女友達

@homeroom

第1話 高校時代からのキレないトモダチ。

「この前、テレビ見てたらさ、40歳で独身ていう人が映ってたの。そしたら、うちの旦那、40歳なのにまだ独身なの?とか偉そうにいっちゃってんの。あんただって私が結婚してあげなかったら、ずっと独身だったろうが!」

 酒豪のナナコは、手に持つビールのジョッキを煽って言った。酒豪、と言ってもそれはユイから見たら、の話だが。


 ユイはお酒があまり飲めない。

 家でたまーにビールの135ml缶を、酔いが一気に回らないようチビチビ飲んだりするくらいだ。

 ネットで「ビール 小さい缶」で検索すると、あれはなぜあるのか?とかあれは仏壇用だ、とかいう情報まであって、びっくりするが、あの缶で満足できる人もいる事を知って欲しい。


 話が逸れたが、高校時代からの腐れ縁であるナナコは、常に旦那への不満を抱えている。

 会えばいくらでもそのエピソードが出てくるので、本当に感心する。


 この話の場合は、「ナナコはそんな旦那と結婚してあげて優しいね」と言ってあげるべきなのか?

いや、そんなことを言ったら、本当にあんたの旦那はダメダメだねと言っているように聞こえてしまう。

 いくら旦那の不満を言っていても、同じ姓を名乗る家族なのだ。他人の私が旦那を悪く言ったら、ナナコは怒るだろう。

 そう、こう言う時は

「そうね今時40歳で独身なんて、めずらしくないし、それぞれ生き方があるんだから。そんな言い方しなくてもいいよね。」

 と、当たり障りのないことを言ってみる。

 言ってからちょっとユイは緊張する。

 今のユイの発言は合っていただろうか?ナナコの気分を害さなかったか?

「そうなのよ、本当に自分の価値観しか押し付けないんだから!」

 ナナコが同調してくれたので、ユイはホッとする。

「まぁまぁ、いいんじゃない?三ツ木先輩はナナコと幸せな家庭築けてるんだからさぁ。」

 ナナコの向かいの席に座る、サキが大らかに言う。三ツ木先輩とはナナコの旦那のことだ。

 ナナコの旦那はサキの部活の先輩なのである。


 言葉も大らかだが、サキは体格もおおらか。

 出産後から食欲が止まらなくなったのか、会うたびに大きくなっていく気がする。

「何言ってんの、幸せじゃないよ!」

 サキの言葉にナナコは目を剥く。

そんなナナコの攻撃に合っても、サキは動じない。あ、そうなの?という感じで、これまたお猪口に日本酒を注いで、クッと一気飲みしてしまう。

 サキもまごうことなき、酒豪である。(ユイから見ると。)

 この2人は身長も肩幅もユイに比べたら大きく、体力も性格も合っているようで、仲がいい。

 親友とはこういう2人を言うのではないかとユイは思う。

 ユイは2人の感覚とは少し違う所がある。すぐに傷つくし、ジェットコースターには乗れないし、1日のストレスをお酒を飲んで忘れるという豪快さもない。

 2人に比べると、1日に起きたことをズルズル引きずりがちだ。


 正直、高校卒業後に、この2人を含む高校の友達グループとは縁が切れると思っていた。

 埼玉の田舎で結ばれた、この友達の絆はそんなに固いものではないとユイは思っていたから。

 大阪の大学に進学した後も、特にユイから連絡を取ったりした覚えはない。

 が、なぜか当然のように

「大阪遊びに行くね〜、泊めて」

 とかメールが来て、本当に泊まりに来るし、ユイが埼玉に帰った時はなぜか高校の時のクラスメイトを何人か集めて、お帰りなさいパーティのようなことをしてくれたりして、関係は継続したままだった。

 この私と彼女たちの間の温度差は、なんなのだろう?


 でもユイはずっと思っていた。

 なんかこの2人といると振り回されるし、私はそんなに大事な友達だとは思ってないけどな。

 むしろ2人と会った後に傷やストレスが増えている事に気付くと、あーもうやっぱり友達じゃない!と思うのだ?

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