2023/07/21 原因の一端
通院日だったので、私は一応、先日の寝言の件を報告した。母に責められる夢を見ることは何度かあったが、いずれもとてもつらい気持ちになった、とも付け加えた。
過去のことがトラウマなのかもしれないと医者は言った。
そこで私は、私なりにこの数日間で考えたことを伝えてみた。
まず、先述の通り、私が弟妹と喧嘩をした時は、母が下の子の肩を持つことが多かったこと。例えば、弟の罵倒に加勢して、母は私に色々言ってきた。この家に私の味方はいないのかと、私は非常にショックを受けていた。
それから、「私の態度が悪い」という理由で、母が何時間も──三時間などはざらで、もっとずっと長くなることもよくあった──私のことを叱り続けたこと。「人を怒らせるのが趣味なの?」とか、「あなたのせいで時間が無駄になる」とか、「小さい頃は良い子だったのに」とかいうことも言われた。私が自室に逃げ込んでもついてくるし、トイレに立てこもっても鍵をこじ開けるし、外に逃げ出そうとしても先回りで通せんぼをされるので、どうしようもなかった。そういうことが頻繁に……よく覚えていないが少なくとも一週間に一度はあったと思う。
母からの暴力も、まあ普通にあった。これは最初は別段おかしいと思っていなかったが、私が成長するにつれ力加減が増していき、リモコンで頭を強打されてタンコブを作られたり、脚に痣が残るほどの蹴りを入れられたりして痛かったりしたので、これは何かおかしいなと思い始めた。その頃には私も二十歳くらいの年齢で、自分の力で考えて行動できるようになっていたため、色々と策を講じて暴力をやめさせることに成功した。
被害状況はこれくらいだろうか。
特に、何時間も叱られるのは「異常」だと医者は言った。私は「ちょっと変」くらいの認識だったので、捉え方を改めることにした。異常だったのか……なかなか自分では分からないものだ。
だが考えてみれば弟妹が何時間も叱られ続けることはなかったし、私にだけ沢山怒っていたんだな、などと今更ながら気づいた。
二十歳を超えてからはそういう理不尽はすっかりなくなったので、その数年後に鬱を発症したのは何故だろうと思っていたが、「時間が経ってから症状が出るのはよくあること」だそうだ。
それは知らなかった。そういうものなのか。ややこしいな。
そんなわけで、母の私への接し方が鬱病の原因の一端である可能性がある、と医者は結論づけた。
でも過去は変えられない。原因の一部が分かったからって何かが改善するわけでもない。
だいたい、過去の母の言動に文句をつけたって、母が責任を感じてしまうだけで、何も解決しない。母だって、例えば私のことを大好きだと言ってくれるし、面倒もちゃんと見てくれるし、良い親である面もあるのだ。私とて母を恨んだりはしていないし別に嫌いでもない。だから、母を無闇に悲しませることはしたくない。ましてや「原因の一端である可能性がある」程度のあやふやなことで責めるのは、何か違うと思う。
では、どうすれば治る?
これからの日々を平穏に過ごすことが一番の癒しになる、と医者は言った。
確かに、今からできることといったらそれくらいだろうが……。
平穏ねえ。毎日毎日つらいけれど、どうやったら平穏になるだろう?
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