンよ!』

「たしかに、ずいぶんと深いみたいですね」


⦅他人事で草⦆

⦅150層はマジでムズイんだよ、フレイヤちゃん⦆

⦅この世間知らずな感じがたまらんわ⦆


 いくら深かろうが私には関係ありません。

 困っている人を助け祈祷を届ける――。

 ただそれだけが私の生きる意味なのですから。

 そう強く思ったときでした。


〔チャンネル登録者が70万人に達しました。おめでとうございます!〕


 か、神様のお言葉です!

 お祈りを捧げなくては!

 ザッ! と跪いていると、るかたんさんたちが不思議な顔をして私を見ています。


「ど、どうしたの、フレイヤさん? 先に進みましょうよ」

『い、いや! フレイヤのお祈りだけは邪魔しちゃダメフェン』


 ルーリンさん、そんなに必死になって止めなくていいのですよ?

 まぁ、お祈りを邪魔されるのはあってはならないことではありますが。

 

〔チャンネル登録ボーナスを進呈します! どうぞお受け取りください!〕


 心の中でお祈りしていると、いつぞやのようにアイテムが降ってきました。



◆――――――――◆


【ユグドラシルの種】@チャンネル登録者400000人達成ボーナス。

・アイテム分類:植物

・ランク:SS

・効果

〔植えて育てると、天にも届くほど巨大な樹となる〕

・説明:聖なる者の祈りによって成長する世界樹の種。天空ルートへの道が開く



【万能秘薬“パナシー”】@チャンネル登録者500000人達成ボーナス。

・アイテム分類:薬

・ランク:SS

・効果

〔体力を全回復する〕

〔全ての状態異常を回復する〕

〔使用後1時間経つと再利用可能〕

・説明:女神の涙から創られたと言われている秘薬。一口飲めば、生涯病にかかることはない。



【アサルトライフルMG】@チャンネル登録者600000人達成ボーナス。

・アイテム分類:武器

・ランク:SS

・効果

〔物理攻撃力を+37564する〕

〔敵の物理防御力を無視した値のダメージを与える〕

〔リロード不要〕

・説明:射程距離は最長500m。低反動のため取り扱いが楽。



うつつの断罪者の証】@チャンネル登録者700000人達成ボーナス。

・アイテム分類:不明

・ランク:SSS

・効果

〔現実世界の悪なる存在を断罪できる証〕

・説明:この世界と現実世界をリンクし、所持者の聖なる想いを伝えて悪を断つ。


◆――――――――◆



「……え、なにこれ」


 アイテムの山を見て、るかたんさんはギョッとした顔をしています。

 どうやら、御業を見るのが初めてのようですね。

 今回もたくさんのお恵みをいただいてしまいました。

 願わくば、一つ一つ丁寧に祈りたいところですが、さすがにこの状況では難しいですね。

 種にお薬に不思議な形の棍棒……。

 神様に感謝の言葉を捧げながらポーチに収納します。

 ふむ、【現の断罪者の証】というのは、三日月が太陽を食べているような紋章です。

 これは小さくてキレイですし、何より神様と近くにいれる気分になるので身につけておきましょう。


「るかたんさん、これが神様のお恵みです」

「神様のお恵み……」

『フレイヤがお祈りすると、アイテムが降ってくるんだフェン』

「な、なるほど……」


 お恵みだとお伝えしましたが、るかたんさんは納得したようなしていないような顔でした。

 一緒にダンジョンを進んでいれば、神様の御業がより身近になるでしょう。


〔ステータスも更新されています! ご確認ください!〕

「はいっ、承知しました! すてーたすオープン!」


 四角い画面が現れると、数字の並びが変化していました。



◆――――――――◆

〇ステータス

・名前:フレイヤ

・レベル:1

・職業:“信心深い”見習い聖女

・HP:34946/34946

・MP:37906/37906

・スタミナ:16394/16394

・物理攻撃力:13415

・物理防御力:10434(×777)

・魔法攻撃力:15404(×777)

・魔法防御力:15358(×777)

・素早さ:37349


〇装備など

・武器

①【護身用スタンガン・極(777万V)】

・防具

①【“信心深い”見習い聖女さんの服】


〇称号

・チャンネル登録者70万人

・フェンリルの救い手

・幼女の救い手

・少年の救い手


〇実績

〔メインクエスト〕

・無し

〔サブクエスト〕

・迷いフェンリルを助ける

・幼女の姉を探す

・少年の妹を助ける


◆――――――――◆



「え……こ、この数字は何……?」


 またもやギョッとした顔のるかたんさんです。

 そんなに驚かれることなのでしょうか。


「私……こんなステータスの高さ見たことない……」

「はぁ、そうなのですか」

『フレイヤは自分のすごさに自覚がないんだフェン』

 

 お二人はとにかく驚かれていますが、私は神様がお好きな数字の並びになれればそれでいいですね。


「では、さっそく行きましょうか。まずは150層を目指すのですよね?」

「う、うん、そうだね。このステータスならあっという間かもしれないね……」

『下手したら1時間も要らないかもしれないフェン……』


 なんだか、るかたんさんの私を見る目が変わった気がしますが、きっと気のせいでしょう。


⦅この二人の並びはヤバそうw⦆

⦅モンスター震えてるだろ、これ⦆

⦅どんな光景が見られるか楽しみだな⦆


 神様の応援を背中に受けて、私たちはダンジョンの深部へと向かっていきます。


□□□


 数十分後、私たちは順調にダンジョンを進んでいました。

 今いるのは、ちょうど100層。

 思いの外、さっさと来てしまいました。


⦅クソ早えw⦆

⦅だから早すぎなんだって⦆

⦅というか、フレイヤたんレベル1のままでクソワロタ⦆


 私たちの後ろでは異教徒の使い魔たちが延びています。

 ほとんど私が改心させてしまったような気がします。

 るかたんさんが微妙な面持ちで呟きました。


「フレイヤたんって……こんなに強かったんだね」


 もしかして……と、私の頭にある仮説が思い浮かびます。

 るかたんさんは、もっと自分で使い魔たちを改心させたかったのではないでしょうか。

 そう思った瞬間、自然に体が動きました。


「も、申し訳ございません、るかたんさん!」

「え……!」


 ガッシ! と彼女の肩を掴みます。

 私としたことが……痛恨のミスをしてしまいました。


⦅なんだなんだw⦆

⦅突然のハグ⦆

⦅これから何が始まるのw⦆


「ど、どうしたの、フレイヤさん」

「るかたんさんも使い魔を改心させたかったのに、私が全部倒してしまってすみませんでしたっ」

「あ、いや、言っている意味が……」


 るかたんさんは見た目通りのお優しい方です。

 気づかないフリをしてくださるなんて。


「ま、まぁ、何のことかはわからないけど、とりあえず先を急ごうよ」

「ええ、そうですね。この先は、なるべく先走らないようにします。るかたんさんの改心も参考にしたいですし」

『フレイヤが参考にできるようなことはない気がするフェン……』


 下層に繋がる階段へ向かおうと、通路を曲がったときです。


「ゲホッ……」


 壁に寄り掛かるように、血だらけの男性が倒れていました。

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