そこそこ令嬢のそこそこ日記、フツーって罪ですか?でも針一本で異世界を無双します。

七星剣 蓮

第103話 そこそこ令嬢

 川嵜陽葵かわさきひなは「一応」財閥令嬢ざいばつれいじょうだった。


 財閥令嬢というとすぐに思い浮かべるのは天が三物も四物さんぶつもよんぶつもも与えたハイスペック令嬢だろう。


 頭もよく常に学年トップ、モデルのような顔と容姿ようし、スポーツ万能で剣道や弓道にも通じて戦闘力せんとうりょくも実は高い。


 またはその財力と権力をバックに気ままに振る舞い他人を蹴落とすけおとす悪役令嬢あくやくれいじょうも人気のようだ。

 悪役令嬢が実はいい人だったというのもなかなか悪くない。


 

 川嵜陽葵はそんな華やかさはなやかさとは無縁であった。


 そもそも財閥といっても先の世界大戦後、日本の多くの財閥は解体され、それぞれ独立した民間企業となり、財閥そのものは小規模な企業グループになっている。

 

 陽葵の家も執事しつじは一人いるものの使用人は数名しかいないかなりこじんまりしたものだ。

 新興しんこうのIT企業の羽ぶりの良さとはまるで違ったものである。



 「おはよう御座います、陽葵さま、お目覚めですか?」


 陽葵が一階の食堂に入ると初老の執事が出迎えてくれる。


 彼は本名を「狭洲知安せばすちあん」と言い、戦前から川嵜家かわさきけに仕える家柄いえがらである。


 陽葵は子供の頃から舌足らずしたたらずの口でセバスチャンと呼んでいたため、今でも彼のことは「セバスチャン」と呼ぶ。


 「おはよう、セバスチャン、今日の予定はどうなっているの?」


 「はい、お嬢様、本日は午後3時より川嵜重工実験施設かわさきじゅうこうじっけんしせつスプリング♾️の稼働式かどうしきへ四郎様と共にご参加いただきます、下校時にお着替えを持って中学校までお迎えにあがります。」


 「そう、わかったわ。」


 陽葵は食事を済ませると、リムジンに乗り込み中学校へと登校する。

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