第135話 黒の魔手
「それにしてもトライガーのステージを再現した
「賛成」
「ぼくも賛成」
「賛成するよ」
「俺は500万ディナール払うぞ。」
「僕も500」
「トライガーには負けられないしね、500万」
「陽葵さん、王国創立祭が始まってしまって忙しいだろうし、急がないから正式にお願いしてもいいかな?」
総額3500万ディナール
そこそこ令嬢の陽葵は再び呆けていた。
「は、はい、ありがとうございます。」
そのかわり後夜祭では最前列での応援頼むからね。
「もちろんです!応援精一杯やります!任せてくださいませ。」
「メルシー、マドモアゼル」
リッキー王子が陽葵の頬にキスをする。
「あ、また!リッキーてめえ!」
他のメンバーからブーイングが起こる。
陽葵もこの文化にだいぶ慣れてきた。
ホークレス地方ではみんなこれが普通の挨拶なんだなと。
※そこそこ令嬢陽葵の勘違いです。
****
「あの小娘、少し調子に乗りすぎではないかしら、トレメイン侯爵夫人?」
「身の程というものを思い知らさなければなりませんわね、バートン公爵夫人。」
陰ではそんな妬み嫉みの声が確実に存在していた。
王子から婚約破棄を申し渡された令嬢も存在する。
陽葵には王宮内外で渦巻くドロドロしたものを祓ってくれる頼りになる人物がいなかった。
13歳の陽葵に悪意の黒い手がヒタヒタと迫る。
****
前夜祭は盛況のうちに閉幕を迎えた。
「ヒナさん、お疲れでしょう、また"白い稲妻"でホテルまでお送りしますよ。」
もぐら男爵様はフェンリルのことを「白い稲妻」と呼んでいるようだ。
陽葵はクスリと笑った。
何にしてもまたフェンリルに会えるのが嬉しかった。
「おう、
「もうーー、フェンリルさん、もう言わないでください。」
陽葵はまた顔を真っ赤にして両手で覆う。
「なかなか美しい天使の降臨のようであったがな、さ、乗れ、部屋まで送ってやろう。」
二人が乗り込むとフェンリルは行きとは違い、優しい、安全運転で1107階の部屋まで送ってくれた。
空中に氷の階段のようなものを生成して登ってるみたい。
スターダストが下方に綺麗に降っていったわ。
「フェンリルさん、ありがとう」
陽葵は別れ際に名残惜しそうにフェンリルの顔を抱いてもふもふもふもふもふもふした。
「もぐら男爵様、ご機嫌よう。」
そうしてもぐら男爵とフェンリルは去っていった。
ケモ耳メイドがまたメイク落としと着替えを手伝ってくれる。
「ミラたちはもう寝たのかしら?」
「ええ、お嬢様方はお疲れになったのかもうお休みされております、陽葵さまもお疲れでしょう、ごゆっくりおやすみください。」
メイドたちはドレスを箱に収納すると一礼して退出した。
陽葵はもう一度温泉に浸かった。
「今日は慌ただしい一日だったわ、プレオープンで一日の売り上げが2000万ディナール、新規受注が3500万ディナール、びっくりすることばかりよね。」
「ああもうーバカバカ!」
いいことばかりではなく、王子や貴族の見守る中で客車から思いっきり転落した事件を思い出して自分の頭を叩いた。
「とんでもない黒歴史だわ。」
※観客からの視点では非常に美しい天使降臨の演出であり、大成功の部類に入ってました。
「陸斗兄さま、今頃どの辺りを旅なさってるのかしら、また会ってお話したいな。」
****
その同時刻、もぐらインペリアルホテル11階の1107客室では陸斗が大きなくしゃみをしていた。
「風邪でもひいたかな。」
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