第4話:謎のシスター(Side:るかたん)
⦅さっきのシスターめっちゃ強かったな⦆
⦅見たことないアイテム持っててクソワロタ⦆
⦅777万Vのスタンガンとかどうやって手に入れたw⦆
⦅というか、お祈りの言葉がワロタで草⦆
「ねー。るかたんもビックリしたよ」
るかたん中の人こと私、軽井るかは顎に手を当てた可愛いポーズで呟いた。
営業スマイルならぬ、営業仕草だ。
私の真の姿はこんなものではない。
⦅ルカたん、これからどうするん?⦆
⦅さっきのシスター追いかけようよ⦆
「う~ん、そうしたいのは山々だけどRTAが……」
私は国内最大手のVtuber事務所、“Reason to LoVe プロダクション”所属。
チャンネル登録者は77万人。
自分で言うのもなんだけど、超一線級のVtuberなのだ。
⦅1時間32分経過⦆
⦅意外と時間食ってる⦆
⦅メガ・オーガとの遭遇は想定外だったか⦆
「全部あの異常種が原因だよ、もう」
私がプレイしているのは“ミドルエージ×ファンタジー”。
最新の技術が詰まったオープンワールドゲームだ。
舞台のモデルは中世ヨーロッパ。
剣と魔法のオーソドックスなゲームだが、その特色は何と言ってもその自由度にある。
毎日毎日アップデートが入り、NPCキャラのセリフは常時リセットされ……いつも異なる日常が楽しめる。
おまけに、最新のモーションキャプチャを使用したデザインにより、キャラたちは本当に人間のように動く。
どこにそんな金があるのかと思うが、それほど儲かっているのだろう。
「とはいえ、あの人には本当に助けられたね。ほんとにありがとう、フレイヤさん」
⦅るかたんの苦労が水の泡になるとこだった⦆
⦅危ない⦆
⦅まさしく救世主⦆
それにしても……。
「なんだか不思議な人だったなぁ。設定を練り上げているというか、キャラになりきっているというか」
⦅それ⦆
⦅あんなアイテム見たことないし。どこでゲットするんだ?⦆
⦅wikiにも情報なし⦆
【スタンガン】に【見習い聖女さんの服】なんてアイテムはないはずだ。
改造でもしたのかな。
レベル1だったし。
ま、まさか……。
「チ、チーター? ええ、どうしよう、配信に移っちゃった。BANされないかな」
⦅中の人は良い人そうだったね⦆
⦅ほんとにシスターみたいだった⦆
⦅悪い人ではなさそう⦆
「ふむ……たしかに」
物腰もずいぶんと丁寧だったし、アイテムもくれた。
自分も弱っていたというのに。
まぁ、ちょっと異質な感じがしたのは確かだけど。
それこそ、まるでその世界に生きているかのような。
「わ、わかった……AIが配信してるんじゃない!?」
⦅なるほど!⦆
⦅AI説濃厚だわ⦆
⦅るかたん冴えてる⦆
そうよ!
きっと、運営が試験的に導入したAIだ。
それなら全ての説明がつく。
一般配信されていないアイテムを持っていても不思議ではない。
「あっ、やべっ。こんなことしてる場合じゃないよ。RTA!」
⦅さらに15分経過⦆
⦅お喋りるかたん⦆
「早く地下に行かないと!」
◆◆◆
おそらく世界で最初のAIチャンネル。
そのことに気づいた(勘違い)るかたんと彼女の視聴者により、フレイヤのチャンネル登録者は爆速で増えていく――。
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