第137話 憎しみの果てに

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「トレメイン侯爵夫人、あの生意気な小娘の店、今日からオープンらしいわよ、今からちょっと行って身の程を知らせて差し上げませんこと?」

 「よろしいですわね、バートン公爵夫人、初めが肝心と言いますわ、もう調子に乗れないように徹底的に叩いておきませんとね。」


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 陽葵のドールショップの前には開店前から長蛇の列ができていた。

 もぐらモールの人たちが宣伝してもらったこともあるし、プレオープンでの演出も尾鰭おひれがついて噂となっていたからだ。


 店の中はごった返し、5万〜20万ディナールの価格帯だと言うのに飛ぶように売れていた。

 特にもぐらモールの宣伝を兼ねたもぐら男爵フィギュアは価格を3万ディナール程度に抑えたからか、数としては一番の売り上げ個数を誇った。

 なんだか複雑な心境になる。


 そこへ見るからに高貴な雰囲気を漂わせ、侍女を引き連れた女性が店に接近してくる。


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 「何よ、閑古鳥が鳴いてるかと思ったらそこそこ流行ってるじゃないの、面白くないわね。」


 「店に入っていろいろケチをつけてやろうと思ったのにこれではめんどくさいですわね、今日は帰りますか?バートン公爵夫人。」


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 あれは確かバートン公爵夫人とトレメイン侯爵夫人だわ。


 そこそこ令嬢の陽葵の記憶力は天才とは程遠く、そこそこの記憶量しかない。

 しかし、流石に子爵位以上の貴族の顔と名前だけは何度も繰り返し、頑張って覚えた。

 

 遠目に店を伺う両夫人に向かって陽葵はスカートを両手で持ち上げて疾走した。


 「あの、失礼ですがバートン公爵夫人とトレメイン侯爵夫人ですね、店主のヒナと申します。」


 陽葵はリッキー王子に倣ってバートン夫人にいきなりハグして小柄な陽葵は背伸びをしてバートン夫人の頬にキスをする。


 「ちょ、な、」


 続いて固まっているトレメイン侯爵夫人にも同じように抱きついて頬にキスをした。


 ペットとして大人気のモルモットのようなつぶらな瞳で小柄な陽葵から上目遣いでキラキラ見つめられ、抱きつかれてキスされる。


 これは普通のメンタルの女性(男性もだが)なら確実にキュン死するレベルである。

 それが天使のように美しい陽葵であればなおさら抗える人間、亜人がいるとは思えない。

 バートン公爵夫人とトレメイン侯爵夫人はあっさり陥落した。


 「当店は王族、貴族の方にはファストパスをご用意しております、ロイヤルマーケティングの一環です、どうぞ特別入口からお入りください。」


 バートン公爵夫人とトレメイン侯爵夫人は誘われるまま、入店した。


 もふもふ天国がそこには広がっていた。


 「それではこの3つをいただくわ。」


 「では私はこちらの2つを。」


 「ありがとうございます、それぞれ60万ディナールと45万ディナールになります。」


 「では後ほど使用人にお金を持ってこさせるわ。」


 「いえ、当店では『もふペイ』を採用しております、王族、貴族の方には連邦国王が保証し、直接もぐらモールが与信を出していますので、そのままお品物を待ち帰りいただけます。

 後日連邦への租税と併せて支払っていただくシステムとなっていますので即金金貨は必要ございません。


 「まあ、そうなの?それじゃあ、可愛いめのをもう二つ三つ頂こうかしら。」


 「ありがとうございます!またのお越しをお待ちいたしております。」


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「あのヒナさん、生意気どころか誰を大事にすべきかちゃんと理解しているじゃないの、それに本当に可愛いわ。」


 「そうですわね、あんな可愛い子が妹に欲しいわ。」


 バートン公爵夫人とトレメイン侯爵夫人は陽葵の可愛らしいキスを思い出して少し赤面しながらそれでもとても嬉しそうだった。

 


 

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