前世【くノ一】の私は、全エンドが一家処刑の悪役令嬢に転生した~魔法は使えないけど忍術で処刑フラグを回避する~

青空あかな

第0話:戦いの歴史

 時は戦国。

 乱世の世に潜むように、二つの影が生まれた。

 龍渡たつわたり忍者と虎渡とらわたり忍者である。

 胆力を操り不思議な術を扱う者を、人は“忍者”と呼んでいた。

 彼らはその人外の力を駆使し、権力闘争の裏で暗躍していた。

 主の命で敵対勢力を暗殺したり、大規模な戦闘の裏で秘密裏に情報を盗んだり、時には互いに抗争したり……。

 彼らの戦いの歴史は、決して表舞台には出てこない――。



 しかし、天下が統一されお役御免となると、両忍者は途方に暮れた。

 これから何をすればいい……。

 右を見ても左を見ても、人生を賭けてきた戦いは影も形もない。

 諦めて忍びから手を引く者が続出したが、忍者として生きてきた者に平穏な暮らしは馴染めなかった。

 結局は、新たな権力者の影で戦いに身を投じらせる日々だ。

 そこからさらに太平の世が進むと、忍者たちは愕然とした。

 誰も争いを望んでおらず、世の中には平和があふれている。


 もう自分たちの居場所はどこにもない?

 あんなに必死になってやってきたことは意味がなかったのか? 

 ……いいや、そんなことはないはずだ。

 俺たちは戦いの中でこそ輝ける。


 時代が変わっても、忍者たちは過去に生きていた。

 それからは互いを宿敵と決めつけ、水面下で殲滅の機会を狙っている。

 そして、今日もまた血の呪縛から逃れられない若者がここに――。


「のえる! 何度言えばわかるんだ! 私たちは龍渡家の末裔なんだぞ! もっと修行しなさい!」

「そんなんじゃライバルの虎渡忍者に、簡単に殺されちゃうわよ!」

「だから、忍者の前に私は高校生なの! 少しくらいは遊ばせてよ!」


 龍渡家末裔の龍渡、のえる。

 彼女は高校二年生ながら、忍者の子孫として修行の日々を送らされていた。

 忍びとして人生を終えるなんて絶対にイヤだ。

 しかし、自分に流れる血がそうはさせてくれない。

 ヤキモキした日々を迎える影で、とうとう虎渡忍者は全面戦争を決意したのだった。

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