青の吸血鬼
津島 吾朗
序章 水天一碧/All Blue World
この世界に存在する物は物質や生命を問わず、全て色で分類できてしまうそうだ。
──炭の色は黒色。
──日本人の肌の色は薄橙色。
──海の色は青色。
それはそうだろう、と思うかもしれない。 いや思うことだろう。 けど、これには続きがある。
──炭の色は黒色。 だから黒色。
──日本人の肌の色は薄橙色。 だから薄橙色。
──海の色は青色。 だから青色。
いや、うん表現の仕方が悪かったな。
でもこれ以上に適当な言い方なんてないと思うんだけど、そうだな……。
それに存在する価値や意味といったものは色だけで、それ以上でもそれ以下でもないんだ。 俺の元いた世界は全てに絶対的な価値や意味なんてなかった。
──食料は腹を満たすためのもの。
──ベッドは眠るためのもの。
──隣のあの子のムッチリボデーはリビドーをぶつけるためのもの。
そういったものは全て、原理的にそう在るために生まれたわけじゃない。 なんかしらのフィルターを挟んで初めて意味が生まれる。
人間がそれに感じている価値もほとんどが一観測に準えて作られた偽物の価値だ。
しかし、である。
ここ
そしてその色を操る権利を持つ存在がいる。
それは吸血鬼だ。
彼ら、いや僕らは「赤褐色」という、元いた世界の感覚で言ってしまえば最高位に当たる存在。
その赤褐色は二つの色を持つことを許されている。 たとえば僕は青で、自称:僕の妹は白という風にだ。
吸血鬼は数多くはいない。 この世界にたった七人だけだ。
この世界に存在する色の数だけ存在している。
画面の奥の君はさっきからずっとこの僕の独白に違和感を覚えているだろう? そう、僕こと「【
名前は「
放課後に馬鹿話した奴らの名前や顔、絶対に忘れたくないと思った映画の台詞、人生という比喩表現すらあながち誇張ではなかったインディーズバンドの印象的な歌詞は忘れても、これだけは絶対に忘れたくない。 誰よりも何よりも好きな人からもらった唯一のモノなのだから。
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