ぼくらとパラフィリア

うすしお

序章 倒錯

第一話 夢

 白と、吸い込まれそうなほどの黒の混じった赤色。そんな夢。その中には確かに危険な心拍音が存在し、しかしそれは痛覚と快楽に包み込まれ、優しく隠されていく。

 気持ちのいい夢とは、決して言えない。

 そう分かったとたん、僕はこの夢から出たいと思った。

 だけど、上手く融通が利かない。どうあがいても気持ちの悪い感触の、白と赤の液体がついて回り、そしてそれは生命力の余韻を感じてしまうほどの温かさを内包している。僕は、この液体が自分のものであると分かり、吐き気がしていく。

 マグネットの同極をくっつけたみたいに、僕の頭は拒否反応を示す。

 それでも。


 いっそここに、このまま存在してしまおうか。自尊心さえ投げ出して、ここに定住してしまおうか。


 欲。どこから生まれるのかも、何をしたいのかも分からないそんな存在が、僕に問いかける。

 でも。

「いやだ!」

 小さい子供みたいに、僕は叫ぶ。ここにこのままいてしまったら、きっと僕は僕を保てなくなる。自己肯定さえできなくなり、自分のテリトリーにだけ籠っていたいという感情に飲み込まれてしまう。そうなったら、きっと僕はダメになる。

 だから、僕は何とかあがく。

 生きたいから。ただ単純に、本能的に生きたいから。

 飛沫を上げて、液体を掴んで。

 そして夢の進む速度は、まるで倍速再生みたいに加速度的に大きくなってゆく。映像の変化の移り変わりに脳が耐えられなくなってきたとき、僕はやっと目を覚ました。

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