残された謎(読者からの手紙2、岩、「5」と「3」)

 主な怪異についてはスッキリとまとまる形で事実関係が整理され終わったものの、まだまだ未解明の謎が残るのが、この作品の面白いところ。本稿では、残された謎について、説明がつきそうなところは無理矢理説明してみる感じでやっていきます。


・読者からの手紙2

 ひらがなや旧仮名遣いやカタカナが不自然に入り混じっており、いかにも不気味な感じの文章。ただ「電波」なだけかと思ったら、中盤に登場するにもかかわらず、かなり核心をついた内容になっている。例えば、「あきら」が悪魔に比する存在であり、「赤い女」によって股からではないところから生み出されたモノであるということ、さらに「山に誘うモノ」が猿のよう・痴れ者と表現されているなど。一見支離滅裂だが的を射ている部分が多く、こうなると他の部分も掘り下げて考察したくなる。ただ、やっぱり「全てを理解してはいけない」と感じさせるような怖さもある。

 問題は、この手紙の送り主は誰か? ということである。たぶん書いたのは電波を受信してしまった一般人だとは思うのだけれど、その電波を発した存在がいそうな感じ。そしてその存在は「赤い女」や「山に誘うモノ」とは対立している感じがある。

 個人的には、これは「山」に本来棲息していた霊的(神的)なモノなのではないか、と踏んでいる。舞台になったと言われている生駒山は霊山らしく、それ以外にも山は山岳信仰などでご神体となることもあり、「山」そのものにもとからいた何か神様めいたものなんじゃないか、という気がしている。


・しめ縄の巻かれた岩

 こちらも作中で何度も出てくるキーアイテムである。時系列を整理すると、「まさる」の話でどこからか出てきてまさるや村の女を殺し、その後神社に「まさるさま」の本尊として祀られ、さらに後には宗教施設でご神体となって祀られ、そのまた後には「赤い女」があきらたちが生前住んでいた家の畳の下に隠した。それを関西軍曹が見つけてから、岩は忽然と姿を消しており、最終的な行方はわからなくなっている。

 すべてはこの「岩」から始まっているのでは、というコメントを見てぞわっとした。

 もしかして、「読者からの手紙2」の送り主の本体は、本来これだったのでは?

 古神道に「岩倉信仰」というものもあるし、そもそもこの「山」を中心とした村落には、この岩をご神体とする信仰があったりしたんじゃないか? 

 ではまさるの家になぜ急に出てきたのかは不明のままだが、この仮説をもとにすると、先述の「読者からの手紙2」についても、「まさるを通じて力を高めようとしたが、意図に反して『まさる』が大きくなりすぎてしまったため、抑止しようとした」という仮説もさらに立てられる。根拠はフワフワだけど……。



・繰り返し登場する「5」と「3」

「待っている」で不動産業者が猛烈にプッシュし、70代の母が入居した部屋は、5号棟の3階だった。カメラマンのBくんが必ず「真っ黒なものを写す」のは53番目に撮った写真だった。学校の怪談のチャイムは、5時から3分遅れる。

 この作品では繰り返し「5」と「3」という数字が出てくる。これが何を意味しているのかは、作中で明かされることはなかった。

 ネットをディグっている時に一番しっくりきたのは、「5と3の間には4(=死?)が挟まっている」という仮説である。


 4といえば、繰り返す「近畿地方のある場所について 4」である。語り手の様子が明らかにおかしいことから、感情移入していた対象、いわば主人公が「まともじゃなくなる」ホラー感を味わうことが出来た。「お前はまともだと思ってたのに!」みたいな。


 また、「目次の4を辿ると『了』の字になっている」ということに気づいた人もいた。PC版で見てみると確かに言われてみればそうかもしれない。だがしかし、これは枯れ尾花である可能性もある。とはいえ、意図的だとしたらその凝りように脱帽だし、偶然だとしたらそれはそれで怖い。



 以上が私の考察でした。この他にも、「読者からの手紙2」の一文一文が何を表しているのか、バイカーの男の「だめになってしまいました」とは何がどうしてだめになったということなのか、等々、色んな謎が残っています。ある程度は説明がつきつつ、全てに説明がつかない感じは作者の匙加減が絶妙ですね。他にもこんな謎があるとか、自分はこう思うという人がいたら、コメントしてくださると嬉しいです。

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