嘗て聖女と呼ばれたヒロインは魔人に身も心も敗北しました、三百年後、人類最後の主人公は魔人を巻き込み爆発して死んだら三百年前に逆行転移して敗北しそうなヒロインを圧倒的実力で救っていく、題名『聖女再戦』

三流木青二斎無一門

『聖女敗戦』

嘗てこの世界には、聖女と呼ばれる能力者が存在した。

人類を殺害する魔人をこの世から消す為に彼女たちは作られた。

魔人と聖女の戦い、その歴史を、人は『聖女聖戦』と呼んだが。


魔人の群れが集う。

数は大体十体程だろうか。

しかし、人間とは懸け離れた獣の如き姿。

辛うじて二本足で立っている事から、形態は其処まで低いだろう。


魔人たちの前には、一人の淑女が居た。

白銀と形容する、清廉な女子。

銀髪を靡かせながら、白色の衣服に体を包み込む彼女の姿は、天使にも見間違える程の麗しさがある。

青き瞳が鋭く、魔人たちを睨み付ける。

大した力も持たない魔人如き、彼女からすれば雑魚でしかない。

だが、その聖女が手を出す事は無かった。

いや、手が出せないと言うべきだろうか。

魔人たちの中心には、女性が居た。

複数の女性たちが、衣服を剝がされていた。

その体は傷だらけであり、よく見れば性的に乱暴された後もある。

魔人たちが、彼女たちの体を弄んだのだ。


「聖女、聖女、手を出すな、ヒトが、酷い目、なるぞ」


片言で喋る魔人の言葉。

それは脅迫であった。

魔人たちは狡猾だった。

天敵である聖女の御し方を知っている。

誰よりも人を愛する聖女メイデンは迂闊に手を出す事は出来ない。


「人質を離しなさい…」


「嫌だ、これ、オモチャ、俺たちのもの」

「手放したら、お前、俺たち、殺す」


だから、人質を手放す様な真似はしない。

怯えて無く女性の人質、その一人に馬面の魔人が近づくと、足を掴んで股を開かせた。


「ソコで見てろ、オモチャを壊す、トコロをッ」


泣き叫ぶ女性の声に、聖女メイデンは叫ぶ。


「止めてっ!彼女たちは、関係ないっ…どうか、解放を…」


してほしい、その先の言葉を口にしようとして、喉元で止まる。

魔人たちは、聖女の方を見つめながら、笑みを浮かべて彼女の言葉、その続きを口にした。


「なら、このメスの代わり、お前が、俺たちのオモチャになるか?」

「お前の体、一回、一人、開放してやる」


オモチャ。

其処に居る人質の代わりに、体を差し出せば解放すると言っている。

聖女メイデンは歯ぎしりをした、だが、人質がこれ以上、苦しむ様を見るくらいならば…


聖女、聖女メイデンは武器を手放した。

覚悟を決めて、魔人たちの前に出たところで、魔人が止める。


「止まれ、俺たちのオモチャになるなら、下着、脱げ、そして、そのスカート、捲れ」


魔人たちの歪な笑みが彼女の体を見つめている。

恥ずかしく、魔人に良いようにされている聖女メイデンはスカートの中に手を滑らせて、下着を太腿前まで脱がして、同様に自らの意思でスカートを捲り上げた。


「わ、たしが…あなたたちの、おもちゃに、なります…ですから、どうか」


これからされる事。

女性たちが犯されたことを想像して、恐怖を覚える。

それでも、彼女たちが救えるのならば、自らの体を差し出しても惜しくはない。


「…これ以上、無垢なる人々を、どうか…殺さない、で下さい」


魔人に懇願した所で、だが、それでも魔人たちは満足していない。


「お前は、淫乱だ、俺たちに、犯される事を、喜んでいる」

「お前の口から、そう言え、自分から、媚びろ」


これ以上、彼女の尊厳を傷つけるか。

それでも、聖女メイデンは魔人の言う事に逆らう事は出来ない。

悔し涙を浮かべて言葉を紡ぐ。


「わたしは…まぐわうことしか…興味がない、い、淫乱な、女、です」


屈辱を噛み締めながら、聖女メイデンは魔人に体を許す。


「わた、しを、慰みものに…」


魔人たちは、聖女を屈服させたと狂喜した。

彼女の元へと近寄り、衣服を破り捨てると。

その日、ある聖女の純潔が血と共に散った。


約束通りに人質が解放されていく。

廃墟と化した建物の入り口から出ていく所を見つめていた。

十数人居た人質が、最後の一人が解放された時。

すでに彼女の体は動かなくなっていた。


性行為の最中で魔人が彼女の手足の健を切ったのだ。

その為、彼女は最早逃げる事は出来ずに、ただ魔人に犯される事しか出来ない。


「(ぜ、全員、逃げて、くれた、それ、だけで…私、は)」


犯される価値はあったと、聖女メイデンは思っていた。

…だが、彼女の考えは、入り口から出てくる一体の魔人の姿を見て覆る。

魔人、その手には、彼女が逃がした人質の女性たちの頭部が、髪を握られて吊るされていた。


「ぁ…え?…なんで、なんっ」


そこでようやく聖女メイデンは理解したのだ。

魔人が約束を守る事などない、逃がしたと見せて、人質を一人残さず殺したのだ。

つまりは彼女の献身的な行為は全て無駄になったという事だ。


「ひきょ…卑怯もの…卑怯ものぉ!!」


彼女の悲痛な叫びに、魔人は嘲笑する。


「約束、守るわけ、ない、バカなメス」

「頭が、足りない、証拠だ、俺たちよりも、頭が悪い」

「バカメス、もっと喘げ、バカメス」


魔人たちが彼女を蔑み、魔人よりも下であると格付けされた。


「あっ…あ、はっ、あああぁぁ…っ」


体の苦しみよりも、心の苦しみを抱きながら、彼女は涙を流して泣き叫ぶ。


…数年後、彼女の所在が確認される。

魔人に散々弄ばれた挙句、四肢を切断されて使い古された末に、彼女は魔人を生む為の苗床と化していた。


意識の無い彼女はただ魔人を生むだけの機械とされ、無惨にも、彼女は仲間の手によって処分されてしまう。


聖女は魔人には勝てない…、これは、正史で定められた事。

この物語は既に、人類の敗北で終わっている、それはつまり…。


聖女聖戦せいじょせいせん』は、魔人の勝利で終わるのだ。

聖女たちは、無惨にも殺されて…そして人類は滅びる。













『聖女聖戦』から三百年後。

人類は衰退し、魔人は増加した。

聖女が死滅した世界では、僅かな技術を使い、魔人に対抗する事しか出来ず、そしてそのやり方では、魔人を倒す事は出来なかった。


「お前が最後の一人だ、人間」


魔人が一人の男を指差す。

彼の周囲には、数万を超える魔人が取り囲んでいる。

最後の人類を逃さない様に、最後の人類の最期を見る為に。

野次馬の観衆として、彼を囲う壁と化していた。


「お前を殺せばそれで終わり、我々がこの星の頂点に立つ」


流暢な人語を話す魔人を前に、男は立ち上がる。


「…俺が最後、か」


最終人類ピリオド

それが、魔人から認識されるトクサの称号だった。

人類と呼べるには、その男の体は特異に満ちている。

聖女が全滅した後の未来、技術は超越し、魔人の能力を肉体に宿す事が出来た。

それでも、魔人を滅ぼすには人数が少なすぎた。

聖女聖戦が終結した後の150年後には、人類の人口は10分の1となり、魔人の人口は70億を優に超えていた。

最早、勝てる見込みなど無かった。


「だけど…それでも…ッ!」


それでも。

拳を握り締めて魔人の群れへと走り出す。

無謀な行動。

彼の行動を嘲る様に魔人は指を鳴らす。

その音と共に衝撃波が発生すると共に、膝を突く。


「かっ…はっ」


最後の足掻きも空しく。

トクサは地面に倒れ伏す。

次第に、脈が衰えていくのが分かった。


魔人の群れの一人が、トクサの方へ出る。

その男の腕には、女の生首が人形の様な陶器の皮膚に変わっていて、マリオネットの様に口が開かれる。

そして、女性の声色で、魔人が人語に変換してトクサに語り掛けた。


『これで最後ダ。無駄な足掻き、ご苦労だっタ。無知なサルどモ』


その言葉に、トクサは顔を上げて、魔人を見つめると、口を開く。


「サルじゃない…俺は、人間だ。人類だ、ヒトなんだよ…魔人」


それと同時に血を吐く、そしてトクサは続けて言う。


「人間の誇りを以て戦い、生き延びてきた…俺は、最後まで人として死ぬ…滅ばされても…足掻き続けた事は、決して無意味じゃない」


その言葉を最後に、魔人がトクサに指を向ける。

魔人の持つ能力によって、トクサを人形にでも変えようとしているのだろうか。

しかし…トクサもまた、指先を魔人に向ける。


「だから、今度は、テメェが、吠え面を掻く番だ、クソ魔人ども」


彼の胸元には、傷跡があった。

彼の心臓付近には、人類の叡智とも呼べる爆弾が仕込まれている。

人類が足掻き続けた事で、終盤にて作り出す事が出来た、国一つを滅ぼす事が出来る爆弾。

希少な代物を、トクサの体に移植した。


『マさか、それで…倒せるトでも?』


彼の心臓の停止を待つよりも早く、トクサは爆弾の起爆信号を指先から送る。


「じゃあ実際に受けて見ろよ…死ねよォ!!」


その言葉を最後に、トクサを包み込む光。

荒れ狂う嵐、燃え盛る業火、その後から遅れてやってくる甲高い音が、魔人諸共包み込んだ。




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