2024/02/07 客入り


 さて例の社員と二人で仕事をする日である。


 出勤まで家で一人で過ごした私の有り様は惨憺たるものであった。頭を抱えてうずくまったまま動けなかったり、「ギャー」とか何とか奇声を上げたりして、とにかくストレスに押しつぶされていた。


 しかしいざ戦場に向かうと、そこは別の意味で戦場だった。


 客入りがべらぼうに多かったのだ。


 そして、お互い常にバタバタと忙しなく動き回っていたものだから、無駄口を叩いている暇などなかったのである!


 一瞬、説教モードに入るかと思われたが、これも未然に防がれた。


「白里さんさあ」

「はい(お? 喧嘩か?)」

「キッチンの仕事をちょっとは覚えたんだから、それをホールの仕事に活かして欲し──いらっしゃいませテーブル席へどうぞー!」

「いらっしゃいませー(ッシャア! お冷やを出すのを口実に逃げるぞ!)」


 このバイトを始めてそこそこ経つが、客入りの多さに忙殺されることに感謝したのは初めてだ。その代わりめちゃくちゃ体力を消費したはずだが、終業後も私は元気で、疲れを感じていなかった。心が晴れやかだったからだ。帰宅後は珍しくごはんをたくさん食べた。


 問題そのものは何一つ解決していないが、社員さんとの戦が延期となって正直助かった。いずれはきちんと向き合うことになろうが、少し休憩を挟んでも良かろうというものだ。


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